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俳優ベン・スティラーの監督2作目となる、ブラックコメディ満載の『ケーブル・ガイ』。
タイトルのケーブルガイとは、ケーブルテレビの設置工のことです。
ケーブルガイとして主人公スティーヴンと出会い、彼に異常な執着心を見せる恐怖の男を、ジム・キャリーが怪演しています。

主人公スティーヴンを演じるのは、舞台にも多く出演し、トニー賞を2度受賞しているマシュー・ブロデリック。
恋人ロビン役はジャド・アパトー作品に出演の多い、レスリー・マンが演じています。
ベン・スティラーはもちろん、ジャック・ブラックやオーウェン・ウィルソンも、いつものコメディアンとは違った雰囲気で登場しています。

『ケーブルガイ』で脚本、製作を務めるのは、『俺たちニュースキャスター』や『40歳の童貞男』など、監督、脚本、製作など幅広く活躍するジャド・アパトー、『ユージュアル・サツペクツ』や『ボヘミアン・ラプソディ』のジョン・オットマンが音楽を手がけています。

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『ケーブルガイ』あらすじ

ケーブルガイ映画
Columbia Pictures

恋人ロビン(レスリー・マン)へのプロポーズが失敗し、引っ越したスティーヴン(マシュー・ブロデリック)はケーブルテレビを設置する為、ケーブルガイ呼びます。
現れたのは異様な雰囲気の男(ジム・キャリー)。
チップ・ダグラスと名乗るケーブルガイは、ことあるごとにスティーヴンの前に現れるようになります。

ケーブルガイのアドバイスもあり、ロビンとデートをするスティーヴン。
人の良い彼はケーブルガイに戸惑いながらも、何となく彼に付き合っていました。
しかしバスケの試合に乱入、留守電の嵐、家に勝手に入り、高級な最新オーディオ機器を設置するなど、ケーブルガイの行動はヒートアップしていきます。

カラオケパーティーで女性と関係を持ったスティーヴンでしたが、ケーブルガイが勝手に用意した売春婦だと知り、彼を部屋から追い出します。
スティーヴンへ謝りたい…
その想いからチップはロビンのデート相手を暴行するなど、二人の関係が元に戻るよう工作をします。
彼の思惑通り、ロビンとヨリを戻したスティーヴンは、再び現れたケーブルガイに友人関係の解消を告げます。

ここから恐ろしい復讐劇が幕を開けます。
まずはロビンの職場へスティーブンの様子がおかしいと電話をかけます。そして盗品の享受の罪で、スティーヴンは逮捕されてしまいます。
刑務所に収監された彼に弁護士が面会にやってきますが、そこにいたのはスーツを着てラリー・テイトと名乗るケーブルガイの姿でした。
その後保釈されたスティーヴンは友人のリック(ジャック・ブラック)にケーブルガイの正体を探るように頼むのでした。

『ケーブルガイ』見どころ3点

1点目「ケーブルガイの怖さ」

『ケーブルガイ』の見どころは、ジム・キャリー演じるケーブルガイの怖さです。
他作品で見せる愉快なジム・キャリーの姿はそこには無く、ひとりの人間に執着する男を怪演しています。
ジム・キャリーのハイテンションさと、ケーブルガイの粘着質な恐ろしさが見事に混ざり合い、DVDジャケットで見せるあの表情がぴったり合うキャラクターに仕上がっています。

スティーヴンの親友になりたい。
その気持ちが暴走するケーブルガイの怖さは、当たり前のようにスティーヴンの人生の中心にいること。
四六時中一緒にいたい、親友を喜ばせたい、そんな想いが透けて見えるようなケーブルガイの行動の数々。
しかし本当に恐ろしいのは、スティーヴンから拒絶された後の行動です。
今までの態度を一変させ、家族も恋人も懐柔され、ありとあらゆる手を使い、スティーヴンを追い込んでいきます。
愛と憎しみは裏表の感情だと言いますが、ケーブルガイからは、その言葉の怖さをまじまじと感じさせられます。

2点目「ブラックコメディの中の笑いのシーン」

ケーブルガイ映画
Columbia Pictures

ケーブルガイの執着心が心底恐ろしい今作ですが、緊迫したシーンの中にも、ちゃんと笑えるシーンが用意されています。
あらゆるところにコメディ俳優が登場して、真面目に演技しているのも面白いのですが、カートゥーンのキャラクターのように動き回るジム・キャリーの姿や、ケーブルガイに巻き込まれる主人公が拒否することなく、彼の誘いに乗り続けてしまうところなど、ケーブルガイの怖さを時に緩め、時に増長させ、ストーリーに緩急をつけています

バスケの試合のシーンも豪快すぎる展開に笑わされますが、中世時代という名のレストランのシーンはツッコミどころだらけです。
至る所でケーブルテレビの無料設置をしているケーブルガイは、このレストランのVIP。
特別席でスティーヴンと食事を楽しんでいると、突如レストランの名物である”騎士の戦い”を二人でする事になります。

ケーブルガイのハイテンションさと、戸惑いながらもまじめに戦うスティーヴンの姿からキャラクターの特徴がよく分かる、なおかつめちゃくちゃな展開に笑わされるシーンになっています。

3点目「さりげなく登場するコメディ俳優たち」

自身の監督作品によく主演、もしくは何かしらの役で登場するベン・スティラー。

『ケーブルガイ』ではニュースで取り上げられている、スウィート双子殺人事件の当事者としてニュースに登場します。
売れっ子子役だった双子の兄弟が番組終了とともに転落していき、兄が弟を射殺してしまうという事件。

多くのアメリカ人の関心を引くこの事件は、テレビをつけるたびに裁判の様子や二人の生い立ちを追った番組を放送しています。作中でテレビがついている時は、裁判の行方がどうなるか、放送されている番組にも是非注目して下さい。

また他の作品でベン・スティラーと組むことの多いオーウェン・ウィルソンがロビンのデート相手として、『トロピック・サンダー』など強烈な役を演じることが多いジャック・ブラックが、スティーヴンの友人リックを演じています。
コメディの印象が強い3人が、一切ふざけることなく真面目に演技している姿に注目です。

『ケーブルガイ』感想

映画ケーブルガイ
Columbia Pictures

ケーブルガイを演じるジム・キャリーがとにかく怖い作品でした。
カートゥーンのキャラクターのような動きや表情が炸裂するジム・キャリーの狂ったような演技と、常に貼り付いたような笑顔が、主人公に執着するケーブルガイの怖さを増幅させていました。

決して本名を明かさないケーブルガイ。
常にスティーヴンの先を読み、罠を張り、彼が逃げられない状況を作り上げていくところはゾッとします。
ケーブルガイを少しでも受け入れる様な素振りを見せたら最後、彼の執着が始まるのです。
スティーヴンの全てを知る為に仕掛けたものが、彼から友人関係の解消を告げられた途端、彼を脅迫する道具に変わるというのも恐ろしいです。

ケーブルガイは怖いですが、どこがスティーヴン執着のきっかけだったかなど、見終わった後にもう一度見て、色々確認したくなります。
『ケーブルガイ』はそんな中毒性のある映画です。

『ケーブルガイ』総括

『ケーブルガイ』は、主人公スティーヴンに付きまとうケーブルガイのクレイジーさに、底知れぬ恐怖を感じる作品になっています。
待ち伏せや留守電のメッセージ攻撃だけでなく、

  • 「理解ある愛情は、注げば10倍になって返ってくる」
  • 「友達を裏切るとこうなるんだよ」

と言ったゾワゾワとする怖い発言も多いケーブルガイ。
そんな役の怖さを、ジム・キャリーのハイテンションの演技が増幅させています。

テレビの可能性を熱弁したかと思えば、誰かがベビーシッターのテレビを殺さなきゃと呟くなど、ケーブルガイの過去から彼とテレビの密接な関係が明らかになります。
1996年の作品なので、テレビが人々の心を掴んで離れさせない物として描かれています。
テレビしか知らない、テレビが全て。
そう叫ぶケーブルガイの姿に色々と考えさせられてしまいます。

ケーブルガイの怖さが際立っている今作。
ひたすらジム・キャリーの怪演を楽しむのも良し、突如現れるコメディ部分を爆笑するのも良し、じっくり見てテレビと人との描かれ方を考えてみるのも良しと、様々な楽しみ方ができる作品になっています。

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