漫画家青木琴美の累計600万部を越えるベストセラーコミック、『僕の初恋をキミに捧ぐ』は、前作「僕は妹に恋をする」のスピンオフ作品として少女コミックにて掲載されました。2007年、小学館漫画賞少女向け部門受賞。
また、2009年「Life 天国で君に逢えたら」の新城毅彦監督により、「花より男子」の井上真央と「重力ピエロ」の岡田将生を主演とした実写映画化が叶いました。

重い病で余命宣告された少年と、共に生きていこうとする少女の切ないラブストーリーは、漫画での結末とは違った形で描かれていることにも注目です。
さらに、心揺さぶるメロディと平井堅の歌声がタイムリミットのある限られた恋愛を物語り、その世界観に投身させられるのです。
爽やかで眩しい光が画面を通し伝わり、時の大切さまでもを表現します。

『僕の初恋をキミに捧ぐ』あらすじ

僕の初恋をキミに捧ぐ映画の幼い時

(C)2009「僕の初恋をキミに捧ぐ」製作委員会 (C)2005青木琴美/小学館

重い心臓病を患い、病院生活を余儀なくされている少年、垣野内逞(幼少期:小林海人)と、逞の主治医、種田孝仁(仲村トオル)の娘である繭(幼少期:熊田聖亜)はいつも一緒の大の仲良しです。
2人は大人になったら結婚しようと約束をかわしますが、8歳のある日、逞が20歳まで生きられないという宣告を偶然聞いてしまうのです。

中学生にまで成長した2人は、相変わらず仲の良い恋人同士。
しかし進学の時期が近づくにつれ、逞は残された時間を思い、大好きな繭と距離を置くことを考え出します。
成績優秀な逞は繭に黙って寮のある名門高校への進学を選択。
それを知った繭は猛勉強を重ね、逞と同じ名門校へ首席で進学するのです。新しい環境と新しい友人に囲まれた高校生活の中で、繭は逞の病気が完治することを信じ、2人の時間を積み重ねていきます。

『僕の初恋をキミに捧ぐ』

結末

僕の初恋をキミに捧ぐの井上真央&岡田将生

(C)2009「僕の初恋をキミに捧ぐ」製作委員会 (C)2005青木琴美/小学館

逞にとって繭は大好きな人。
だからこそ自分が生きている間に幸せになってくれたらと願います。
走る事も許されない自分とは違い、運動神経も抜群の学園のアイドル、鈴谷昂(細田よしひこ)が繭に付きまとうようになったことも受け入れざるを得ません。

また、逞が同じ心臓病を抱える友人の上原照(原田夏希)と再会をしたことからも2人の関係は変わってきます。
度々病院に見舞いに行く逞を横目で見ていた繭は、逞と照がキスをした事実を知り別れを決意します。

しかし、照は間もなくこの世を去ってしまうのです。
現実を目の当たりにした逞は、昂に短距離走の勝負を挑み、もう一度繭と一緒に生きていくことを決めます。

やがて強く惹かれ合う2人は初めて結ばれ、臓器移植のドナーが見つかったとの嬉しい知らせも受けるのです。
未来に希望の光が差し喜ぶ逞ですが、その心臓は、事故に遭い脳死状態に陥った昂の心臓だと知るのです。
逞は友達の心臓をもらってまで生きしたくはないと訴え、また昂の家族側からも移植の同意を取り下げられたことで話は振り出しに戻ってしまうのでした。

逞の心臓は限界にまで達し、ついに病院へ搬送されます。
繭は昂の心臓を下さいと昂の家族に涙ながらに訴えますが、それも叶いません。

逞は意識が遠のく中、幼い頃に繭と一緒に探したクローバ-の神様に最後のお願いをします
夢であるかのように元気になった逞は、病院を抜け出し、繭と新婚旅行に出かけます。
遊園地で楽しい時を過ごし病院へ戻った逞の心臓は、とうとう動く事を止めてしまいました。

後日、チャペルでウェディングドレスを着た繭の胸には逞の遺骨があります。
約束を果たした繭は晴れやかな表情で逞に話しかけるのでした。

『僕の初恋をキミに捧ぐ』見どころ3点

井上真央の初々しくも堂々たる演技

映画「僕の初恋をキミに捧ぐ」の井上真央

(C)2009「僕の初恋をキミに捧ぐ」製作委員会 (C)2005青木琴美/小学館

逞の事が好きだという気持ちが繭の全身から伝わってきます。
幼い2人の純粋な恋愛、そして何事にも興味津々で一生懸命な姿にとても好感が持てるのです。
ストレートな感情が、素直であることの可愛らしさや清々しさを思い出させることでしょう。

医師のひとり娘とあり、少々わがままで自由奔放な繭を演じる井上真央は、空気を読まない無鉄砲さが子供らしく、また恋人の病気に向き合う芯の強さも真っすぐ感じられる演技です。
彼女の憎めない小悪魔的な愛らしさが溢れる作品です。

臓器移植という重いテーマ

助かる命と助からない命。
友人の脳死により逞の命が救われるかに思えますが、またそこでも、消えかける命にわずかな望みを持ち続ける人がいることに気が付かされます。
これだけ医学が発達した世の中でも、命の重さや、そこに向き合う人の想いは常に大きく不変であることは言うまでもありません。
脳死という状態や、臓器移植に対しての考え方など、考えさせられる点も多く、今なお慎重な考えが繰り返される意味がわかる気がします。

夢を見ているような景色

季節の移り変わりが美しく、時の流れを思わせる映像が印象的で、全てが夢の中で繰り広げられたストーリーにも思えてきます。
桜の花が透き通るように美しく表現され、今という時間がいかにもろく儚く、それでいて美しいのかを感じられることでしょう。
悲しく切ないラブストーリーが明るく輝く青春に見えてしまうことも、この映像美あってのもの。
そして主題歌、平井堅歌う「僕は君に恋をする」が観る人の心に入り込み揺さぶりをかけるのです。

『僕の初恋をキミに捧ぐ』感想

限りある命に、いつもどこかで別れを感じながら、タイムリミットのある時間を恋人と過ごす物語は、泣けるだろうシーンも、胸が締め付けられる切ないシーンも、予想通りの展開を見せてくれる作品。
それに反し、同級生の中学生男子達と比べて妙に大人っぽい岡田将生や、繭の成績ではおおよそ手遅れにも感じられる名門校への進学などと、ツッコミどころは感じるものの、そうとわかっていても、感動してしまう要素が詰まった作品です。

単純なラブストーリーであるにも関わらず、やっぱり2人の恋の行方に一喜一憂できるのは、2人の幼くも純粋な想いが伝わってくるからなのでしょう。
また、恋愛、友情、将来、そして性への興味など誰でも通る道。
身近で共感できる悩みに感情移入しやすいのです。

不治の病、臓器移植の現状、命の重さ等と深いテーマを並べても、若き2人の精一杯の想いやひたむきさが胸に響き、透き通るような爽やかな景色が、夢のような日々を映しています。

経験が無いだけに、死にゆく気持ちには想像の範囲でしか共感できないものの、残される人の気持ちを思うとそれだけで胸が締め付けられるものですが、逞と繭の屈託のない笑顔が、爽やかな後味を残してくれます。

『僕の初恋をキミに捧ぐ』総括

映画『僕の初恋をキミに捧ぐ』

(C)2009「僕の初恋をキミに捧ぐ」製作委員会 (C)2005青木琴美/小学館

『僕の初恋をキミに捧ぐ』は、重い病を抱え、命に向き合う2人の感動純愛ストーリー
しかし、余命宣告を受けた病気の主人公が自暴自棄になったり、周囲の人が腫れ物に触るように気を遣う描写がほとんどない事がこの作品の魅力とも言えるかもしれません。

むしろ、病気の人に同情するのは周囲の人でなく病気の主人公自身。
それすら、繭の正直で前向きな存在が、日々を明るく照らしてくれるのです。

一方で、気持ちを張り詰め、前向きにいきるしかない繭の切なさを感じることができ、揺れ動く感情と命に向き合うストーリー重みも感じます。

生きている限り、誰にでも身近に起こりうるさまざまな病気。
病気に立ち向かう勇気だけでなく、日々を悔いなく生きる勇気と力をもらえる作品です。

そして何といっても、時は限りがあるものだと気が付かせてくれる作品でもあります。
一瞬一瞬を大切に素直に生きていくことで、まさに今、目に映っているものが素晴らしく感じられることでしょう