パラレルワールドとは、私たちが体験している世界とは別に、並行して存在する別世界を指す。
映画「パラレルワールド・ラブストーリー」とはそんな2つの世界を描いたミステリー映画である。

パラレルワールド・ラブストーリー作品情報

  • 公開日:2019年5月31日(日本)
  • 監督:森 義隆
  • ジャンル:ミステリー
  • 受賞歴:-
  • 主な出演者:玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太、筒井道隆、美村里江

原作は超人気作家「東野圭吾」のパラレルワールド・ラブストーリー。

パラレルワールド・ラブストーリー (東野圭吾)
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講談社
東野圭吾の作品は映画化すれば必ずヒットするが、パラレルワールド・ラブストーリーは表現の難しさから実写化不可能と言われていた作品。

その作品を映画化できた点にも注目が集まった作品である。

どちらの世界が真実なのか?必ず2回観たくなる!」というキャッチコピーにふさわしく、全てを知った後もう一度観たくなる映画に仕上がっている。

どちらの世界が真実か?2つの世界を解説する。

1つ目の世界:愛を取るのか?あらすじ前半

敦賀崇史(玉森裕太)には三輪智彦(染谷将太)という小学生の頃からの幼馴染がいる。
勤務先である脳研究を行っているバイオテック社でも2人は一緒であり、常に高いレベルで競いあっていた。
話は少し遡り、学生時代。
崇史は電車で恋をする。
その相手こそ後に智彦の彼女として紹介される津野麻由子(吉岡里帆)であった。
いつも違う電車に乗っている2人であったが、電車同士が並走するほんの数秒間、2人はいつも窓越しに互いを意識する。
だが崇史が大学を卒業するまで結局2人の運命は交わらないままだった。

後に智彦の彼女となり同じバイオテック社で働く麻由子を見て崇史は少し智彦から距離を取るようになる。
だが、昔から病弱で足も悪い智彦にとって崇史はかけがえのない存在。
崇史に麻由子と仲良くなってほしいと懇願する。
崇史と麻由子は互いにあの時の電車の相手だとわかっていながらも知らないふりをしていたが、智彦の頼みで距離が近づくにつれ、その現実に耐えきれなくなった崇史がついに麻由子に気持ちを打ち明け、自分のものにしてしまうのだった。

これが1つ目の世界である。

2つ目の世界:友情を取るのか?あらすじ後半(ネタバレ)

2つ目の世界はこの1つ目の世界に織り交ぜられる形で進んでいく。
崇史にとって麻由子は智彦の紹介で出会った初めから自分の彼女なのであった
だが、時が経つにつれ崇史の記憶に辻褄が合わない部分が見られるようになってくる。
智彦はどうしてLA勤務になって自分の目の前からいきなり姿を消しているのか。
時折浮かんでくる1つ目の世界の断片は一体何を意味しているのか。
断片的に浮かんでくる記憶を辿り始めるなかで崇史はある重大な事実を思い出す

それは智彦の研究内容であった。
智彦はある日を境に研究にますます没頭するようになっていた。
どこか狂気に近い空気までをも醸し出していた智彦であったがそれもそのはず、脳研究における重大な発見をしていたのである。
まだ検証中の段階ではあったが、それは自分の記憶の一部を書き換えられるというものであった。

その記憶の書き換えには自身の強い願望が反映されることになるのだが、脳は書き換えられた強い願望を現実だと思い込み、その願望と今置かれている現実との差異を埋めるよう、できる限り自分が現実だと信じている事象に現実を合わせていくことになる。

智彦は崇史と麻由子が両想いであり、自分を裏切っていることに気付いていた
智彦にとっては崇史も麻由子も大事な存在なのである。
そしてついに智彦は崇史を自分の研究室に呼び、研究内容の全てを打ち明け、自身の記憶を麻由子の存在を知らない自分に書き換えてほしいと崇史に頼む。

だがそれは記憶の書き換えだけにとどまらず、脳がスリープ状態に入るよう智彦が仕組んでいた悲しい願いでもあった。

以下、ネタバレあり

崇史は眠っている智彦を見て自身がおこしたことの重大さに気付く。
そして自身の記憶も書き換えることにした。

智彦を追い詰めた自分などいない、麻由子が初めから自分の彼女であったという現実に

全てを思い出した崇史、そして全てを知りながらも崇史に寄り添い続けた麻由子。

2人は互いの記憶を消すことにする。

全てが綺麗に消え去り、崇史とスリープ状態から目覚めた智彦は再び固い絆で結ばれていた。
だが、人ごみの中で崇史は麻由子とすれ違い、互いに覚えていないはずなのに2人は立ち止まる。

運命は変えられないのかもしれないと悟った瞬間であった。

『パラレルワールド・ラブストーリー』感想

本編はパラレルワールドの特性をとらえて、2つの世界が同時に進んでいく。

そこにはこれが1つ目の世界である」というようなわかりやすさは一切ない

麻由子はあるシーンでは智彦の彼女であり、また次の瞬間には崇史の彼女なのだ。
このシーンの切り替えが実に巧妙で、観ている私たちにとっても今がどちらの世界なのか、麻由子はどちらの彼女なのか、崇史と同様に推理して観ていく面白さがある
また、観ている途中でこれは智彦の研究が絡んでいる。
ということには大方気づくのだが、それがどのような意図をもってなされたのか。
憎しみから生まれた復習なのか…

様々な推測が最終的には裏切られることになる。
結果的には人の悲しみが交じり合った故の純粋な行動だったと言えるのではないだろうか

この映画では研究要素も強く描かれている為、パラレルワールドの本質とは少し異なるかもしれないが、この映画の中で描かれるパラレルワールドとは「並行して進んでいる、ありえるかもしれない2つ目の世界」ということではなく、「こうであってほしい」理想の世界を描いていたに過ぎなかったのではないだろうか。

最後に2人が雑踏の中で再び出会うことによって今後の人生がどのように変わっていくのかはわからない。

が、電車の窓越しに2人が出会い、それだけの関係性で終わってしまったと思っていても智彦を介して再会したように、どれだけ記憶を書き換えて操作しようとしても根本の運命を変えることはできず、どこかで交じり合っていくのではないだろうか。

また、主演の一人である玉森裕太(Kis-My-Ft2)さんの演技が評判通りで友情と愛情に揺れ動く心理描写など東野圭吾さんの原作を抜きにしても引き込まれる良さがある。
原作を知っている人はもちろん、知らない方も十分楽しめる映画と言えるでしょう。