『ミスティック・リバー』の原作者デニス・ルヘインが書いた『ザ・ドロップ』という小説をもとに、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でマックスを演じて話題になったトム・ハーディを主演に迎えて制作された今作。
『チャイルド44 森に消えた子供たち』で彼と共演しているノオミ・ラパスが主人公と恋仲になるナディアを演じています。
またマーヴ演じるジェームズ・ガンドルフィーニの遺作でもあります。

ドロップ・バーと呼ばれる、汚れた金の保管所となるバーが舞台になり、強盗事件をきっかけに物語が進んでいきます。
何か違和感を感じながら始まるストーリーと、いたるところに仕掛けられた伏線から、メインストーリーとは別の隠されたストーリーがあることに気が付かされます。
そして、序盤から感じていた違和感の正体も徐々に明らかになっていきます

  • 独特なキャラクターの刑事
  • ブルックリンを仕切るチェチェン人のマフィア
  • 主人公につきまとうおかしな男

次々と現れるキャラクターたちが緊張感を高めていきます。
張り巡らされた伏線と、ラストシーンに向かって緊張感が増していくストーリーに目が離せません。
表情だけで多くを語る俳優陣の演技にも注目です。

『クライム・ヒート』あらすじ

チェチェン人マフィアが牛耳るブルックリンの町でバーテンダーをするボブ(トム・ハーディ)とバーのオーナーのマーヴ(ジェームズ・ガンドルフィーニ)は、強盗に襲われ、売上金を盗られてしまいます。
実はマーヴによって仕組まれた今回の事件、彼の狙いは町中の汚れた金が集まるドロップ・バーに指定され、その大金を奪うことでした。
ある夜、ボブは怪我をした子犬がゴミ箱に捨てられているのを見つけます。

家の主ナディア(ノオミ・ラパス)が傷の手当てをし、週末まで子犬を預かってくれることになりました。
悩んだ末、ボブは子犬を引き取り、ロッコと名付けて懸命に世話をします。
ロッコを通してナディアと距離が縮まっていくボブでしたが、エリック(マティアス・スーナールツ)という男に付きまとわれるようになります。
危ない雰囲気のその男は、ナディアの元恋人でした。

ボブとマーヴはバーの裏で血のついた金と、強盗犯の腕が入った袋を見つけます。
慌てるマーヴに対し、ボブは落ち着いた表情で腕を処理します。

強盗事件を捜査するトーレス刑事は鋭い推理でボブを揺さぶり、マーヴを疑うマフィアは彼にプレッシャーを与えます。
エリックの気味の悪い脅迫も止む気配がありません。

そんな中、スーパーボールの日にドロップ・バーを務めることが知らされます。
マフィアを恐れながらも再び強盗の計画を立てるマーヴと、自分の人生を脅かすエリックに立ち向かうボブ
ついに決戦の日が二人に訪れます。

『クライム・ヒート』見どころ3点

クライム・ヒートの見どころを3点紹介します。

ボブの望むもの

過去を恥じるナディアに「知られたくない過去はだれにでもある。」と言ったボブですが、彼もまた過去に囚われています。
ロッコを迎えるまで、家族の思い出が詰まった家にたった一人で住んでいたボブ。

教会に通っていますが、一歩引いた感じで聖体拝領を見つめる姿があります。
他者と積極的に関わろうとしないボブが、ロッコを引き取るか真剣に悩んでいたのも、自分以外の””に関わることをためらう気持ちがあったからかもしれません。

ロッコを引き取ったことで、ボブの人生は変わり始めます。
ナディアと過ごす時間と、自分を必要とするロッコとの生活は、ボブに幸せを与えます。

しかしエリックの出現により、ボブの希望は彼の手からすり抜けそうになります。
どんな人間だって、誰かと関わって生きていきたい。
孤独を受け入れようとしながらも、希望を捨てきれず葛藤するボブの姿は、非常に印象的です。

カズン・マーヴの二人の男

カズン・マーヴのバーで働く二人の男、マーヴとボブ。
マーヴはかつては地元の人間から、恐れ敬われていた過去が忘れられず、自分の現状に対してくすぶった気持ちを抱き続けてきました。

貫禄のある姿はまやかしで、過去の栄光を引きずる男の姿が徐々に徐々顔を表します。
卑劣で姑息な男は、何とかして大金をせしめようと画策します。

一方のボブは無口で真面目な青年として登場しますが、狂気じみた表情を一瞬覗かせたり、窮地でもどこか冷静であったりと、徐々に第一印象とは異なった様子を見せ始めます。
過去は過去と割り切り、現状に身をゆだねて生きていくボブはマーヴとは対照的に描かれています。

過去の秘密を共有しながらも、別々の道を進もうとする二人。
ラストに向かうにつれ、どんどん緊迫していく二人の関係から目が離せません。

作中に仕掛けられた伏線

作中のいたるところに伏線が張られている今作は映画終盤で、思いがけない事実を知ることになります。

あらゆるシーンに隠されている伏線の中には、見逃してしまうようなものも含まれていますが、トーレス刑事が映画のポイントになるところに現れて、伏線を見つける手助けをしてくれます。

チェチェン人マフィアへの恐怖で言動が怪しくなっていくマーヴの姿、そしてボブにつきまとい続けるエリック。
この作品の面白さは、段々と悪い方向へ向かっていくストーリーにハラハラしながら、伏線が示すものを推理して、隠された真実を知ることにあります。

見るたびに発見のあるストーリーになっているので、伏線を意識して何度も映画を楽しんでほしいです。

『クライム・ヒート』感想

マフィアの金を巡るクライムサスペンスかと思って見始めた『クライム・ヒート』ですが、予想をしなかった事実を知ることになり、期待以上の映画を見たという満足感を感じる作品でした。

いくつも張り巡らせた伏線に気がつかずに映画を見ていたので、隠されていた真実を知らされてた時は衝撃を受けました。
またその事実を知った上で、ある人物に注目して映画を見直して見ると、まっさらな状態で見た時とは異なる見方でストーリーを楽しむ事ができます。

トム・ハーディファンとしては、一生懸命に子犬の世話をし、好意を抱きながらもなかなかナディアとの関係に積極的になれないところなど、他の作品ではなかなか見る事ができないトム・ハーディを見ることができたことも、この映画をオススメする理由の一つです。

  • マーヴはチェチェン人の裏をかいて大金を手にすることができるのか?
  • 時折、狂気じみた怒りの表情を見せるようになるボブの違和感の正体は何なのか?
  • また彼はナディアとロッコをエリックから守ることができるのか?

様々な人物の思惑が絡まり合い、ラストに向かって加速していく物語は、最後まで目が離せない展開になっています。

『クライム・ヒート』総括

日本では劇場公開されることなくDVDリリースとなった今作ですが、魅力的な俳優陣と伏線を回収しながら隠された物語を掘り起こしていくストーリー展開により、何度でも見たいと思わせるような、非常に見ごたえのある作品となっています。

トム・ハーディがボブの孤独さや几帳面さを細やかに演じていますが、彼が演じるからこそ、このキャラクターの謎や複雑さが見事に表現されています。

この映画で改めて、トム・ハーディの狂気を見せる演技が素晴らしいと感じました。
またノオミ・ラパス演じるナディアが、彼女の過去の象徴であるエリックから逃げられずに絶望する様子は、見ていて胸が苦しくなるほどです。

過去から逃げられずに苦しむ二人の関係が、ラストに向けてどう変化していくかは今作で注目して欲しい点です。

犯罪ドラマと人間ドラマが重なり合い、伏線を回収することで謎が解けたとき、思わぬ事実を知ることになる今作

映画序盤から抱く違和感の正体が、ラストシーンで一気に明らかになります。

裏社会を舞台にしたストーリーや、隠された謎を解きながら映画を見るのが好きな人にぜひ見て欲しい作品です。

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