劇場公開中の作品

本作は2004年、アメリカはトランシルヴァニア大学の図書館からジョン・ジェームス・オーデュボンの画集『アメリカの鳥類』を強奪するという実際の事件を元に作られた作品です。
映画の冒頭でも「これは事実に基づく物語ではなく、真実の物語である」とハッキリ表示されていました。

本作には実際の事件を起こした犯人たちがインタビュー形式で登場し証言するというドキュメンタリーパートと、実際起こったことを俳優が演じるストーリーのパートに分かれて交互に進んで行きます。

つまり本作は事件の資料などに基づいてストーリーを膨らませるためにあれこれ脚色されたような作品ではなく、事件の当事者と本人たちの証言を再現しながら話を進めるといった一風変わった作品に仕上がっています

「アメリカン・アニマルズ」のあらすじ(ネタバレあり)

ウォーレン(エバン・ピーターズ)、スペンサー(バリー・コーガン)、エリック(ジャリッド・ブラハムソン)、チャズ(ブレイク・ジェンナー)の4人は一抹の不安を抱えつつも、それぞれが計画の流れに逆らえず犯行予定日を迎えてしまう。
スペンサーの用意した変装道具を身につけ、老人に変装して図書館へと向かう4人。
しかし予定通りにいったのはそれぞれの待機場所に着くところまででだった。
本来ならば1人であるはずの司書がその日は他に3名在籍していたのだ。
それに気づいたウォーレンはすぐさま引き返してくる。
異変を察知した他3人と合流し決行するか否かで揉め始めるが、重圧に耐えきれずにスペンサーは図書館を飛び出してしまう。
決行は見送られた。
安堵したスペンサーだったが、ウォーレンは諦めていなかった。
日を改めて決行することを宣言し、また次は変装せずに行くことを提案する。

計画としては、まずウォーレンが1人で2階へ行き本を管理している司書をすみやかに気絶させる。
1階で待機しているエリックを呼び寄せたのち2人で『アメリカの鳥類』を包み、部屋の奥にあるエレベーターから地下へ降りる。
そこから裏口に待機しているチャズの車で逃走する(スペンサーは図書館の外で異変がないかを監視しているため、別ルートで逃げる)。

その予定であったが、ウォーレンは司書を気絶させようにも1人で行うことをためらってしまい、早々にエリックを2階へ呼び寄せる。
気絶しているはずの司書に出迎えられたエリックも動揺を隠せない。
その時、何かに駆られるように司書に掴みかかりスタンガンを押し当てたウォーレン。
しかし彼女に気絶する様子はなく、痛がり、泣き叫ぶ。
その様子を見てパニックになったウォーレンとエリックは震える手で乱暴に彼女の手足を縛り上げた。
最初から暴力を振るうことを拒否していたエリックはショックで呆然となる。
パニックになりながらも、ようやく目当ての本およびその他の価値ある書籍を手当たり次第にカバンに詰めこみ慌ただしくエレベーターに乗り込むのだが、しかし地下は真っ暗で物が溢れており、出口がどこにあるのか2人には分からなかった。
エレベーター専用の裏口から脱出することを諦めた2人は仕方なく1階へ戻り、学生や図書館のスタッフがいる一般スペースを不自然に横切って階段から直接裏口へ出ようとする。
だが階段は狭く、本の中でもかなり大判サイズである『アメリカの鳥類』を2人で運ぶのは難儀であったため、本を落とした上に回収することを諦めてそのまま裏口から脱出する。

慌てふためいて出てきた2人の様子に動揺するチャズ。
ウォーレンはチャズの車を無視して走り続けたのでエリックだけを乗せて急発進する。
走り始めた車に気がつき、思い出したかのように飛び出してきたウォーレンを勢い余って轢いてしまう。
幸い軽傷で済んだが、目当ての本を置いて逃げてきたことや計画通りに進まなかったことでさらにパニックになる3人だったがその日はからくも逃走に成功する。
その後4名は手元に残った書籍を売り払うためにオークションハウスへ行き、鑑定書をもらう手はずを整える。
しかし「担当者不在のため鑑定書は後日でなければ発行できない」と帰される。
その際にスペンサーは連絡先として自分の携帯電話の番号を渡してしまう。
その不手際を激しく非難するチャズはウォーレンは言い争いになってしまう。
激昂したチャズはとうとう銃をウォーレンに突きつけ、「お前が殺したんだ。俺たちを殺したのはお前だ」と言い放つ。
険悪な雰囲気のまま4人は解散し、それぞれの生活に戻るも後日あっさりと逮捕され、4人とも7年の刑期が言い渡される。

出所後、エリックはライターとして活動し、その道の職を探している。
チャズはインストラクターとして働き始めた。
ウォーレンは大学へ入り直し、映画製作を学んでいる。
スペンサーは画家として活動中だ。
主に鳥類の絵を描いているのだという。

「アメリカン・アニマルズ」の見どころ

アメリカンアニマルズで本人出演シーン

本人出演シーン

本人たちの証言が交互に出てくるのですが、4人とも顔つきに特徴があり俳優といっても差し支えないような雰囲気を醸し出していました
インタビュー部分はドキュメンタリーのはずなのに、例えばリーダー的存在のウォーレン本人がツイン・ピークスシリーズで有名なカイル・マクラクランの若い頃に似ていて演技を見ているようにも感じます。
またインタビューパートだけでなく、不意にストーリーパートに本人が登場する場面もあったりするのですが、そこはパラレルワールドを観ているかのようであり、本人たちの存在が絶妙なスパイスになっています。

本人たちの語り直しと真実について

実際事件を起こした本人とはいえ、彼らにしてみればそれも14年も前の話です。
当事者同士でも話が食い違ったり記憶が定かでない部分がいくつも出てくるため、意図せずに真実が曖昧な部分も出てきています。
同じシーンを回想していてもウォーレンとスペンサーの記憶は一致していなかったり、ある部分では確かめようのない証言もでてきます。
特に謎なのはアートディーラーに会うためにウォーレンはオランダへ行き、ディーラーに実際会ってきたと言い張りますが、他の3人は誰もそれを確かめることはできないのです。
スペンサーは「本当だと信じてはいるけれど」と言い、チャズは「絶対に嘘だ」と言い張ります。
そして当のウォーレンはというと……

「アメリカン・アニマルズ」の感想

現実に起こった事件を基にした映画は数多くありますが、その中でも本作はかなり特殊な印象を受けました。
単にストーリーを追っていくだけではなく、その時彼らは何を思っていたか、どういう状況だったかを本人の口から語られることによって徐々に主人公たちと一体化していくようにも感じられます。
その一体化は単なる共感とも違う独特な感覚です。

罪悪感に苛まれながらも一度乗ってしまった流れに逆らえない「若さゆえのノリ」みたいな雰囲気も、「何者にもなれない自分」に嫌気がさす気持ちも、「自分も特別な人間になれるかもしれない」という夢想さえも、きっと誰もが身に覚えがあるはずです。
彼らは決して悪人ではない。
悪人にさえもなれない彼らは、もう1人の自分です。
どこまで行ってもザ・普通な自分から観て、「特別な人間」になろうとする彼らの悪戦苦闘とその結末は奇妙な生々しさがあり、また自分自身の平凡さを突きつけられているような切なさが残るのです。

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