当サイトは、アフィリエイト広告を利用しています。

湊かなえによる同名ミステリー小説『告白』は、2010年CM界の巨匠として知られる中島哲也監督により映画化。
日本アカデミー賞、最優秀監督賞・最優秀脚本賞を受賞。

高評価を受けた作品でありながらワーストとしても名をあげる『告白』に、深く考えさせられることは言うまでもありません。
主演は、松たか子。

歌舞伎界から現れた彼女はデビュー当時よりテレビドラマや歌手としても活躍。
爽やかで明るい彼女のイメージとは違った役柄に、どう思われるのか考えたが、次の瞬間どう思われてもいいやと思った。
という彼女の覚悟が見え、復讐にかられる女性の姿を見事に表現します。

中学生による残虐な殺人シーンや心の闇を描く描写が、子供に心意的な影響を与えることを否定できず、R15+指定を受けます。
これにより、出演した子役たちは自分の出演作品を観ることはできなかったと言います。

タップ(クリック)で目次が開きます

『告白』あらすじ

ある中学校の終業式。
騒がしい教室の中、健やかな成長の為牛乳を飲む習慣があるこの学校で、大半の生徒が牛乳を飲み終えるタイミングに担任の森口悠子先生(松たか子)は教壇に立ち、教師を辞めることを宣言します。
そして淡々と生徒達に語りかけます。

森口は娘の愛美(芦田愛菜)の父親がHIV感染者であったことにより家庭を持つことを諦めました。
愛美は学校のプールで事故死として死んでしまったが、実はこのクラスの生徒Aと生徒Bに殺されたのだと。
Aは電気ショック装置を付けた防犯用財布の作品をコンクールに出展する際、森口に認めてもらえなかったことで不満を持っていました。
そしてBはAに声をかけられたことがうれしくて、その発明品で驚かす標的を愛美にしようとAに提案したのです。

2人は頻繁にプールに顔を出す愛美にポシェットを差し出します。
電気ショックで意識を失った愛美を見ると、Aはこの事件をおこした天才は自分だと、Bを馬鹿にします。

怒ったBはAが去った後、愛美をプールに投げ入れ事故死に見せかけたのです。
名前は伏せたものの、犯人は渡辺修哉と下村直樹であることは誰の目にも明らかです。

森口は少年法で守られ罪にも問われない犯人を警察に突き出すことはしないが、命の重みを考えてほしいと、二人の牛乳に愛美の父親の血液をいれたと告白します。
HIVに感染したかどうかは運次第だと・・・。

いつの間にか教室内は騒然とし、静寂に包まれました。

『告白』あらすじネタバレ

映画「告白」の岡田将生
出典:(C)2010「告白」製作委員会

進級したクラスに、熱血の寺田良輝先生(岡田将生)が担任となります。
直樹はあの一件以来精神が錯乱し、引きこもり状態。
修哉は学校で心無いいじめに耐えるしかありません。

かたや、寺田は直樹の不登校を解消する為に学級委員の美月(橋本愛)を連れ家庭訪問を行います。
最初は森口の悪口を並べていた母(木村佳乃)でしたが、連日の訪問がかえって直樹と母を追い詰めていき、次第に母も精神が錯乱。
とうとう直樹の胸に包丁を突き立てました。
驚いた直樹は激しく取り乱し、その包丁で母を殺してしまうのです。

ある日、美月は森口と寺田が一緒にいるところを目撃します。
修哉へのいじめ、直樹の不登校、寺田の連日の訪問も、全て寺田を利用した森口の企みだったと知ります。
美月は、修哉の行動は、電気工学者としての道を選び、家を出ていった母に対する寂しさが起こしたことだと話しますが、聞き入れてはもらえませんでした。

修哉に心を開いている美月は修哉の気持ちを受け入れようと接しますが、内心美月を見下していた修哉は美月を殺します。

そして修哉は母に会うため、大学に訪れます。
しかし、母は再婚相手と旅行中。

絶望した修哉は、世間が注目する犯罪を思いつきます。
修哉は賞をとった命について書いた作文を修了式に壇上で発表することが決まっていました。
その発表後に爆弾で全てを吹き飛ばそうと考えたのです。
予定通り作文を読み終え拍手を浴びた修哉は待ってましたとばかり爆弾のスイッチを押すが、何も起こりません。

動揺する修哉にタイミングよく森口から電話があり、爆弾は修哉の母の研究室においてきたのだと告白されるのです。

自分が母を殺してしまったと悟り、狂ったように泣き崩れる修哉のもとに森口は現れ、「ここからあなたの更生の第一歩が始まるんです。」と教師らしい一言を囁き、「なーんてね。」と修哉の口癖をつぶやくのです。

『告白』見どころ4点

松たか子演じる森口の全てをかけた復讐劇

映画「告白」松たか子
出典:(C)2010「告白」製作委員会

感情を押し殺した静かな演技から一変、ファミレスで美月と別れ、倒れ込むように泣くシーンは何とも言えない苦しさが伝わります。
愛する人と共に過ごせず、前を向いて生きてきたのに些細なことで一部の生徒に反感をかってしまう。
そして、最愛の我が子までも遊び半分のように殺され、教育者でもある自分が悪魔のように変貌してしまう悲しみ

それでも復讐することでしか立ち上がれない自分自身にも彼女はおそらく絶望していたのでしょう。
彼女の涙が何種類もあるように感じ、目が離せません。

登場人物の告白

小説のように登場人物の告白により視点が変わり、それぞれの気持ちを追うことができます。

森口や修哉、直樹だけでなく美月や直樹の母などと視点が変わり、平凡で平和に見える暮らしの中に潜む闇が、「告白」と言う形で浮き出てくるのです。

称賛よりも衝撃を求める民衆

優秀だと評価されれば母が褒めてくれると信じていた修哉。
称賛を受ける事よりも、残虐な事件の方が世間の注目を集められるという問題点を突きながら、若干13~14歳の子供が行きついた考えは学校を爆発させ、大量殺人を行うという計画。

電気が流れる財布、アダルトビデオのモザイクの取り方、爆弾の作り方など、中学生にしてそれだけの技術と才能を持ちながら、母に会いたいが為に曲がった方向へ走ってしまうその危うさに、リアリティを感じることでしょう。

木村佳乃の溺愛ぶり

映画「告白」製作委員会
出典:(C)2010「告白」製作委員会

息子を守ろうとする半面、真実を受け入れられず、母自身も精神が錯乱していきます。
我が子を殺そうと階段を上がっていくシーンはどこか軽やかで背筋が凍ります。
平和に過ごしているように見せかけても、誰に相談するわけでもなく、ただ追い詰められていく現実に現代の家庭の問題点が見えるようです。

『告白』感想

R15+指定がなされている作品ですが、子供たちの為の作品だと言っても過言ではありません。
殺人、狂気、いじめに偏見。
まともな人は出てこないのかと思うくらい、闇を抱えた登場人物とそれに伴う奇行。
子供の残酷な部分がクローズアップされ、生徒たちの恐ろしい程他人事の感覚に違和感を覚えるでしょう。

そして、自己を満足させる為だけの行動が、あまりにも想像力のないところは、まだあどけなさのある中学生だからでしょうか。
自分の感情、欲望や寂しさをぶつける事だけに必死になり、その先の未来や、その奥の関わる人にまで目が向けられていないことが、視野の狭さを感じさせます。
現実はこんなものなのかもしれませんが、ひとりひとりが想像力を働かせることによって、傷つけられる人が少なくなってほしいと願わずにはいられません。

指定のついた内容に、納得であり、一方では疑問がわきます。
子供にこそ見てほしい内容なのに指定が付いていることを残念にも思い、また、作品の訴えるメッセージを捉え損なった子供達を想像するとやはり指定が付くべき作品であるのかとも思います。

『告白』総括

どうしたら人は楽になれるのでしょう。苦しみから解放されるのでしょう。

何気なく観る作品ではありません。
冒頭シーンから暗く、重く、異様な空気感がまるでホラー映画を思わせます。
じんわりと胸の鼓動が早くなる緊張感を感じ、追いかけてくるように登場人物の心の言葉が次から次へと押し寄せ、どの告白を聞いても心に重みがのしかかってくるようです。

そのかわりにと言ったら何ですが、命の重さや、少年法への疑問、心の闇について考える材料は豊富にあり、身勝手な少年の犯罪をきっかけに各々の持つ闇の原因が堀り出されていくのです。

ゲームなどを通し、より刺激を求めた遊びが増えていく現代だからこそ、命の尊さに目を向けてほしいものです。

スポンサードリンク