2001年に公開され大ヒットした、男性シンクロの邦画「ウォーターボーイズ」。
2019年は実在する、スウェーデンの男性シンクロチームをモデルに、フランスを舞台にかえ、さえないおじさん達の奮闘シンクロムービーが誕生しました。

さえないおじさん達を演じるのは、日本でも「ベティ・ブルー 愛と激情の日々」などで美青年として人気のあった、ジャン=ユーグ・アングラ―ドなど、かつて若い時にはイケメン俳優として人気のあった俳優が揃っています
すっかりおじさんになった彼らが、いろいろ問題を抱えてパッとしない自分や人生をどうにか変えよう!と
でっぷりお腹で未経験のシンクロに挑戦します。

果たして、さえないおじさん達はシンクロを通じて、もう一度青春を取り戻せるのでしょうか?

「シンク・オア・スイム」あらすじ(ネタバレ無し)

うつ病で会社を辞めて、引きこもり中のニートのベルトラン(マチュー・アマルリック)。
いろいろな会社の面接を受けるも落ちてばかり。
ソファに寝そべって、だらだらゲームばかりしていて、家族には呆れられ、うつ病に理解のない義姉夫婦には上から目線で説教されたり、バカにされて鬱憤のたまる日々を送っていました。

ある日、近所の公営プールで男性シンクロ・メンバーの募集を目にし、これだ!と思ったベルトランは早速入会してみます。
いざ行ってみると、男性シンクロのメンバーは

  • 自分の思い通りにならないとすぐに怒る、短気なロラン(ギヨーム・カネ)
  • 会社を経営しているがうまくいっていないのに、プライドだけは高いマルキュス(ブノワ・ポールヴールド)
  • 若い頃からロック歌手を目指しているが全然売れていなくて、娘の学校の食堂で生計を立てている、夢を諦められないシモン(ジャン=ユーグ・アングラ―ド)
  • 人とうまくコミュニケーションをとれず、いつも独りぼっちのプール従業員ティエリー(フィリップ・カトリーヌ)

など、くせ者揃い

体形もぽっちゃりで、シンクロのレベルも低く、お世辞にもきれいな演技はできないおじさんシンクロチーム。
短気のロランが怒り出してチームはバラバラ、おじさんがシンクロなんて!
と周りにもバカにされたり軽蔑されたりと、男性シンクロチームは順風満帆とは行かない
のでした。

「シンク・オア・スイム」ラスト(ネタバレあり)

男性シンクロチームのコーチは、デルフィーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)という、何度もメダルを取ったことのある、元シンクロ選手の女性が行っていました。
実は彼女もおじさん達と一緒で落ちこぼれ
選手人生で大きな挫折を経験し、アルコール中毒になり、断酒会に参加する日々。
それでも、恋人に支えられることで、良い方向には向かっているのでした。

そんなある日、ティエリーがネットで、男性シンクロの世界大会の映像を見付け、釘付けに。
早速みんなに知らせ、自分達にもできるのでは?と無謀にも世界大会の出場を決めるのでした

そんな時、練習中、プールにコーチの恋人が現れます。
「二年前に別れたから、もう俺に付きまとうな」と。
コーチがその男性と今でも恋愛関係にあるというのは、彼女の妄想でショックを受けます。

そして、遂に彼女は絶望のあまりお酒に手を出してしまい、酔っ払って練習に現れ、プールに落ち、コーチが出来なくなるのでした

そこで、コーチのシンクロのパートナーで、今は車椅子生活のアマンダ(レイラ・ベクティ)が男性シンクロのコーチを行うことに。
優しいデルフィーヌとは違い、鬼のスパルタ指導のアマンダ。
新コーチの鬼の特訓についていくのが大変で、不満タラタラのおじさん達。
果たして、おじさんシンクロチームは演技を完成させ、世界大会でメダルを取ることができるのでしょうか?

「シンク・オア・スイム」見どころ3点

「シンク・オア・スイム」の見どころは、三つあります。

  • フランスの名優揃い
  • コメディ要素
  • 負け犬の逆転劇

以上を、順に追って紹介していきます。

フランスの名優揃い

上記でも挙げた通り、数十年前にイケメン俳優として一世を風靡した俳優が、「シンク・オア・スイム」には揃っています。
細身でスラっとしていた美形俳優達が、海水パンツからはみ出たお肉をたぷたぷ言わせたり、重力に逆らえないブルドッグ顔になっていたり、外見の変化はもちろんのこと、役どころも問題を抱えた誰にも相手にされない中年おじさんと、昔とは随分変わった様子。
往年のフランス映画ファンとしては、がっかりな面もありつつも、昔はきれいだったなあと懐かしかったり、俳優達の変化が楽しめます

コメディ要素

フランス映画と言うと、恋愛映画のイメージですが、実はコメディも強いです。
しかも、ブラックユーモアたっぷりで、フランス映画に慣れていない日本人にも笑えるシーンが詰まっています。

例えば、車いすのコーチがガミガミうるさくて、プールに突き落としてしまったり、おじさん達がふざけていて、鬼コーチが「シメに行くぞ!」と言ったら、みんなが「動けないくせに!」と大笑いするシーンなど。

障碍者と言うと、日本ではまだまだ腫物にさわるような態度になる人が多い中、以前日本でもヒットしたフランス映画、「最強のふたり」同様、変に気を遣わず、障碍をネタにみんなで笑えると言うのは、本物のバリアフリーだと感じました。

負け犬の逆転劇

この映画では、主人公がうつ病を抱えたニートだったり、男性も女性もいろいろ問題を抱えた人達が登場します。
日本も、先進国でありながら、問題を抱えている人が多く、幸福度が低い国です。
そんなさえない人達が目標に向かって、みんなで力を合わせて頑張っている様子は勇気づけられます。

特に、うつ病のベルトランをバカにしていたベルトランの奥さんの姉夫婦に対して、ベルトランの妻が最後の方で、今まで我慢していたことを爆発させ、こてんぱんに一言申したシーンは、見ていてすっきりしました。

「シンク・オア・スイム」感想

自分自身も大きな挫折を味わって、克服しようと一生懸命頑張っている身としては、ベルトランに感情移入できるものがありました。
いくら周りにバカにされても、シンクロの世界大会でメダルを取るという目標を持って頑張る姿には勇気づけられました。
最後の方の世界大会のシーンからラストにかけては、感動の涙が止まりませんでした。

もしメダルが取れなくても、みんなで頑張って練習を続けたという過程こそが大事な気がしますし、力を出し切って演技をした姿は目にも心にも焼き付けました。

また、シンクロの発表の曲を選ぶのにひと悶着あるのですが、最終的には彼らの青春時代だった、80年代ポップスを使ったというのが、キャッチ―で懐かしい気がしてぴったりでした。

俳優陣に関しては、昔、美形のジャン=ユーグ・アングラ―ド好きだった者としては、お腹たぷたぷ、よれよれの長髪姿には衝撃(笑撃!?)もありましたが、娘に気に入られようと誕生日プレゼントを選んだり、必死の人間味のある演技はよかったです。

個人的には子供のように純粋なおじさん、ティエリーが好きでした。
ティエリーを演じる俳優さんは、劇中でもコミカルですが、調べてみたら、普段も、「仕事したくない 海で裸でバナナを食べたい」と言う様なおかしな歌を作ったりしていて、かなり好きになってしまいました。
おじさんの中から、お気に入りおじさん、または自分に近いんじゃないおじさんを見付けるのも映画の楽しみの一つかもしれません。

「シンク・オア・スイム」総括

結末は観てからのお楽しみなので、書くのは控えますが、一度でも挫折を味わったことのある人、現在、もがいている人は感情移入して楽しめると思います。

逆に、人生が順風満帆で挫折なんかしたことないよという人にとっては、気持ちがわからず、観ていても退屈に感じるかもしれません。
最後、おじさん達が抱えている問題が全部解決!と言うのではなく、ちょっとだけ前進するというのが、とてもリアルでした。

同、スウェーデン男性シンクロチームをモデルにした、イギリス版の映画、「シンクロ・ダンディーズ!」も2019年9月に公開されるので、見比べてみるのも面白いかもしれません。
映画を創る国によっても映画のカラーが違うと思いますし、プールが舞台の映画は夏に観るには特にぴったりだと思いますよ。

最後になりますが、英題「SINK OR SWIM」は、沈むか泳ぐか
つまり、おじさん達がどん底のままでいるのか、世界大会で輝くのか、というこの映画を要点を一言で表した素晴らしいタイトル
だと思います。