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『真夜中のピアニスト』『君と歩く世界』『ディーパンの闘い』などなど国際的な評価も高いフランス人映画監督、ジャック・オーディアール最新作の舞台はアメリカ、しかもゴールドラッシュ時代の西部劇だというから驚きです。
今までのオーディアール作品から考えるとかなり意外性のあるテーマですが、本作はベネチア国際映画祭で最優秀監督賞を受賞し、フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞でも4部門を受賞という快挙を成し遂げた意欲作。
主演はジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックスといった渋いキャスティングながら、大人が楽しめるエンターテイメント作品となっています。

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『ゴールデン・リバー』あらすじ(ネタバレなし)

1851年オレゴン州、時はゴールドラッシュ。
イーライ(ジョン・C・ライリー)とチャーリー(ホアキン・フェニックス)のシスターズ兄弟は最強の殺し屋兄弟として恐れられていた。
弟のチャーリーはキレると手のつけられない粗暴な大酒飲み、その反対に兄のイーライは暗殺仕事に嫌気がさしている物静かな男だった。
街の支配者である提督は弟のチャーリーがお気に入りなようで、彼をリーダーとして取り立てた。
その采配にイーライは少々不満げだが、事あるごとに問題を起こすチャーリーの世話を焼く弟思いの兄だった。

2人はある日、提督の「所有物」を盗み出したハーマン(リズ・アーメッド)という化学者の暗殺を依頼される。
先に出た連絡係のジョン(ジェイク・ギレンホール)がハーマンを監視しているため、ジョンが行く先々で残す手紙を手がかりに2人はハーマンを追い詰める。

『ゴールデン・リバー』あらすじラスト(ネタバレあり)

ハーマンが提督から盗み出したと聞かされていた「所有物」だが、実際はハーマンが編み出した黄金を見分ける薬品を作る化学式を、提督の方が奪おうとしていたのだった。
誰もが黄金を採取し裕福になろうと躍起になっている中で、ハーマンは暴力のない理想の都市を作ることを夢見ていた。
その夢に魅せられたジョンはハーマンに協力するようになる。
また、イーライとチャーリーも獲得した黄金を折半するとの確約を得て、提督を裏切りハーマンとジョンに手を貸すことにする。
初めは、チャーリーの凶暴な性格を良く知るジョンは彼を毛嫌いし、チャーリーもジョンを「偉そうなやつ」と言って反発していた。
その一方で穏やかなイーライとハーマンはなぜか気が合うようだった。
共に過ごすうち、少しずつ打ち解けていく4人。

そして満を持して、黄金が眠る川に生成した薬品を流す。
途端にキラキラと光り輝いた金を夢中ですくう4人だったが、薬の影響で皮膚に違和感が出てしまう。

金をすくっては川を上がって薬品を水で洗い流すことを繰り返さなければならなかった。
薬品の効力が薄れてきたことに焦ったチャーリーは薬を高濃度のまま上流から川に流してしまう
まだ川にいたハーマンとジョンはそのせいで全身が焼けただれ、チャーリーもバランスを崩し自分の右腕に薬がかかってしまう。
運良くイーライだけは難を逃れたが、翌日も3人は一向に回復しなかった

1番重症だったのはハーマンだ。
目もほとんど見えておらず、身動きすら取れなくなっていた。
そして看病をしていたイーライをジョンと勘違いし、「君と友達になりたかった」と呟く
イーライはたまらずハーマンの手を取り「もう友達だろ」とジョンのふりをして彼を励ました。

次に重症だったのはジョンだった。
やはりほとんど1人では身動きが取れない彼は、そばにいたチャーリーに「助けてくれ」とうわ言のように繰り返す
チャーリーは自分の銃をジョンに持たせてやると、彼は「ありがとう」と呟き自分の頭を撃ち抜いた。
その後、ジョンのあとを追うようにハーマンも静かに息を引き取った。
チャーリーは一命を取り止めたものの右腕の損傷が激しかったため、切断を余儀なくされた。

その後、裏切りを察知した提督の追っ手が次々と兄弟と襲ってくるも、どうにか2人でその場を切り抜ける。
しかしこの追跡に終わりがないと考えたイーライは提督の暗殺を計画する。

街に戻った2人だったが、予想外のことに提督はすでに亡くなっていた。
あっけに取られたイーライとチャーリーは目的を失い、再び街を出る。

たどり着いたのは2人の実家であった。
豪胆な母親はショットガンをぶっ放し2人を追い返そうとするも、最後には暖かく迎え入れてくれた。
イーライは清潔に整えられたベッドに寝転び、気持ちよさそうに微笑む。
窓辺からは美しい陽光が差し込んでいた。

『ゴールデン・リバー』見どころ2点

ゴールデン・リバーの見どころを2点、解説します。

兄の生と死

邦題は『ゴールデン・リバー』ということで、ゴールドラッシュ時代の狂騒を思わせるタイトルですが、原題は「THE SISTERS BROTHERS(シスターズ兄弟)」となっており作品のテーマが「兄弟」だということが分かります。
最後のクレジットにも「兄弟へ捧ぐ」という監督のメッセージが表示されました。

オーディアール監督にもお兄さんがいたらしいのですが若い時分に亡くなったそうです。
そしてまた、本作で弟のチャーリーを演じていたホアキン・フェニックスにもリバー・フェニックスという偉大なお兄さんがいましたが、ご存知の通り彼もまた23歳の若さで亡くなっています。

それを思うと彼らはどんな気持ちでこの作品に望んだのでしょうか
その心中を察することはできません。
しかし、だからこそ、エンディングで我が家へとたどり着き、安心しきった表情で眠りにつくイーライの姿に思わず涙が出てきてしまうのです。

ジョン・C・ライリーの俳優としての凄み

そして本作の1番の見どころといったらやはり!兄のイーライを演じていたジョン・C・ライリーです!
普段はそのインパクトのある容姿からなかなかメインを張るようなことがない俳優ですが、本作では彼の魅力が存分に発揮されていました。
コミカルな一面もありながらも、優しい兄としてチャーリーを見守り続けます。

そして後半の悲劇からはさらにぐっと彼の力強さが前面に押し出され、1人で襲撃者を皆殺しにするシーンなどぞっとすると同時にそのかっこよさにしびれます。
この1本で彼の怖さ、可愛さ、可笑しさ、格好良さ、そのすべてを余すことなく堪能できます

『ゴールデン・リバー』感想

主演が強面俳優のジョン・C・ライリーとホアキン・フェニックス、共演は曲者系俳優のジェイク・ギレンホールにリズ・アーメッド、そして監督が実力派のジャック・オーディアール。
これらの前情報を見聞きして「地味だし、重そうな映画だな」と少々身構えていたのが正直なところです。
しかしその大方の予想は裏切られました、というか、観に来た人たちの誰もがこんなにも爽やかで美しい結末が訪れることを予想できなかったでしょう。

ゴールドラッシュ時代の西部劇の結末なんて、悲劇でしかありえないと想像していた自分の単純さが恥ずかしいほどです。

これはもう大人のためのエンターテイメント作品といって差し支えないでしょう。

それくらいに愉快で豊かな映画体験をもたらしてくれる素晴らしい作品でした。
あと付け加えるとすると、ここまでずっとジョン・C・ライリーを褒めてばかりでしたがホアキン・フェニックスも死ぬほど良かったです!
「やはりこの人、無茶苦茶かっこいいんだな」ということが再認識できました。最高です。

派手な映画が好きな人、ロードムービーが苦手な人にはハマらないかもしれませんが、ジョン・C・ライリーがいい俳優だと知っている人、ホアキン・フェニックスが好きな人、兄弟・家族について思うところがある人には是非とも観て損はない作品です。

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