バイトを始めた銭湯は、殺しの場所として貸し出していた。
衝撃的で奇想天外なサスペンスコメディ。

低予算、少人数で作られた映画、「メランコリック」。
低予算で無名のキャストでできた映画でありながら、東京国際映画祭、ニッポン・コネクションなど、数々の賞を受賞し、上海やプチョンなど海外の映画祭にも出品された、マニアの間では注目されている映画です。

映画館での上映は少ないながらも、低予算&サスペンスでありながらコメディ、なかなかない設定、と第二のカメラを止めるな!になるのでは?と個人的には期待している映画です

どこにでもいそうな主人公やその家庭が舞台でありながら、何気なく始めたバイトの職場では殺しが行われていた―
と、日常ではありえない、映画だからこそ描ける設定。
たくさんの映画が作られている中、今までにはなかった、予想もできない展開に観る人みんなが心引き込まれることでしょう

あらすじ 前半部分(ネタバレなし)

誰しもが羨むような名門大学を出ながらも、社会とうまくとけこめず、正社員として一度も働いたことがなく、バイトを転々し、現在は無職の和彦(皆川暢二)。
仲の良い、温和な両親と共に実家で暮らし、「仕事は急がなくていいのよ、おいおいでいいのよ」と、両親も言われ、何気ない変哲のない日常を送っていたました。

ある夜、ひょんなことで和彦は近くの銭湯・松の湯に行くことになります。そこで偶然、同級生の百合(吉田芽吹)と会います。
和彦に好意を持っている様子の百合は、ぐいぐい和彦に話し掛け、今度行われる予定の同窓会に誘うのでありました。

同窓会で、「あの銭湯、バイト募集してるから働いてみたら?そしたら私ともちょくちょく会えるから。」と百合に言われ、その気になった和彦は下心で銭湯で働き始めます。

そこで、オーナーのおじいさん東(羽田真)、先輩の小寺(浜谷康幸)、同時採用された、今風のチャライ若者、松本(磯崎義知)と一緒に働き始めます。

ある夜遅く、松の湯の前を通った和彦は、まだ銭湯に電気が点いているのが気になり、裏から忍び込み、覗きます。
すると、なんと、お風呂場では殺しが行われていたのでした。

あらすじ 後半部分(結末ネタバレあり)

殺人を犯していたのは、先輩の小寺でした。
オーナーがやくざの田中(矢田政伸)にしている借金を返すために、松の湯を殺しの場所として貸し出していました。
殺しの腕の立つ小寺は、田中に言われた人を誘拐し、松の湯の風呂場で殺し、風呂窯で死体を燃やしているのでした。

殺しの場所を覗いているのがバレた和彦はタダで帰されるわけにはいかず、これから殺した後の風呂場の掃除をすることで殺人を手伝い、秘密を共有することになりました。

最初は殺しに驚いていた和彦も、だんだん、仕事として殺しの手伝いに慣れていきます。
また、危険な仕事を手伝ったことで法外な手当てをもらい、働く喜びを思わぬところで得ます。
それと同時に、百合とも付き合い始め、人並みの生活を送り、人並みの幸せを味わうようになります。

ところが、そんな時、小寺が殺しの現場で殺されてしまい、これからは代わりに松本が殺しを担当することになってしまいました。

そんな現状に不満を持ち始めた和彦と松本は、元締めの田中を殺せば、もう殺しはしなくてはいいと気づき、オーナーの東に手伝ってもらい、田中を殺す計画を立てることに。
しかし、田中を殺したものの、東が裏切り、松本が東に撃たれ、途中で乗り込んだ和彦は東を撃ち殺してしまうのでした。

東がいなくなったことで、松の湯を受け継ぐ和彦達、同級生で起業家の田村(大久保裕太)にオーナーをやってもらい、和彦が雇われ店長に。
仕事も恋愛も友情もうまく行き、幸せに暮らす和彦達でありました。

見どころ

「メランコリック」の見どころは二つあります。

  • サスペンスなのにコメディ
  • 磯崎義知

以上を、順に追って紹介していきます。

サスペンスなのにコメディ

殺人が主軸となる物語―と緊張感が漂うストーリーの中で、コメディの要素がところどころにあり、ほっこりさせてくれます。
ガハハハと笑えるわけではなく、しみじみと笑う感じです。

例えば、和彦の両親は本当に仲が良くほほえましいのですが、演技がわざとなのでしょうか?
とても素人っぽくて、いつも食卓で、「母さんの料理は本当においしいねぇ」「あらぁ、やだぁ、お父さんたら」といちゃつくシーンがお決まりであるのですが、リアルな感じがしてほっこりしながらも笑いを誘いました。

また、撃たれた松本を和彦の家に避難させた時、「お風呂屋さんの仕事も案外大変なんだねぇ」とお父さんがのんきに言っていたのが面白かったです。

磯崎義知

「メランコリック」にはいろいろなキャストが」登場しますが、中でも注目したのが、松本役の磯崎義知さんです。
一重で切れ長の目に鍛えられた筋肉むちむちの体と個人的な好みでもあげてしまいましたが、殺しの時のアクションシーンがキレッキレで素晴らしく、惚れ惚れしてしまいました。
それもそのはず、幼い頃からの武道の経験を生かし、本映画ではアクションシーンの構成や演出も行っています。

また、普段の姿を見ましたが、今風のチャライ松本とは違った感じで、本当に演技がうまいんだなと感じました。
今はまだ、あまり知られていませんが、これから作品が増え、人気が出る俳優さんなのではないかなと思いました。

感想

誰しもが思うと思いますが、まずは発想が面白いと思いました。
たくさん映画は観ていますが、バイト先、しかもお風呂屋さんが殺しの場所として貸し出されていたという奇想天外な設定は今までなかったと思います。

死体を燃やしたら臭いがすごいのでは?とか、血しぶきを出さずに殺せば掃除が楽なのに...
といろいろ突っ込みどころはありますが、そういうところを楽しみながらも、あまり気にせず、本筋を見て、そこにあるメッセージ性を見る映画なのかなと思いました。

少人数で作った映画なので、なんと主役の皆川さんがプロデューサーを兼任していたり、とびっくりする点もありましたが、皆が面白いものを創ろうという熱量が伝わってくる気もしました。
また、出ている人達が無名と言うことで、ありえない設定なのに、リアルに話を感じ、ぐいぐい惹き込まれました

そして、登場人物がみな、殺しということをあくまで仕事として扱っていたのが面白かったです。
昼間の松の湯の仕事のリーダーを任されていた和彦が、夜の殺しの仕事のリーダーも松本ではなく、自分がやりたいと嫉妬しているシーンは、普通の仕事と変わらないなと思いました。

まだ、私の周りでは、「メランコリック」面白いよ~と言う話、気になるよ~と言う話は、マニアックな映画ファンの中ではじわじわとしかきていませんが、観てすごく面白かった!と言うのは、伝えるようにしています。
いろんな方に観てもらえたらうれしいな~メランコリック熱が広がればいいな~と思っています。

また、この作品は監督と皆川さん、磯崎さんが立ち上げたユニット、One Goose(ワングース)の第一弾の作品と言うことで、第二弾がとても楽しみです。

評価

奇想天外な映画なので、誰にでも観てほしいですが、マニアックな映画なので、そんじょそこらの映画では満足できないと言う映画ファンの方にはオススメです。

ただ、この映画の中では、殺し=悪という風に描かれているわけではなく、殺人を犯した和彦が捕まるわけでもありません。
殺しはしても、最後は平和に終わります。そこをフィクションだからと割り切って、ニートの成長物語というメッセージ性を見出せる方は観ていて面白いと思いますが、映画の中でも殺しはダメだと考えている人にとっては、何で和彦は捕まらないんだ?
とモヤモヤが残る映画になるかもしれませんので、オススメはできません。

いろんな映画がある中、これは新しい世代の映画だなと私は感じました。
どうなるか展開が読めない、この面白さをみなさんに味わってほしいです。
そして、ひとりでも多くの人に観てもらって、メランコリック談義をしてみたいです。