劇中歌「レット・イット・ゴー」がアカデミー賞歌曲賞を受賞し、映画だけでなく、歌も世界中で大ヒットした『アナと雪の女王』。
オリジナル版も日本語版も、キャストの素晴らしい歌声が物語を盛り上げています。
「レット・イット・ゴー」以外にも、キャラクターの内面を知ることができるものや、キャラクターらしさを感じられる歌など、ストーリーやキャラクターに関わるものがギュッと詰め込まれています。

映画の世界をより一層深める『アナと雪の女王』の歌。
そこからエルサとアナの心を読み解くことで、物語の新たな面を発見することができます。
エルサとアナの二人の心や、仲良し姉妹の関係の変化を知る手がかりになる4曲を解説していきます。

姉妹の心の溝ができた過程を知る曲:Do You Want To Build A Snowman?(雪だるまつくろう)

幼いアナの無邪気な声と、ドアをノックする音で始まる「Do You Want To Build A Snowman?雪だるまつくろう)」。
何度ドアをノックしてもエルサに拒否されてしまうアナが、諦めずにドアをノックし続ける姿が印象的です。
アナの明るい性格が感じられるこの曲では、歌のパートでは無邪気なアナの姿が、イントロのパートでは苦しむエルサの姿が描かれています。

手で触れたものが凍るほど力が強くなったエルサの心は不安定になり、唯一力を知る両親とさえ距離を置こうとします。
力を抑える手助けにと父から手袋をはめられ、一緒に”おまじない”を唱えるエルサ。
そして感情を抑えようとする彼女の表情から、笑顔は消えてしまいます。

曲の終盤では、いつしかアナはエルサの部屋のドアをノックしなくなり、外国へ向かった両親が事故で命を落とすという悲劇が描かれています。
葬儀から戻ったアナは悲しみをこらえ、部屋の前でエルサに声をかけます。
エルサは扉を開けることができず、扉のすぐ向こうで膝を抱え、深い悲しみにくれるのです。
彼女の部屋が雪に覆われているのですが、心が不安定になると魔法の力が強くなることが分かる場面になっています。

そしてこの曲で描かれているエルサと両親の関係。
魔法の力をコントロールできなくては、他者だけでなくエルサ自身も危険な目に合うかもしれない。
その思いから父は城の門を閉ざし、娘たちを外の世界と隔離することを選びます。

日に日に強くなる魔法を恐れながら、その力を抑えることを言い続けられてきたエルサ。
両親は娘に寄り添い力になろうとするのですが、悲しいことに彼らの行動はエルサを抑圧してしまうのです。

エルサとアナそれぞれに深い愛情を持っているのですが、両親の選択は結果的に姉妹の心の距離をも広げてしまうのです。

楽しげな雰囲気から始まる曲ですが、物語の核となる部分を知ることができる重要な役割を担っています。

戴冠式に臨む対照的な姉妹の心境が感じられる:For The First Time In Forever(生まれてはじめて)

「戴冠式だ!」と飛び起きるアナの姿と共に始まり、チャーミングな彼女の魅力が溢れる「For The First Time In Forever(生まれてはじめて)」。
この曲ではエルサとアナの対照的な心境を感じることができます。

長い間、誰とも過ごすことなく孤独を味わってきたアナ。
エルサが部屋にこもるようになった理由も分からず、広いお城で一人過ごしていたアナは、広間で開かれるダンスパーティーや多くの人と過ごすことを夢見ていました。

そしてその夢が現実になったのが戴冠式の日です。
明るく伸びやかな声で楽しげに歌うアナは、お城の門が閉ざされていた孤独な日々が終わり、新しい日が始まることに喜びと興奮を隠せません。
運命の人に出会えるかもしれない...
孤独を強いられてきたアナは期待に胸を膨らませます。

一方で王位に就くエルサは、心の中では大勢の人の前に出ることを恐れ、力を隠さなければいけない、力を知られてはいけないと父との”おまじない”を、呪文のように呟きます。

今日一日だけ我慢すれば大丈夫。
エルサのパートは短いのですが、そこから彼女が抱える不安や恐れが苦しいほどに伝わってくる、重みのある歌唱シーンになっています。

エルサとアナの正反対な思いが交錯するかのように、晴れやかなアナの歌声と、自分を鎮めようとするエルサの歌声が重なるこの曲

新しい日の始まりに期待するアナと、この日だけを乗り切ろうとするエルサの表情にも注目して聞いてほしい一曲です。

オリジナル版で聞く:Let It Go(レット・イット・ゴー)

「Let It Go(レット・イット・ゴー)」では、隠してきた秘密を知られて途方にくれるエルサが、”Let it go”という言葉を口にして、悩んでいても仕方ないと思い直し、自分の力を解放する姿が描かれています。

自分の力を知られてしまったエルサは動揺し、お城から逃げ出して北の山へと一人たどり着きます。
もう元には戻れない...

絶望感を漂わせるエルサの表情は暗く、その口からこぼれだすのは長年父と一緒に口にしてきた”おまじない”です。
「力のことを知られてはいけない。力のことは隠さなければならない。」エルサを落ち着かせる為に言い聞かせていたこの言葉は、”いい子でいなければ”というプレッシャーを彼女に与え、彼女を縛り付けていたのです。

”Let it go”という言葉と共に、力を知られてしまったと悩むことを止めて手袋を脱ぎ捨て、力を試し始めるエルサ。

階段を駆け上がっていくシーンでは、抑圧から解放された晴れやかな表情と、魔法の力を存分に楽しむ姿を見ることができます。
そして壮大な氷の城を作り上げ、美しいドレスを身にまとうと、「過去は振り返らない」と、二度と自分の力に悩まされないという強い意思を示すのです。

悩むことを止め、良い子でいなければという呪縛から逃れたエルサ。
ドラマチックな曲と共に、いつも不安を抱えていたエルサが、自信に満ち溢れた姿に変わっていく「Let It Go(レット・イット・ゴー)」。
エルサが自分を見つけ出す、作品の中でも最も重要な歌になっています。

For The First Time In Forever (Reprise)生まれてはじめて(リプライズ)


氷の城で再会した姉妹がそれぞれの思いを歌にする「For The First Time In Forever (Reprise)生まれてはじめて(リプライズ)」。
この曲ではエルサなら簡単に冬を終わらせられると楽観的に考えるアナと、せっかく手にした自信を打ち砕かれてしまうエルサの脆さが歌われています

「Let It Go(レット・イット・ゴー)」で新しい自分になったエルサ。
自信に溢れたその姿は氷の城を訪れたアナを驚かせます。

自分の居場所を見つけたから王国はアナに任せると言うエルサですが、王国が冬に覆われたから魔法をといて欲しいとアナからを告げられ、激しく動揺します。
やっぱりダメだった...
自信は砕かれ、心が不安定になっていくエルサ。
それと同時にあたりには雪が現れ、次第に吹雪へと変化していきます。
しかしアナはエルサの苦悩には気がつかず、無意識にエルサを刺激し続けてしまうのです。

うめき声のようにも聞こえるエルサの歌声に胸をえぐられるような歌のラスト。
不安定な心をコントロールできなくなったエルサは「私にはできない!」という悲痛な叫びと共に力を爆発させてアナを傷つけてしまうのです。

「アナと雪の女王」劇中歌まとめ

『アナと雪の女王』で登場する様々な歌は、キャストの高い歌唱力、表現力も重なり、物語の世界に入り込む重要な役割を担っています。

上記で紹介した他にも、

  • 夏への憧れを高らかに謳い上げるオラフのおかしさが炸裂する「In Summer(あこがれの夏)」
  • アナとハンス王子のハーモニーが美しい「Love Is An Open Door(とびら開けて)」

など、聞くのも見るのも楽しい曲が映画を盛り上げていきます。

キャラクターらしさが感じられ、物語をより深く知る手がかりとなる『アナと雪の女王』の歌の世界。

美しいグラフィックや、いきいきと動き回るキャラクターの姿だけではなく、物語の鍵やエルサとアナの心が反映された歌の世界にも注目することで、より一層アナ雪の世界を楽しむことができるでしょう。