ゼログラビティ、ハリーポッターとアズカバンの囚人などで知られる「アルフォンソ・キュアロン」監督による2018年の作品。
Netflixのみでの配信作品にも関わらず、第91回 アカデミー賞で撮影賞、外国語映画賞、監督賞を受賞。
ノミネートはなんと10部門

その他にもゴールデングローブ賞で外国語映画賞、監督賞。
ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞するなど、異例の快挙を成し遂げました。

そのおかげもあり、2019年3月から日本では劇場での公開が始まりました。
1970年代メキシコを舞台に繰り広げられる人間ドラマで、全編を通してモノクロで構成された映像はまるで色があるように鮮やかで美しく、人々の体温が画面の奥から伝わってきます

Netflix映画『ROMA/ローマ』あらすじ

舞台は1970代のメキシコ、ローマ地区。中流階級の家庭に住み込みの家政婦として雇われているクレオを中心に進んでいく日常を描いた人間ドラマです。
クレオは雇い主である医師のアントニオ一家に信頼され、子供たちとも仲良く、平穏に日々を過ごしていました。
しかしアントニオは不倫をしていて、愛人がいたのです。

妻もそれに気づいて、夫への怒りや悲しみでクレオに当た流ようになってしまいます。
そんなクレオには恋人のフェルミンがいます。クレオは休日を利用してフェルミンや、同じ家政婦仲間のアデラ、その恋人とダブルデートをしています。

ある時クレオの妊娠が発覚します。
大喜びするフェルミンでしたが、そのままトイレに行ったきり帰ってきませんでした。
フェルミンは逃げたのです。
悲しみに暮れるクレアは家政婦をクビにならないかと心配し、妊娠していることを雇い主の奥さんソフィアに涙ながらに伝えます。

ソフィアは優しく「そんなことにはならないよ」と告げ、クレアを抱きしめ、病院に連れて行ってくれました。
赤ちゃんは順調に育っていましたが、ソフィアとアントニオの関係はひどくなる一方でした。

仕事と言い張り一向に家に帰らなかったアントニオ。
クリスマス付近になっても帰ってくる様子がありません。
ある日クレオと子供達で映画館に出かけたときのことでした。
クレオは知らない女性と歩くアントニオの姿を目撃してしまいます。

アントニオは愛人と、もう遠く離れたところへ行っていたのでした。
一方クレオは、今一度恋人とのフェルミンの元を訪ねます。
しかしフェルミンはクレオのもう二度と会いにくるなと告げるのです。

その当時街は学生デモで溢れかえっていました。
クレオもソフィアも精神的に不安定な中、銃の行き交う街中へクレオのお腹の中の子供のために二人はベッドを買いに出かけます。
しかし二人が向かったお店にも、デモ集団は容赦なく押し寄せ、彼女たちに拳銃を向けたのは、なんと皮肉なことにクレオの恋人、フェルミンだったのです。

殺されずにすんだ二人ですが、フェルミンが去ったあとすぐ、クレオは破水します。
街が混乱中の中すぐに病院に向かいますが、クレオのお腹の中の子供が助かる事はありませんでした。

Netflix映画『ROMA/ローマ』ラスト

ソフィは気分を改めるために新車を買いますが、最後の思い出にと今まで使っていた車でみんなで旅行に行こうと提案します。
悲しみに暮れるクレオでしたが、ソフィの心の奥底にある気持ちと後押しもあって、一緒に行くことにしました。

父親を失った子供達。
夫を失ったソフィ。
恋人と赤ちゃんを失ったクレオ。

みんなそれぞれの思いを抱えながら、この後の人生、しっかりと全員で支えあって生きていこうと誓います

そんな旅行の最終日のことでした。
ソフィの子供達が海で楽しく泳いでいたのですが、どんどん奥へと進んでいてしまいます。

あまり奥へ行かないようにと引き止めるクレオですが、好奇心旺盛な子供たちはそれでもどんどん海の深いところへと行ってしまいました。
嫌な予感は的中し、子供たちは海の奥の方で溺れてしまいました。
泳げないクレオは躊躇いながらも子供達の元へと急ぎ、懸命に波をかき分けます。

クレオの必死の助けのおかげで、子供たちは無事でした。
命の危険を身を以て実感したクレオは、「本当は赤ちゃんに生まれてきて欲しくなかった」と心の声をようやく吐き出せました
家族全員でクレオを囲み、「大丈夫。みんなクレオのことが大好きだよ」と涙を流すのです。

家に帰った一同は、この旅行やトラブルにより、クレオを本当の家族のように受け入れるようになるのでした。

タイトル『ROMA/ローマ』の意味

実はこの映画、監督の半自伝的作品でもあります。
1970年代、実際にメキシコ、ローマで少年時代を過ごしたキュアロンは、自らカメラを握り、撮影にも挑みました。ちなみにこのローマという地名ですが、イタリアのローマとは関係ありません

このローマ地区、メキシコの中でも比較的富裕層が多く暮らす地域でした。
そこへメキシコ原住民のクレオが家政婦としてやってきます。

この映画の要所要所に感じ取れるのが、この富裕層と低所得者層の対比です。
これは恐らく、幼少期をこのローマで実際に生活していたキュアロン監督自身が目の当たりにしてきた日常の光景なのでしょう。

クレオとソフィアがクレオの赤ちゃんのベッドを買いに出かけた時、学生デモが行われ、二人のいた家具屋が襲われたシーンがありましたが、実際に当時「血の木曜日事件」と呼ばれ300人以上の死者が出た政権に不満を持つ学生たちによる暴動デモがありました。

『ROMA/ローマ』の映像美が見どころ

この映画は、ストーリーを聞いただけでは本当の良さを知る事はできないと思います
賞レースで撮影賞を取っているとおり、この映画の見所の一番と言っても過言ではないのが、映像美です。

どのシーン一瞬一瞬、どこを切り取ってもまるでその生活が本当に存在しているかのような自然さ、自然が及ぼす美しさなのです。

その自然さが出た一番の要因は、キュアロン監督がその自然さを求め、出演者全員ほぼアマチュアの役者を使用したことが大きいのではないかと思います。

そして台本は渡さず、その場で演技指導をしながら撮影に挑みました。
この映画から感じ取れる日常感、大女優には絶対に出すことのできない身近さは、演技の経験がない、または浅い出演者たちが齎した産物なのです。

キュアロン監督はこの映画に自然さ、身近さというものにかなり重点を置いて制作していたようで、映画の中に出てくる医師や看護婦など、実際にその職業に就いてる人たちを起用しています。

シンプルなストーリーだけあって、演出、撮影のこだわりはとても強かったのだと見受けられます。

Netflix映画『ROMA』感想

Netflixの配信から始まった映画ということで、この映画がまさかこんな位に多くの賞を取るとは誰も思っていなかったでしょう。

動画配信という新しい映画鑑賞のあり方を大きく変え、これからの賞レースシーンにも大きく影響を与えた作品になったのだと思います。

正直ストーリーに起伏はなく、淡々とした日常を覗き見ているかのようなカメラアングルや、色味のない画面は見る人によっては退屈に感じられることも否めません。
しかしこの作品がなぜ映画館上映までに至ったのか、これほどまでに賞を勝ち取ったのか
それは普段私たちが見ている景色、感じていること、人との距離感や接し方、金銭感覚、それらがあまりにもリアルに、繊細に、そして美しく描かれているからだと思うのです。

映画館で見た人たちはまず映像美に圧倒されたことでしょう。
映像美とは莫大な資金を費やして作られたCG映像や、色彩の美しさだけではありません。

そこにはCGでは表すことのできない、雲の流れ、水の中、人々の肌、汗、息遣い全てがむき出しの美しさなのです。
これを機にROMAのような繊細な作品、そして映画業界に一つの歴史を作るような作品が動画配信から産まれると面白いでしょう。

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