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イギリスのコメディ俳優、サイモン・ペグ。
『スタートレック』シリーズのスコット役、そして『ミッション・インポッシブル』のベンジー役など、大作でも重要なキャラクターを演じています。
コメディ映画ではダメ男を演じることが多いのですが、何故か憎めない不思議な存在感を放っています。
また、脚本を手がける多才な人物でもあります。

サイモン・ペグが脚本を手がけ、ニック・フロストと共演をして、『アントマン』の脚本・原案を務めたエドガー・ライトがメガホンを握ると、予測不可能な最高のコメディ映画が出来上がります。

『ホビット』のマーティン・フリーマンはもちろん、ロザンムド・パイクやビル・ナイ、ピアーズ・ブロスナンなど、イギリスの名優もさりげなく登場している今作。
一晩で5人の男が12軒のパブをハシゴするという、イギリスらしさ全開のストーリーとサイモン・ペグとニック・フロストのコンビに注目です。

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あらすじ

ワールズエンド酔っぱらいが世界を救う
出典:(C)Focus Features

一晩で友人と12軒のパブをハシゴしようとした思い出を語るゲイリー(サイモン・ペグ)。
記録に再挑戦する為、彼はピーター(エディ・マーサン)、スティーヴン(パディ・コンシダイン)、オリバー(マーティン・フリーマン)、そして親友アンディ(ニック・フロスト)を旅に誘い、20年ぶりに故郷を目指します。

昔と変わらない故郷に着き、早速パブへ向かうゲイリーたち。
チェーン店化した店を嘆きながら、パブを渡り歩く5人でしたが、次第に街の異変に気付きます。
そこへオリバーの妹、サム(ロザムンド・パイク)が現れます。
久々の再会を喜ぶサムでしたが、昔と全く変わらないゲイリーに呆れ、バーを出ていきます。

酒が進んで盛り上がる5人でしたが、学生時代ピーターをいじめていた男と遭遇して、雰囲気が一変します。
しかし真剣な話をする仲間を遮り、一人盛り上がるゲイリー。
そんな彼に対し、飲む為の口実が欲しかっただけだろうとアンディは厳しい言葉を投げかけます。
気まずい雰囲気に耐えられず、席を立ったゲイリーの携帯の着信を見て、アンディの形相はみるみる変わっていきます。

一方、ゲイリーはトイレに入ってきた若者に話しかけるも、全く相手にされないことに苛立ちます。
思わず若者に手を出してしまったゲイリーでしたが、人間技では無いような反撃を受けます。

ゲイリーは若者に勝利しますが、そこで信じられない光景を目にします。
慌てふためくゲイリーの元へ怒り狂ったアンディたち、そして若者の仲間がやってきます。
そして酔いどれの4人と怒れるアンディは、街で感じていた異変の正体を知ることになります。

見どころ

1点目:サイモン・ペグ演じる愛されるダメ男

ワールズエンドのサイモンペッグ
出典:(C)Focus Features

色々な作品でダメ男を演じるサイモン・ペグですが、今作では中身はティーンエイジャーのままという、アル中の中年男性ゲイリー・キングを演じています。
いつまでたっても若者のような振る舞いが抜けず、すっかり落ち着いた4人の仲間と一緒に旅をすることで、ダメ男っぷりが際立ってしまうゲイリー。
しかし不思議と人を惹きつける魅力もあり、4人の仲間たちも昔のようにゲイリーに巻き込まれていく様子が描かれています。

物語が進むに連れてベロベロに酔うゲイリーですが、酔うほどに強くなる、酔うほどに最も輝いていた20年前の姿を彷彿させるようになるのも、このキャラクターの悲しくも魅力的なところ。
絶頂期から転げるように人生を送ってきた彼を、サイモン・ペグが笑いと哀愁をたっぷり混ぜ込んで魅力的に演じています

2点目:ゲイリーの愉快な仲間たち

B級イギリスコメディ映画とは思えないほど、豪華な俳優が出演している今作。
イギリスの名優たちが真面目な顔を、癖のあるキャラクターたちを演じています。

ワールズエンドのニック・フロスト

魅力的なキャラクターが多く登場しますが、中でもニック・フロスト演じるアンディは別格です。
ゲイリーとの再会で冷たく対応したかと思えば、母が死んだと聞かされると彼を放っておけなくなる情に熱い姿を見せます。

16年前の出来事をキッカケに断酒していて、旅に参加しても決して酒を口にしないなど、芯のある人物として、ゲイリーと対照的に描かれているアンディ。
しかし物語が急展開を迎え、誰もが驚くような行動を始めるのが、このキャラクターの最高に面白いところです。

アンディの他にも「WTF」を連発するオリバーや、初恋相手を前にゲイリーをライバル視するスティーヴン、ストローでビールをすするバジル爺さんなど、癖のあるキャラクター揃いの今作
是非お気に入りのキャラクターを見つけて、映画を楽しんで見て下さい。

3点目:物語を盛り上げる音楽

今作では物語にぴったりとあった音楽がセレクトされ、物語の雰囲気を高めています。

例えば映画冒頭では、PRIMAL SCREAMの”LOADED”のイントロと、ゲイリーの生きる気力を取り戻したような表情が見事にハマり、弾けるように物語が始まります。
BLURの”THERE’S NO OTHER WAY”やTHE SOUP DRAGONSの”I’M FREE”が、再開した仲間との明るい旅の始まりを表し、SUEDEの”STEP ON”が、無表情な住民と陽気な5人の対比を面白くしています。

特にぴったりな選曲なのが、ビールを飲み続けて酔っ払ってきた5人の背景に流れるTHE DOORSの”ALABAMA SONG(WHISKY BAR)”です。

酔いながらも平静を保とうとする5人の姿と、愉快な曲がリンクして、酔っ払いの姿がユーモアたっぷりに表されています。

テンポ良く進んでいく物語を楽しみながら、背景に流れる90年代の音楽にも耳を傾けてみて下さい

4点目:今作で見るイギリスらしさ

ちょっと分かりづらいブリティッシュジョークや、パブ文化、そして背景に映し出されるイギリスの街並み。
イギリス文化に触れられるのも、この映画の見どころのひとつです。

言葉遊びや知識をネタにしたブリティッシュジョークですが、今作では90年代のイギリスのポップカルチャーや、文学をネタにしたものが登場します。
元ネタを知らないと、何のことを言っているかさっぱり分からないのが辛いところですが、音楽や三銃士をネタにしたジョークをテンポ良く言い合うゲイリーたちの姿を見ることができます。

パブのハシゴ酒や、ゲイリーのようにいつまでも若い頃のように振る舞う男性など、イギリス文化でよく見られる光景がユーモアたっぷりに描かれているのも印象的です。
そして手入れが行き届いた緑の美しい街並みや、レンガ造りの建物、そして円形交差点など、イギリスらしい光景もさりげなく映し出されています。

コメディ映画ですが、随所に散りばめられたイギリスらしさを感じられる作品にもなっています。

感想

『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』は、金曜日の夜に、ビールを片手に観たい作品です。
酔っ払いをテーマにしたコメディかと思いきや、とんでもない方向に走り出す今作

ワールズエンドはコメディ
(C)Focus Features

疾走感溢れる音楽に乗ってテンポ良く進む物語と、癖のあるキャラクターたちに目が離せなくなります。

輝いていたティーン時代の回想シーンから一転、死んだような表情で登場する中年ゲイリー。
強烈な登場をする主人公ですが、何だか憎めないダメ男ゲイリーを、サイモン・ペグが好演しています。

そして他の作品でも彼とよくコンビを組むニック・フロスト。
他作品ではダメ男を演じることが多い彼が、まともな役を演じていること自体が、今作の面白い点でした。
ダメ男×友達思いのタフガイという組み合わせで暴れまわるサイモン・ペグとニック・フロストが、笑いと哀愁を生み出しています

難しいことは一切考えず、リラックスした気持ちで楽しむことができるコメディ映画です。

総括

エドガー・ライト監督、サイモン・ペグそしてニック・フロストの組み合わせで作られた、通称”スリー・フレーバー・コルネット三部作”の三作目と言われている今作。

真面目な顔をしてジョークを飛ばし、パブをハシゴしてビールを飲むという、何ともイギリスらしさを感じられるコメディ映画になっています。

いつまでたっても大人になれず酒に溺れるゲイリーの姿や、文学や音楽をネタに繰り広げられるジョークの数々など、ふんだんに練り込まれたブリティッシュジョーク。
段々とスリルを感じさせる展開になるストーリーに、普通ならば危機を察知して緊迫した雰囲気になるところですが、危機が迫る程にベロベロになっていくゲイリーたち
ゲラゲラと笑うというより、クスクス、ニヤニヤとジョークを楽しむ映画に仕上がっています。

単なる酔っ払いの物語ではなく、予想もしていなかった方向へと突き進んでいく物語。
こんなのアリ?!という展開が好きな人、ブリティッシュジョーク大好き!という人、そしてクスクス笑えるコメディ映画が観たいという人にオススメしたい映画です。

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