冥界と下界を舞台に正義の亡者ジャホンと冥界の3使者たちの運命をゆさぶる冒険を視界に収まりきらない程の壮大さで描いたシリーズ第一章『罪と罰』編では、一家族の愛の姿が観る人の心に温かな苦しみを遺していきました

続く第二章の今作『因と縁』編は、新たな亡者にジャホンの弟のスホン(キム・ドンウクさん)を迎えながらも前作で多くは語られることのなかった3使者たちの生前の記憶を歩く新たな冒険へと発展していきます。
冥界と下界、そして新たな舞台として加わるのは千年前の高麗時代の記憶。

今作から登場する成主神(ソンジュ神)が使者たちの前に立ちはだかり物語を本当の中核へと導く鍵を握ります。
成主神役を演じたのは『新感染-ファイナル・エクスプレス(2017)』を機に日本でも人気沸騰中のマ・ドンソクさん。

強靭な身体と人情味溢れるキャラクターとして唯一無二の存在感を放ちますが、外見と中身のコントラストがゆえに人を惹きつけてしまう等身大の姿で予告編のワンシーンから熱い視線を集めます。
また、前作でオ・ダルスさんが演じた判官の役者交代により今作から出演のチョ・ハンチョルさんには自ずと厳しい視線が向けられます。
韓国の人気ドラマに多数出演するいい声ならぬええ声の持ち主で、映画『LUCK-KEY/ラッキー(2016)』にて主演のユ・ヘジンさんとの掛け合いが非常に印象的だったハードボイスが新たなる法廷で独自の存在感を打ち出します。

『 神と共に第二章 因と縁 』あらすじ

怨霊と化し下界と冥界を荒らしたスホンは、誰もが予想もしなかった貴人判定を下され冥界の3使者と共に初軍門ではなく閻魔大王のいる天倫地獄へ向かいます。

本来ならば即消滅させるべき怨霊ですが、カンニムの申し出により過酷な条件付きでスホンは裁判の機会を得ます。
冥界の法に背く厄介者の成主神を消滅させることを目的に彼の居座る下界へと向かったヘウォンメクとドクチュンは、そこで驚くべき秘密を明かされます。
1000年で48人の転生を積み重ねてきた使者たちにとって勝ち取るべきスホンの裁判がまるでフェイクかのように、冥界と下界そして使者たちが生きた高麗時代を巻き込む壮絶な物語が始まります。

スホンの死の真相、使者カンニムが抱え続けている1000年間の苦しみ、そしてヘウォンメクとドクチュンの失われた記憶の秘密とは…
次々と明らかになる真実の巧妙な絡み合いの中で全ての謎が解き明かされた時、本当の裁きが我々の心をも震わせます。

見どころ:記憶を連れてきたあの人

「20年前、自分はどこで何をしていたのか…。」
記憶を司る脳の機能がさほど当てにならないことは、今こうして鮮明に取り出せない記憶のことを思うと容易に実感できます。

取り出せずにむず痒さを感じる記憶があるとするならば、意識の中から随分と遠ざかり取り出そうとすら思わない記憶も存在しています。
でも、どうしたことかそれが急に懐かしくじんわりとした温かさとともにフラッシュバックする体験をしたことがありますか?

あの日、私はレジの前に立つかすかに見覚えのある女性に「どちらかでお会いしたことがありませんか?」と一言声をかけました。
彼女が不意に連れてきたのは幼稚園の頃の私の記憶、自分では取り出そうとすら思わなかったかつての自分と再び出会うことになりました。

スホンの死の真相を目の当たりにした日、カンニムの目の奥に浮かび上がった生前の辛い記憶がそうであるように、記憶を消されたヘウォンメクとドクチュンの運命が成主神との出会いをきっかけに大きく動き出すように、ここでは第三者の存在が生前の彼らの姿を鮮明にさせてくれます。

裁判には真実を明らかにするための証人が必要であるように、3人の使者たちも失われた記憶の謎に迫りながら法廷に立つ被告人なのです

見どころ:裏裁判、裏メッセージ

「最高裁判所の判事を夢見るスホンが8度に渡って受験したという韓国の司法試験とは?」
そんな疑問と共に調べて見たところ、2017年12月28日に司法試験の廃止が決定したことを知りました。

これは2017年12月20日第一章の封切り後間も無くのことです。
そして2018年8月1日、灼熱の韓国で第二章が公開しました。
廃止以前、裁判官への道は2通り存在していました。

まずは司法試験の合格を前提としたもの、もう1つは今現在唯一のルートであるロースクールの入学を前提としたものです。
決して裕福ではない家庭環境ながら兄のジャホンによる仕送りに支えられて門戸を開く余地が残されていたスホンは、今は無き1つ目の方法で道を開こうとしたことでしょう。
怠惰さが垣間見れながらも、8回目でようやく司法試験をパスしたという彼が生前に判事姿を見せることはありませんでした。

しかし、そのままで終わらないのが映画の伏線回収劇です。
スホン自らが被告人として使者カンニムと共に過ごす冥界ツアーの中で、彼の放つ言動全てから「さすが判事を夢見ていただけのことはある。」
と口元がゆるむほどの毅然とした態度と雄弁さが花開きます。

時にカンニムを手のひらで転がすかのような役者まがいの行動にゾッとさせられます。
目に見える裁判の裏で本当の裁きを受けているのは誰なのか、判事スホンは冥界地獄でその才能を大いに発揮します

現在、ロースクールへの入学試験合格者は上位1%程度という非常に狭き門であることに加え、日本円にして300万円〜600万円程の学費を必要とすることからその道は暫定的に富裕層に限られてしまうのが実情です。

低所得者であるスホンが司法試験に臨み、あと少しで豊かな暮らしを得られそうだった矢先の事故死。
天寿を全うできなかった「貴人」として、昨今の若者の就業問題に対して何らかのインパクトを遺してくれた人物なのではないかと思います。

『 神と共に第二章 因と縁 』まとめ

前編をご覧になった方ならば、一章完結でも十分かと思えるほどの感情の高ぶりが記憶に新しいのではないでしょうか。
私自身、わかりやすく人情を感じられた第一章がより面白かったというのが率直な感想でした。

では第二章は見なくても良いかというと綺麗な思い出は綺麗なままで残しておきたい」という方ほど見逃して欲しくない理由があります。
第一章で多くの涙を誘った主人公ジャホンの家族には、まだ語り尽くせずにいた愛の物語が遺っています。

主人公スホンがあの時母の前で誓った言葉をどうか思い出してください。

第一章をスキップし第二章から軽快な足取りで冥界ツアーに飛び込もうとしている方がいらっしゃいましたら、最終コーナーであるこの場で足止めを食らわせてください。

韓国映画『神と共に 第一章:罪と罰』あらすじと見どころ3点を解説

第二章の冒頭には第一章のダイジェストがございますが、前編で描いたのは『神と共に』のデフォルトである冥界の基本的ルールと地獄絵図の壮大さです。

ただでさえ「長い。間延び感が否めない。2作まとめてもいい。」とのレビューも見受けられますから、数分間で全てを伝えられようものなら製作者側もそうしたかったと思います。

しかし、スクリーン一面を余すことなく多い尽くす地獄絵図の美しさに逐一意識を取られてしまうのは、まだ死を経験したことのない私たちにとってごく自然な反応ではないでしょうか

職場環境に慣れるまで早くて1ヶ月〜長くて半年ほどかかるといわれますが、やはりここでも人は見慣れない環境に慣れるまでそれなりの時間を要します。
美しく壮大な背景はそのままに、今作のメインテーマである登場人物たちの「因と縁」の物語に集中することは、第一章無くして容易ではありません。

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