前作から27年の時を経て製作された『マッドマックス』シリーズの4作目は、圧倒的なアクションシーンはもちろん、独裁者に立ち向かうヒーローの姿に目が離せなくなるアクション超大作です。
技術面の方でも高く評価され、第88回アカデミー賞では、録音賞、音響編集賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、衣装デザイン賞、美術賞そして編集賞の6部門を受賞しています。
メル・ギブソンからトム・ハーディがバトンを引き継ぎ、主人公マックスを演じています。
顔にグリースを塗り、ヘアスタイルは丸刈りというインパクトの強いビジュアルのシャーリーズ・セロン、『アバウト・ア・ボーイ』の子役から着実にキャリアを積んできたニコラス・ホルトが物語を担う重要なキャラクターを演じています。
そして1作目でマックスの敵役トーカッターを演じたヒュー・キース・バーンが今作ではイモータン・ジョーとして再び『マッドマックス』の悪役を演じています。
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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』あらすじ
砂漠をさすらうマックス(トム・ハーディ)はウォー・ボーイズに捕まり、独裁者イモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)が治めるシタデルへ連れて行かれます。
彼は”輸血袋”として死にかけのウォー・ボーイズ、ニュークス(ニコラス・ホルト)に輸血させられます。
そこへ大隊長フュリオサ(シャーリーズ・セロン)がジョーを裏切り、5人の妻”ワイブス”と逃亡したという情報が入ってきます。
敬愛するジョーと名誉ある死の為、ニュークスはマックスを愛車に縛り、荒野を爆走します。
砂嵐が迫る中、彼はフュリオサの運転するウォー・リグに追いつくものの、マックスに邪魔され、フュリオサに車を潰されます。
砂嵐が去り、意識を取り戻したマックスは、片腕のないフュリオサと美しいワイブスの姿を目にします。
戦いの末車を奪ったマックスはその場を去ろうとしますが、フュリオサの交換条件を飲み、彼女たちと緑の地を目指すことになります。
激しい追跡を受けてスプレンディッド(ロージー・ハンティントン=ホワイトリー)が命を落とします。
それでもマックスたちは緑の地を目指して進み続けます。
ついに仲間との再会を果たしたフュリオサは、緑の地は汚染され、気味の悪い沼地になったことを知り、絶望します。
彼女たちはバイクで塩の湖を走り続けることにします。
自分の道を行くことを選んだマックスですが、フュリオサ達を追いかけ、シタデルに戻ることを提案します。
水も緑もあるシタデルで皆で初めからやり直せばいい。
フュリオサ達は賭けのような作戦に乗り、希望を抱いてシタデルへ向かいます。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』見どころ4点
ヒーローの姿を取り戻すマックス
荒野をさまようマックスが、フュリオサとジョーの戦いに巻き込まれる形で始まる今作。
この第三者のような位置から、英雄の姿を取り戻していくマックスは、今作の重要なポイントです。
過去の失敗に心を蝕まれ、他者と関わることを避けていたマックスですが、フュリオサと信頼関係を築き徐々に変わっていきます。
彼女たちをサポートするべく、ジョーの軍団に戦いを挑み、敵をなぎ倒していく彼の強さは圧巻です。
また口数が極めて少ないマックスは物語の重要な局面で、彼女たちが思いつかなかったアイディアを提案します。
外からの視点だからこそ見えるものを当事者に伝える為、そして再び他者の為に戦う姿を取り戻す為、第三者のような描かれ方をしていたのではないでしょうか。
今作は生きる屍からヒーローへと復活していくマックスのを再生の物語でもあるのです。
英雄、フュリオサの物語
この物語の真の主人公はフュリオサといっても過言ではないでしょう。
作中ではフュリオサの過去についての詳しい描写はありません。
しかしポツリと話す彼女の言葉から、盗賊にさらわれ、母を失い、シタデルで生きるしか道がなかった少女の悲しい過去を知ることができます。
ジョーを憎むフュリオサは、ワイブスと共に緑の地を目指します。
このことは、自分の人生を奪ったジョーへ彼のモノであるワイブスを奪うことで復讐をし、また、ジョーからモノとして扱われ、独裁者として統治するジョーの世界から逃げたがっていたワイブスを救うという二つの意味があるのです。
圧倒的に不利な状況の中、自分の為だけでなく希望を捨てない仲間の為に戦いに挑むフュリオサ。
彼女もまたマックスと同じ英雄なのです。
自分の生きる道を見つけたウォー・ボーイ、ニュークス
好戦的な戦闘集団ウォー・ボーイズは、ジョーを不死身と信じ、死後、英雄の館へ魂が運ばれることを熱望しています。
銀色のスプレーを口に吹き付け「俺を見ろ!!」と叫び、名誉の死のために命が尽きるまで戦い続ける彼らの姿は、この世界の異様さを表しています。
その中で重要なキャラクターとして物語に絡むのが、マックスの血を輸血していたニュークスです。
卓越した運転技術と車に関して豊富な知識を持つ彼は、ジョーの為になりたいと奮闘するも、失敗ばかりします。
ジョーの子供を宿していたスプレンディドが轢かれるのを見た彼は、自分を責め続けます。
ニュークスからは、父親に認められたいと一心に願う幼い少年の様な姿を感じます。
そんな彼は、ワイブスの一人、ケイパブルの優しさに触れて変わっていきます。
自分の世界の狭さに気付いた彼は、フュリオサたちの仲間となり、崇拝していたジョーと戦う道を選びます。
ケイパブルと心を通わせて、頼り甲斐のある男へと変化していくニュークスの姿は今作の見どころの一つです。
迫力満点のアクションシーン
広大な砂漠で繰り広げられるカーチェイス、爆走する車の上で繰り広げられるアクションシーンそしてド派手な爆破シーンは今作最大の見どころです。
もはや車とは思えない様な造形の車が次々と現れ、縦横無尽に砂漠を走り、マックスたちのウォー・リグに襲い掛かかるシーンは圧巻です。
そして暴走する車の上で激しく戦うマックスたちの姿に、一瞬たりとも目を離すことができなくなります。
強烈なビュジュアルの悪役たちが、猛スピードで迫り来る様子は、映画を見る者に強烈なインパクトを与えます。
そして視覚だけでなく、また激しいギターの音と迫力のあるドラムの音が、白熱したアクションシーンを更にスピード感あるものにしています。
マックスやフュリオサの物語を無視して映画を見ても、怒涛のアクションシーンにより映画の世界へ引き込まれてしまいます。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感想
トム・ハーディとシャーリーズ・セロンという組み合わせに期待した作品です。
メル・ギブソンがマックスを演じた前シリーズは見ていなかったので、作品に関しての知識は全く無い状態で映画館へ足を運びました。イモータン・ジョーやウォー・ボーイズの恐ろしいビジュアルから、スプラッター系かもと後悔しましたが、映画が始まってすぐにその後悔は吹き飛びました。
映画冒頭のカーチェイス、怪しげな場所で背中にタトゥーを刻まれ、幻影に追われながら暴れまわるトム・ハーディと狂気じみた謎の白塗りの男たち、そして興奮を煽るような激しい音楽。
スクリーンにマッドマックスのタイトルが現れる頃には、すでにその独特な世界に飲み込まれていました。
ここまで気持ちがあがるアクション映画は今まで見たことがありません。
荒廃した世界で権力を振るう独裁者と、希望を胸に独裁者の元から逃げる6人の美しく逞しい女たち。
二人のヒーロー、美と醜、静と動、善と悪など、様々な対比が描かれている今作。
細かな説明がない分、キャラクターの過去を想像させる様な描かれ方がしているので、自分の中で色々な解釈をして見ていく楽しみ方もできます。
シリーズものですが、迫力のアクションシーンが続き、またフュリオサの復讐の物語として独立したストーリーが軸になっているので、前シリーズを見ていなくても映画の世界観を存分に楽しむことができます。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』総括
『マッドマックス』シリーズ4作目として制作された今作。
独裁者の支配を逃れ緑の地を目指すストーリーは、迫力満点のアクションシーンと魅力的なキャラクターにより、前作を見ていなくても、その独特な世界観にどっぷりとハマることができる作品になっています。
他者を拒絶し彷徨うように生きていた姿から、徐々に力強いヒーローとして蘇り、フュリオサたちを導くマックスを演じたトム・ハーディ。
一人きりで戦う覚悟を抱いていたであろう、気高い女戦士フュリオサを演じたシャーリーズ・セロン。
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そして美しいだけではなく、戦う覚悟を見せる5人のワイブスを演じたロージー・ハンティントン=ホワイトリー、ライリー・キーオ、ゾーイ・クラヴィッツ、コートニー・イートン、そしてアビー・リー。
狂った世界で生き抜くキャラクターを力強く演じた 彼らがいたからこそ、様々なドラマが生み出され、心を揺さぶるのです。
メル・ギブソンの後継者探しや、社会情勢により映画作製がストップするなど、1本の映画を撮る為に長い時間のかかった今作。
しかし過酷な撮影現場で演技をした役者を始め、アカデミー場で賞を受賞した屋台骨チームの活躍、何より、480時間あった映像を2時間にまとめあげたという編集担当のマーガレット・シクセルの手腕には驚かされます。
作り手の熱意を存分に感じることができる『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は車好き、アクション映画好きにはもちろん、心が騒ぐような超大作を見たい人にオススメの作品です。
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