クリストファー・ノーラン監督が監督・脚本・製作を手がけた『インセプション』は、4層に渡る夢の世界と現実が交錯する、まるで謎解きをしているような感覚になる作品です。

第83回アカデミー賞で撮影、視覚効果、音響編集、録音の4部門を受賞したインセプション。

潜在意識の世界に入り込み、情報を抜き取るスペシャリストのコブと仲間たちがインセプションと呼ばれる、不可能と思われていたアイディアの植え付けに挑みます。
主役のコブを演じるのはレオナルド・ディカプリオ。
ノーラン監督作品では常連のマイケル・ケインやキリアン・マーフィーはもちろん、日本からは渡辺謙が重要なキャラクターであるサイトーを演じます。

チームの個性豊かなメンバーを魅力的な俳優陣が演じているのも、今作の見どころです。
複雑なストーリーと圧倒的なスケールで描かれる夢の世界。

映画のラストではまさに壮大な夢から目覚めたような、不思議な感覚になる映画です。

『インセプション』あらすじ

潜在意識から情報を抜き取るスペシャリストのコブ(レオナルド・ディカプリオ)は、サイトー(渡辺謙)からある依頼を受けます。
それは競合会社の次期社長ロバート(キリアン・マーフィー)に、“父親から継ぐ会社を潰す”というアイディアを植え付けることでした。

インセプションと呼ばれるこの計画を成功させればコブの犯罪歴は消され、家族の元へ帰ることができるとサイトーに持ちかけられます。
コブと相棒のアーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、偽造師イームス(トム・ハーディ)、調合師ユスフ(ディリープ・ラオ)そして設計士アリアドネ(エレン・ペイジ)を仲間に迎えます。

コブの夢で訓練を続けるアリアドネは、コブの妻モル(マリオン・コティヤール)に遭遇します。
そしてモルが亡くなっていること、コブが夢の中で妻の投影を生かし続けていることを知ります。
モルの投影はコブを夢の世界に留める為に、彼の行動を邪魔しに現れるのです。

コブたちの元へフィッシャー氏死亡の情報が入り、シドニーからロサンゼルスの10時間のフライトで、インセプションを実行することになります。
しかし夢に潜ったコブたちは、武装したロバートの潜在意識から攻撃を受け、サイトーが撃たれてしまいます。

強い鎮静剤の作用で、夢で命を落としたら現実に戻るのでは無く、何もない虚無に堕ちてしまう
衝撃の事実を知り動揺するメンバーでしたが、インセプションを実行するべく更に深く夢の中を潜っていきます。

『インセプション』見どころ4点

映画『インセプション』の見どころを4点紹介します。

映画の世界観

複雑な世界観が見どころのインセプションですが、キーワードを理解することが、映画を楽しむポイントになっています。

インセプションとはターゲットの潜在意識に潜り、アイディアを植え付けることです。
それに対し、情報を抜き取ることはエクストラクションと呼ばれます。

鎮静剤と夢を共有する装置を使い、複数の人間でターゲットの潜在意識の中に潜り込みますが、夢の中で鎮静剤と装置を使うことで、さらに深い夢に潜ることができます

時間の流れも重要で、現実の10時間が一層目の夢では一週間、二層目では6ヶ月、三層目では10年といったように、夢が深くなるほど時間の流れが遅くなります
夢の世界の最下層は虚無と呼ばれ、夢か現実か区別がつかなくなる、何もない空間です。
夢の探求をしていたコブとモルは、ここに二人だけの世界を創っていました。

夢か現実か混乱した時に使われるのがトーテムです。
その質感や重量で、持ち主は夢か現実か判断ができます。
混乱したコブが彼のトーテムであるコマを必死に回すシーンが出てきますが、この場合は現実ならばコマは止まり、夢であれば回り続けることになっています。

夢から現実に戻るには、眠りから目覚めるか、夢の中で死ぬ、もしくはキックと呼ばれる衝撃を受ける方法があります。
終盤で描かれる4層に渡るキックのシーンは映画の世界を凝縮したシーンになっています。

キーワードを頭に入れて映画を観ることで、最大の見どころである複雑な映画の世界を存分に堪能することができます

コブとモルの物語

コブを夢の世界に留めようと現れるモル。
二人は深い愛情で結ばれた夫婦でした。
夢の深さを探求して虚無まで辿り着いたコブとモルは、長い時間をかけて自分たちだけの世界を作ります。
そこから現実に戻った二人でしたが、夢の世界に囚われたモルは夫の目の前で命を絶ってしまいます
最愛の妻を失ったコブは後悔を抱え、妻の投影に会う為に毎晩夢を見ます。

虚無で過ごした50年の時間は、二人の愛をより深くしたのでしょう。
コブの潜在意識から、妻のことを深く愛していたことが分かります。
夢の中でしか会えないモルを見つめ、彼女に触れるコブの姿は、見ていて切ないほどです。

しかし断片的に現れる二人の過去の物語が一つになった時、驚きの真実と、彼女が執拗コブを邪魔する理由が明らかになります。

妻を失った現実と向き合えず夢の中に生きるようになってしまったコブが現実と向き合い、モルの投影と対峙できるのか
悲しくも美しく描かれたコブとモルの物語は、今作で最も重要なストーリになっています。

アリアドネの糸

アリアドネの糸というギリシア神話があります。
迷宮に入る英雄が道に迷わないよう、糸玉を渡して出口へと導くというものです。

今作のアリアドネも神話のように、コブが道に迷わぬよう正しい道を示すキャラクターとして描かれています。
当初、彼女は夢の設計だけを行う予定でした。
しかしコブが抱える闇に気付き、彼の潜在意識に潜ったことでコブとモルの過去を知ることになったアリアドネは、彼の心が迷わないよう作戦に同行することにします。
モルの影を感じて時折思考が停止してしまうコブですが、三層目以降の夢の世界では、アリアドネの力を借りて正しい判断を下していきます。

また普通の学生だったアリアドネがチームに加わることで、映画を見ている私たちは、複雑な潜在意識の世界や設定について知ることができます。
彼女の存在がなければ、コブもアーサーも潜在意識の世界について詳しくは教えてくれなかったでしょう。

アリアドネはコブを導くだけではなく、複雑な映画の世界を知る手助けをしてくれる存在でもあるのです。

アーサーとイームス

ジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じるアーサーと、トム・ハーディ演じるイームスは、非常に魅力的で重要なキャラクターになっています。
真面目な方がアーサー、自然体な方がイームスとパッと見て見分けられるほど、彼らの表情や立ち振る舞いから性格が滲み出ています。

緻密に計画を練り行動することを好むインテリジェンスなアーサーと、コブに近い感覚と行動力を持つイームス

それぞれの見せ場が用意されていて、そこからも二人の性格の違いを感じ取ることができます。
ホテルの夢では、無重力状態の中どうやってキックを行うか、しつこく現れる敵とどう戦うかがアーサーの知力と想像力の見せ場になっています。

一方で雪山の夢でキックを任されているイームスは、トラブルにも対応しながら、武装した敵を暴れ回って倒します。
また彼は一層目からターゲットが信頼する人物に化けて接触し、アイディアの種を植え付ける重要な役割も担っています。

正反対なキャラクターとして描かれている二人のやり取りも、注目してほしいポイントです。
生真面目なアーサーに対し、皮肉にも思えるイームスの返しが面白く、現実でも夢の世界でもそうした二人のやり取りを見ることができます。

『インセプション』感想

魅力的な俳優が多く出演しているインセプションですが、中でもレオナルド・ディカプリオとマリオン・コティヤールの演技が素晴らしく、終盤に進むにつれて切なさを増すコブとモルの物語は涙なしには見ることができませんでした。

後悔を胸に抱き、現実か夢か分からなくなるような状態で生きるコブと、夢に囚われ壊れてしまったモルの美しさは非常に印象的でした。

また正反対な性格のキャラクターを演じた、ジョセフ・ゴードン=レヴィットとトム・ハーディの掛け合いが面白く、それぞれの見せ場がしっかりあったのもファンとしては嬉しいポイントでした。

スローモーションや音楽も効果的に使われていて、壮大な夢の世界の描写と迫力のアクションシーンには圧倒されます。
どちらが夢でどちらが現実か、そんなことを考えさせられてしまうラストシーン。

一度目でノーラン監督の描く世界に驚かされ、二度目以降で複雑なストーリーや設定を理解して謎解きをする。
『インセプション』は何度も見たくなる映画になっています。

『インセプション』総括

夢の中が舞台という設定が面白く、複雑な物語を読み解く為に何度も見たくなる作品になっています。
夢の中ではどんな世界もどんな物も登場するし、何だってできる。

現実世界が舞台であればストーリーが繋がらない場面の切り替わりがあっても、夢の世界が舞台になっているので、「夢が切り替わったんだ。」という感覚で、違和感なく映画を見続けることができます。

潜在意識の世界や設定が難しい今作ですが、夢の中でも層によって時間の流れが異なっていることや、上の層の出来事やターゲットの心が夢に影響を及ぼす設定が面白く、映像によってそれらをしっかり味わうことができます。

特に映画終盤の"キック"のシーンは、夢の世界の構造と設定が分かる、重要で迫力のあるシーンになっています。

鬼才クリストファー・ノーランが手掛けた『インセプション』は、不思議な映像体験をしたい、深い物語に入り込みたい、そんな時に見て欲しい作品です。

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