ニューヨーク州マンハッタンのグリニッジ・ヴィレッジにあるギターショップ。
その店は人の良さそうな店主のリックと、リックの母親ドロシー、そしてリックの愛弟子であるシンディの3人でやっている小さなお店。その店はニューヨークにある建物に使用されていた廃材を再利用して作ったギターしか置いていません。
しかしそのギターはパティ・スミス、ボブ・ディラン、ルー・リードと言ったアメリカを代表する超大物アーティストがこぞって愛用するというから驚きです。
なぜこの店が多くのギタリストに愛されているのか?5日間に密着し、その謎に迫るドキュメンタリー

『カーマイン・ストリート・ギター』あらすじ(ネタバレなし前半)

月曜日、ザ・セイディースのメンバーであるダラス・グッド、トラヴィス・グッドが店を訪れ2人で楽しそうにギターを試し弾きする。

翌日はタレントのデイブ・ヒルが来店し、店内の奥にしまってある廃材置き場を見せてもらう。
リックは廃材を軽く叩きながら「音が全然違うだろ?特にいい木は触るだけでもわかるよ」と言って語り合う。

ある日はザ・ルーツのカークダグラスが、またある時はエスター・バリントがやってくる。
エスターが試し弾きしているとシンディが「そのギター、私が作ったの」と控えめに話しかける。

「そうなの?素敵ね、いいギター」と2人で話し合う。
まだ見習いながらもギターを褒められて嬉しそうなシンディ。
またとある日、ビル・フリーゼルがやってくる。
彼は1曲弾くと「これはすごいね」とギターを撫でる。
それを見たリックが「もっと高く売ろう。ビル・フリーゼルが使ったギターだからね!」と笑う。

『カーマイン・ストリート・ギター』あらすじ(ネタバレあり後半)

週の中頃、ファイアリー・ファーナセスのエレノア・フリードバーガーが来店する。

彼女はギターを弾きながらシンディと話し始める。
「嫌がらせとかされることあるの?」と聞くと、シンディは「私が出て行くとだいたい2種類の反応に別れるかな。
ギターを作ってるってことをカッコいいと思ってくれる人か、バカにしてくる人の2種類
でもバカにしてくる人には〝何にもわかりませーん〟って感じで流すかな」といって笑い合った。

週の後半、ザ・キルズのギタリストであるジェイミー・ヒンスがやってくる。
彼は怪我の後遺症で左手の中指が曲がらなくなってしまった。
「でもどうにか中指なしでも弾けるように練習してるんだ」といいながら新しいギターを試し弾きしている。

それを見たリックは「そのギターだとネックが細すぎる。太いネックの方が手に負担が掛からないよ」といい違うギターをジェイミーに手渡す。
手に持った瞬間ジェイミーは笑顔になる。「これはいいね!」といい嬉しそうに弾き始める。「このギターのことが大好きになってしまったよ」と言って愛おしそうにギターを撫でた。

週末、出勤したシンディの誕生日を祝うささやかなサプライズパーティが催された。

可愛らしい花束を受け取ったシンディは目の前にあるギター型のケーキに驚く。
「本物のギターだと思ってた!」と笑う。
そしてリックに「ここに来なければ私はどうなってたかわからない。ここで働き始めて人生が変わったの」と涙を流した。

金曜日はチャーリー・セクストンが訪れた。
彼はギターをつま弾きながらこう言った。
「ある友人が〝お前は良い奴だよ。仕事熱心だし、子供もちゃんと育ててる。
でもギターを手に取ったのが運の尽きだな。
お前は一生貧乏暮らしだ
〟って言ったんだ!」と笑う。

リックも「ああそうだな、俺のこの仕事は大した金にはなってないよ、貯金もないし。
でも好きすぎて家でもギターを作ってるぐらいなのさ。」と言ってはにかんだ。

『カーマイン・ストリート・ギター』見どころ

『カーマイン・ストリート・ギター』の見どころを2点紹介します。

ロック好きにはたまらないミュージシャンのエピソード

多くのアーティストがやってきては1曲披露するという展開があるので、ギターロックが好きな人はそれぞれ引っかかるポイントがあるかと思います。
個人的に印象深かったのはルー・リードのギターテック(機材の設定やギターのチューニングをする仕事)をしていたスチュアート・ハウッドでした。

晩年のルー・リードは肝臓疾患を患っており、それが原因で2013年に亡くなっています。
彼が生前に参加したコンサートの開幕前、チューニングをしていたときにスチュアートに向かって「最高の気分だ。病気が治ったみたいな気がする!」と満面の笑みで叫んでいたというエピソード。
「その時の彼の笑顔が忘れられないんだ」と言って、ルー・リードのためにリックが作ったギターを手に取り、ルー・リードの曲を弾いている姿がなんとも切なく、ぐっとくるシーンでした。

映画好きにもたまらないジム・ジャームッシュの登場

この作品で重要な役割としてジム・ジャームッシュが客として登場します。
本作で彼はSQURLというバンドのギタリストとして登場しますが、ご存知の通り映画監督としての方が有名です。

また本作を監督したロン・マンが語っていますが、ジムが自宅を改装した際に出た廃材を店に持ち込んでギター作りを依頼したことがきっかけで、リックはニューヨークの廃材を利用してギター作りを始めたらしいのです。

また、ジム・ジャームッシュの作品にバス運転手の主人公が過ごす1週間を淡々と描いた『パターソン』という作品がありますが、本作も月曜から金曜までの5日間をまとめているところを観ると、ジム・ジャームッシュの影響をかなり感じさせる作りになっていると言えます。

『カーマイン・ストリート・ギター』感想

ドキュメンタリーと言いつつもお店の雰囲気、仕事のルール、次々にやってくる客とのやり取り、また店主のリック、弟子のシンディ、母親のドロシーの3人がそれぞれキャラクターが立っており、ドキュメンタリーとは思えないような軽快な作品です。

あまりにもできすぎていて現実感がないとも感じられます。
まるでおとぎ話に出てくる架空のお店のような多幸感に満ち溢れた空間で、現実にあるのなら一度は足を踏み入れてみたい、と思わせられるような仕上がりでした。

『カーマイン・ストリート・ギター』をオススメできる人

ロックやギターが好きな人、ものづくりが好きな人

『カーマイン・ストリート・ギター』をオススメできない人

正統派なドキュメンタリー映画が好きな人