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作家がキャストを想定して作品を描くのは、決して珍しくありません。
しかし、これから取り上げる映画「騙し絵の牙」は、原作者・塩田武士が「主演:大泉洋」を公言して小説を執筆し、映画化された事が話題となった、珍しい作品です。

新型コロナの影響で公開が延期されましたが、その分、話題と期待値は上がって行きました。
しかしこの映画、大泉洋を当て書きしただけの映画だけでは収まっていません。

「騙し絵」とは、見方を変えると全く別の物が見える、芸術作品です。
有名な作品では『ルビンの壺』と言う、見方によっては女性が向き合っているが、もう一つの見方をすれば、壺に見える画が、それです。

状況によっては、騙す側になって仕掛けていたり、いつの間にか騙される側に落とされていた経験は、一度や二度は有る筈です。
「騙し絵」をタイトルに込めた意味は、果たして何でしょうか?

そんな騙し騙されの展開が続く映画「騙し絵の牙」を、ご紹介致しましょう。

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『騙し絵の牙』主なキャスト

  • 大泉洋(速水輝也)
  • 松岡茉優(高野恵)
  • 宮沢氷魚(矢代聖)
  • 池田エライザ(城島咲)
  • 斎藤工(郡司一)
  • 佐野史郎(宮藤和生)
  • リリー・フランキー(謎の男)
  • 國村隼(二階堂大作)
  • 木村佳乃(江波百合子)
  • 佐藤浩市(東松)

『騙し絵の牙』あらすじ

作家・二階堂大作の作家生活を祝うパーティに現れたのは、雑誌「トリニティ」の編集長・速水だった。速水は、雑誌が売れるのであればいかなる手段も選ばない男だった。

速水が籍を置く出版社「薫風社」にも激震が走っていた。
創業一族の社長の急逝により、次期社長を狙う権力闘争が勃発する。

東松専務が推し進める大改革の下で「トリニティ」も、廃刊の危機に立たされてしまう。

伝統ある雑誌「小説薫風」の編集者だった高野恵は「トリニティ」に配属されて来た。
高野書店と言う、町の小さな書店の子に産まれた恵にとって薫風社はうってつけの職場だった。

恵は速水の期待に応えようと、才能溢れる若手小説家を見つけ出し、速水もまた、別雑誌で人気を博していたジョージ・マサキを連載陣に入れようと、画策を始める。

恵もまた、彗星の如く現れては消えて行った謎の作家の原稿を追って行く。
2人とも、なりふり構わない姿勢に変わりは無かった。

『騙し絵の牙』ネタバレラスト

※ここからはネタバレを含んでいます。

未鑑賞の人は感想へジャンプした方が良いかも?

ジョージ・マサキ本人と出逢えた速水。
新人作家の口説き落としを狙う恵と、雑誌「トリニティ」は、編集部内での葛藤をも見せながら、活気を見せ始めていた。

速水は小説の低迷から月刊誌から隔月誌に変わる「小説薫風」に激怒した二階堂を取り込もうと画策したり、恵は突然消えた謎の作家を飛行場まで追い詰めて行く。

そんな中、恵の父が倒れたりストーカー事件が発生したりと、周辺できな臭い事件が勃発する。
しかし、雑誌が売れるのであればそれも取り込むと言う速水の姿勢は一切ブレなかった。

ところが今度は、薫風社内でも様々な事件が吹き荒れ、速水の足元も危なくなって来る。
そして雑誌「トリニティ」だけでなく、恵の運命も、翻弄されて行く。

「トリニティ」刊行の結果は速水を満足させられるものになったのか?
薫風社の将来は、何処へ向かって行くのか?

それぞれに翻弄された恵の人生は、どう変化して行くのか?
謎のベールに包まれたままだった「牙」の意味は?

『騙し絵の牙』見どころ4点

『騙し絵の牙』の鑑賞ポイントを紹介します。
極力ネタバレは無しです。

1.原作と映画の違い

原作も映画も「主演:大泉洋」を当て書きしていますが、内容は全然違っています。
原作では、二階堂大作の小説をパチンコ台に起用し、アニメ化も視野に入れた売り出しを計る設定が軸になっていますが、映画は社内での生き残りをかけた闘争に重きを置いています。

原作では恵の登場シーンも少なく、しかも、速水と少しだけ大人の関係になっていますが、映画では触れられていません。
脚本化の際、一度原作をバラして作り直した様です。

大泉洋の魅力を見誤らない脚本に仕上がってはいますが、原作を読んだ方は、かなり面食らうかもしれません。

2.大泉洋だけでない豪華キャスト

主役の速水を演じるのは、大泉洋。
胡散臭かったり毒の利いた口調を見せたり、時には鼻につく態度が目立つタレントですが、原作者が注目して当て書きしただけあって、映画・原作共に、その個性が十二分に発揮されています。

恵役を演じるのは松岡茉優。
実力派女優として注目されています。

雑誌「トリニティ」をヒットさせる為に、時には体当たりで対象者に向かって行く姿は、小説では見出せない、恵の新たな魅力を引き出しており、W主役と捉えても良いかもしれません。

他にも、佐野史郎・佐藤浩市・木村佳乃等の個性派キャストが揃い踏みしています。

3.出版・ライターを目指す人は必見

40稿に及ぶ推敲と構成を重ねて世に出たベストセラー小説・人気がでると見込めば、何があってもPCに向かわせて書かせようとする執念・出版社の名前を潰さずに生き残る戦略等、出版業界の内幕や作家稼業の厳しさを、これでもかと見せつけて来ます。

ネットサービスにシェアを取られてしまい兼ねない危機感や、紙の媒体での限界を機に外資系ファンドが脅しに来る場面も、現代をしっかりと描いています。

書店に小説を求めに現れる女子高生が登場します。
必要な人は必ずいると思える、救いのあるシーンと言えるでしょう。

マスコミ業界なので、いい加減な人種も普通に蔓延っているんだなと構えて見ても、きっと面白いです。

4.原作者・塩田武士

原作は、昭和59年に発生したグリコ森永事件を題材にした小説「罪の声」等の著者でもある塩田武士。

神戸新聞社に在籍していました。出版社の細かい内部事情までを丹念に調べ尽くして、作品に描いています。
原作本は、角川文庫化されています。2018年本屋大賞にもンクインされた、ロングセラーです。

大泉洋が表紙だけでなく、各章の扉に登場し、解説も担当しています。
監督は『桐島、部活やめるってよ』がロングラン上映を記録した、吉田大八が務めています。

『騙し絵の牙』感想

先の読めないサスペンスタッチな展開と大泉洋の魅力が重なった、見応えのある作品です。

幾度も展開するストーリーはそれなりに楽しめますが、登場人物の多さから、人間関係の煩わしさで、混乱するかもしれません。
また、二転三転とどんでん返しが続く構成は、方々で出尽くした感を覚えます。
出版界を描き切った点で評価出来ますが、作り過ぎを疑う場面もあります。

芸達者な豪華キャストを起用していますが「方々で同じ様な役を演じているかな?」と感じさせる人も多く「そろそろ演技の幅を拡げてみてはどうだろう?」と思わせるキャストも見受けられました。これは決して、老婆心ではありません。

キャストで際立っていたのが、お笑いトリオ・我が家の坪倉由幸でした。
速水を疎ましく感じ、雑誌「トリニティ」の編集方針の件で対立する場面は、大泉洋と対等な地位に置かれ、一歩も引けを足らない演技で、引き込まれます。

原作とはかなり違うので、同タイトルで別の設定と割り切ってみる必要があります。
大泉洋の魅力を引き出している面では成功しているので、それが決して悪いとは言いません。

小説は「速水の生き様を描いた作品」。
映画の方は「企業の権力闘争に重きを置いた映画」と定義づけたいです。

『騙し絵の牙』評価

主役・大泉洋を念頭に入れた作品「騙し絵の牙」。
その狙いは、小説・映画共、見事に当て嵌まっています。

その狙いを楽しめるのは勿論ですが、映画に関して言えば、規模に関わらず、どの企業にでも起こりかねない、内部闘争を描いていると捉えて観るのが良いでしょう。

計画が途中で頓挫しても、更なる知恵を持って乗り切る姿勢に感情移入しても構いません。
しかしこの映画に関して言えば「物事はそう簡単に上手く運ばないんだな」と覚悟して観た方が良いでしょう。

予告編でもチラッと出て来る、大泉洋演じる速水が、薫風社ビルの屋上で、持っていた紙コップを地面に叩きつけるシーンにどんな意味があるのか?

これだけは、最後まで見ないと真意が伝わりません。

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