今回スポットライトを当てる映画は2016年4月15日に公開された『スポットライト 世紀のスクープ』

マスメディアによる報道は、私たちの生活と深く結びついており、現代社会で起こった様々なことを伝えてくれる大切なツールです。

しかし、真実をあるがままに伝えることの難しさに気づいている人はどれだけいるのでしょうか。

2016年に公開された「スポットライト 世紀のスクープ」は、そんな”報道”をテーマにした骨太の社会派作品です。

舞台はマサチューセッツ州・ボストン。

その地方紙であるボストン・グローブ紙には、新たに配属されたアウトサイダーな編集長率いる敏腕記者たちが所属しています。

そんな報道チームが、社会に隠された闇を暴きます。

カトリック教会の神父たちによる性的虐待の闇を、記者たちの極秘調査に基づく特集記事欄《スポットライト》の光が照らすのです。

第88回アカデミー賞にて作品賞・脚本賞のW受賞を誇る本作は、128分ものノンフィクション作品で、ドキュメンタリーのように淡々と、そして冷静に現実を私たちに突き付けてきます。

『スポットライト 世紀のスクープ』あらすじ

2001年、マサチューセッツ州・ボストンの日刊紙であるボストン・グローブは、マーティ・バロンを新編集長として迎えます。

マーティはマイアミからやってきたアウトサイダーで、ボストンに住む誰もがあえて触れようとしないテーマについて切り込んでいく方針です。

そのため、ボストン・グローブの少数精鋭取材チーム「スポットライト」のメンバーは、カトリック教徒であるゲーガン神父による、”子供への性的虐待事件”をチームで調査し、記事にすることになりました。

チームは調査を開始し、まずは何度も異動させられたという神父ひとりを追いかけていたのですが、次第にその裏にある一つのパターンに気が付きはじめます。

それは、マサチューセッツ州においてカトリック教会が性的虐待事件を隠蔽する際、神父に休暇を取得させたり、異動させたりすることで事件が明るみに出ることを防いでいるということでした。

チームは虐待被害者のネットワークに接触し、事実関係の確認や証拠の確保に奔走しながら、次第に調査対象を13人の神父に広げてゆきます。

そうして調査を進めた結果、不自然な病休や異動がみられたという神父のリストを手にすることができたのですが、その人数はなんと87人にも上るものでした。

チームの努力と熱意に溢れる調査により、ようやく真実と証拠に手が届きそうになってきた段階で、アメリカは 9.11 同時多発テロ事件を迎えます。

『スポットライト 世紀のスクープ』ラスト(結末)

調査はもはや佳境に達していましたが、9.11の重大性に圧迫され、しばらくの間ストップせざるを得なくなってしまいます。

しかしそんな中でも”枢機卿が性的虐待事件を知りながら無視していた”という公的な証拠をかぎつけたことをきっかけに、チームは活気を取り戻します。

チームのリーダー格であるロビンソンの判断により、カトリック教会の行為を徹底的に暴くため、チームは記事の公開を遅らせることになりました。

そこからチームは、更に多くの証拠を提出するよう求める裁判を起こし、見事に勝利を収めます。

そうしてようやく2002年に事件に関する記事が公開される運びとなったのです。

※記事公開の直前、ロビンソンは記者としての覚悟を込めて、過去の行為を“懺悔”します。
それは、性的虐待を行ったという神父のリスト(20人)を受け取りながらも、調査をしなかったということでした。

しかしマーティは、過去の行為を責めるのではなく、勇気を持ってチームが犯罪を暴いたことを称賛し、ロビンソンに“赦し”を与えるのでした。

こうして、聖職者による性的虐待のスキャンダルが明るみに出され、記事の公開にこぎつけた翌日からは、犠牲者による告白の電話が鳴るようになりました。

その流れはアメリカだけでなく、世界へと広がって行きした。

しかし、性的虐待事件を隠蔽していた枢機卿は、一度は辞任したものの、その後ローマの大教会に栄転するという始末で、教会全体の罪が社会に対して償われるということはありませんでした。

『スポットライト 世紀のスクープ』の見どころ2点

「スポットライト 世紀のスクープ」の大きな見どころとして下記の2点です。

  • 「実話ならではの緊張感とリアリティーがもたらす、圧倒的没入感!」
  • 「超豪華な俳優陣と、真摯に制作された作品の影響力!」

順に解説していきます。

実話ならではの緊張感とリアリティーがもたらす、圧倒的没入感!

なんといっても本作はノンフィクションの物語であるというところがポイントです。

物語は、はじめから終わりまで重厚な緊張感を保ったまま、観る者に悪い予感や推理を引き起こさせてきます。

しかも、それらをことごとく的中させてくるのです。

スポットライト 世紀のスクープを観る者は、重苦しい雰囲気を常に実感しながらも、画面から目を背けることができないはずです。

そんな圧倒的な没入感の中、ひとつひとつ大切に事実や知識を拾い集めていくようなチームの足取りをリアルに追体験し、そして徐々に事件を覆う膜が剥がされていく様には、カタルシスを覚えることができます。

いくつもの壊れた心の欠片が1つ1つの闇のピースとなり、その全貌がまるでジグソーパズルのように組み立てられていくのです。

その爽快さには、脳内でドーパミンが分泌されているような感覚すらあった、と言っても過言ではありません。

記者たちが有能すぎたがために感づいてしまう奥深い闇の恐ろしさと、その底を照らそうと様々な障害を乗り越えながら努力する様子を、是非噛みしめてみてください。

超豪華な俳優陣と、真摯に制作された作品の影響力!

これまでにも述べてきましたが、報道宗教という社会的なテーマと、ノンフィクションという特性も相まって、上映時間である128分間は、かなり重厚な空気を観る者に突き付けてきます。

しかし、超豪華な俳優陣が、観客を飽きさせたり疲れさせたりすることなく、最後まで物語に没頭させてくれるのです。

マイケル・キートン扮するウォルター・ロビンソンが率いる、「スポットライト」チーム陣の演技を超越しているかのような真摯な姿勢には、鳥肌を立てられるポイントがいくつもありました。

とりわけ華を添えているのは、レイチェル・マクアダムスです。

「アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜」や、ガイ・リッチー版の新説「シャーロック・ホームズ」などでの魅力溢れる立ち振る舞いや表情で、様々な映画賞の常連となっている名女優です。

本作で彼女はチームの紅一点記者であるサーシャを演じていますが、サーシャが被害者と接触し、インタビューを重ねるシーンで見せる奥ゆかしさと心の強さは、私の胸を強く打ちました。

このシーンはジャーナリズムの本質を突いており、また事件に対するひたむきな姿勢がひしひしと伝わる名シーンです。

俳優陣の熱演も言うまでもなく、制作陣を含め、本作はとてつもなく高水準な誠実さで事件 について向き合っています。

事件のおぞましさや恐ろしさ、そして被害者を含めた物語の登場人物たちを際立たせることで、本作を起伏や展開に富んだ映画にすることもできたはずです。

しかし、本作はあくまでノンフィクションであり、実在の事件・人物をフィーチャーするこ とに着目しているのです。

事件を俯瞰し、細部まで丁寧になぞることで、被写体となった実在の人物と観客の両方に敬 意を表するドラマを作り上げています。

本作は、一人でも多くの被害者やその家族を救済するということはもちろん、図らずもこう した恐ろしい現実に対峙してしまったとき、私たちはどんな痛みや衝撃を受けるのか、ということを的確に表現しています。

そんな本作がアカデミー作品賞を受賞したことにより、改めて世界中に問題提起が行われ、 まさに”スポットライトが当てられた”と言えるのではないでしょうか。

さらに、本作はカトリック教会をテーマとして取り上げつつも、

『本来は教会で専売特許的に行われるはずの「懺悔」や「赦し」が、ただの報道者であったはずのボストン・グローブのメンバーたちにでも実行できた』

というストーリーをも含む、非常にシニカルで痛快な作品なのです。

スポットライト 世紀のスクープをオススメできる人

昨今のマスメディアに対し、「雑な記事やインタビューが多いなぁ」と反感を覚えたことがある方、必見です。

本作を通じて、”ジャーナリズムとは何なのか”ということを改めて目の当たりにすることができます。

また、やはりどんな時代やジャンルの物事においても、困難なくして成功はありません

苦境に立たざるを得なくなることもあるでしょう。

そんな時でも励まし合い、助け合うチームの関係性や、それを導くリーダーシップの力強さをリアルに描く本作は、職場や友人関係のムードなどに悩んでいる方にとっての”心の栄養剤”になるはずです。

スポットライト 世紀のスクープをオススメできない人

暴くテーマが「神父による性的虐待」という陰惨なものであるため、気軽に楽しい気分になれる映画を求めているという方にはオススメできません。

暗雲立ち込める先に見えてくる事件の全貌は、あまりにもドス黒くグロテスクなものであり、しかも恐ろしいことに、この事件には”まだ終わっていない”という現実があります。

このようにスポットライト 世紀のスクープは”救い”が少ない作品であるため、想像力が豊かであるとか、感受性が強いという方の場合、心が弱っているタイミングであるならば鑑賞を避けておいた方が良いでしょう。

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