コメディー映画でおなじみのベン・スティラーが監督・出演した『LIFE!』。
1947年に公開された『虹をつかむ男』のリメイク作品で、出版業界を舞台にしているところは『虹をつかむ男』を踏襲して作られています。
空想癖のある主人公が外の世界に飛び出し、美しい自然の中、冒険を繰り広げる姿が印象的な作品になっています。
2016年の『ゴーストバスターズ』や『宇宙人ポール』でのコメディエンヌっぷりがキュートなクリスティン・ウィグが、ベン・スティラー演じる主人公の想い人シャーリーンを演じています。
その他にもショーン・ペンやシャーリー・マクレーンなどの大御所俳優が物語の鍵となる人物を演じ、消極的だった主人公の背中を押していきます。
雄大で美しいアイスランドや、自然の厳しさを感じるヒマラヤの風景など、見るだけで心が揺さぶられるような自然にも注目です。
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『LIFE!』あらすじ
ウォルター・ミティ(ベン・ステイラー)は『LIFE』誌のネガフィルムの管理をする、空想癖のある中年男性。同僚のシェリル(クリステン・ウィグ)が気になるのですが、声をかける勇気が出ません。
ある日会社が買収され、事業再編のLIFE誌が休刊となることを知らされます。
ウォルターのデスクにはフォトジャーナリストのショーン(ショーン・ペン)から、最後のネガとプレゼントが届いていましたが、最終号の表紙に指定された、25番のネガがありません。
携帯を持たず、世界中を駆け回るショーンを探す為、ウォルターはシェリルに声をかけます。
彼女の手助けもあり、ショーンの居場所がグリーンランドだと分かると、ウォルターは飛行機に飛び乗ります。
グリーンランドに着くも、ショーンは出発した後でした。
一度は諦めたウォルターですが、『SPACE ODDITY』を歌うシェリルの幻に背中を押され、ヘリに飛び乗ります。
次の手掛かりを手にし、アイスランドへ向かいます。
火山の噴火により、あと一歩のところでショーンと接触できなかったウォルターは、シェリルに電話をかけて感謝の気持ちを伝えます。
そして同僚からのメールに気がつき、ニューヨークへ戻ります。
LIFE社へ戻ると、クビを言い渡されたウォルター。
シェリルに会おうと彼女の家に向かいますが、そこにいた男性の姿に驚き、その場を去ってしまいます。
帰宅したウォルターは、ショーンからもらった財布をゴミ箱に捨ててしまいます。
ぼんやりする彼でしたが、偶然にもショーンがここに来ていたことに気が付きます。
母の言葉に背中を押されたウォルターは、ヒマラヤにいるショーンに会う為、再び外の世界へ飛び出します。
『LIFE!』見どころ4点
1点目「ウォルターの空想の世界」
いつでも、どこでも、誰といても空想の世界へと潜り込んでしまうウォルター。
現実と違い、空想の世界では何だって出来るし、シェリルに話しかけることも、甘い言葉を囁くこともできてしまいます。しかし空想癖のせいで人に笑われることもしばしば。
それでも彼が空想をやめられないのは、子供の頃に父親が亡くなったことが関係しているのではないでしょうか。
亡くなった父親に代わり、一家の大黒柱となったウォルターは、思い描いていた夢を沢山諦めてきたのだと思います。
それでも空想の世界では、どこへも行けるし、何だってできる。
叶わなかった夢の続きを、空想の世界で見ていたのかもしれません。
2点目「映画に寄り添う音楽」
映画の世界に寄り添い、ストーリーを盛り上げるのに欠かせない音楽。
今作では曲とシーンがピタリとはまり、美しい自然と心地よい音楽に心が揺さぶられます。
中でもデヴィッド・ボウイのSPACE ODDITYが印象的です。
この曲はウォルターの背中を押す重要な曲として、彼が外の世界に飛び出す手助けをしてくれるのです。
最初はテッドが歌詞の一部を使ってウォルターをからかったのですが、この曲はシェリルとウォルターを繋ぐ役割を果たすようになります。
ギターを弾きながら優しくSPACE ODDITYを歌い上げるシェリルの幻影。
その姿に、歌詞に力をもらったウォルターは、次のステップへと踏み出すことができます。映像と音楽がマッチして、とてもエモーショナルで、美しいシーンになっています。
この他にもウォルターに寄り添い、ストーリーを盛り上げる曲が沢山登場する今作。
映像だけでなく音楽にも耳を傾けることで、より深く映画の世界に浸ることができます。
3点目「旅のパワー」
人で溢れかえるニューヨークを飛び出したウォルターは、旅先で自然の美しさや恐ろしさを体感します。
グリーンランドでは小さなニュークの街を飛び出して荒れ狂う海に飛び込んだウォルター。
次に向かったアイスランドでは、雄大な自然の中を自転車とスケートボードで駆け回ります。
そして厳しい自然だけでなく、自分自身との戦いにもなるヒマラヤの旅。
旅先でウォルターが目にする自然の姿は、ウォルターの心とリンクしているのです。
旅先でウォルターが目にする風景は、自然の美しさや雄大さを感じることができるものばかりです。
スケートボードで疾走するアイスランドのシーンは特に美しく、深い緑色の木々を背景に動き回るウォルターを見ていると、心も体も解放されるような清々しい感覚に陥ります。
4点目「心温まる素敵なキャラクター」
今作には心優しいキャラクターが多く登場します。
- ウォルターに深い愛情を持つ母と妹
- 長年誇りを持って仕事に取り組んできた同僚
- 外の世界へ飛び出すきっかけになったショーン
- 背中を押してくれた、ウォルターの想い人のシェリル。
中でもマッチングサイトのカスタマーサービス責任者のトッドには、時に笑わされ、時に勇気付けられます。
そんなキャラクターたちがいるからこそ、この映画を観て、じんわりと心が温まるような感覚を味わうことができます。
旅先でウォルターの手助けをしてくれる現地の人たちの優しさも、心に染みるものがあります。
言葉が通じなくても気持ちは通じる。
人を思いやること、人と関わることの大切さを改めて感じさせられます。
『LIFE!』感想
ベン・スティラーといえば、『ズーランダー』や『トロピック・サンダー』などのドタバタコメディのイメージが強かったので、こんなに満ち足りた気持ちになる、心を打たれる美しい映画だとは想像していませんでした。コツコツと生きてきたウォルターが、外の世界に飛び出して、少しずつ心を解放していく姿に清々しを感じました。
自然や音楽の美しさはもちろん、作中には印象的な言葉も多く登場します。
”世界を見よう 危険でも立ち向かおう それが人生の目的だから”というLIFE社のスローガンもそうですが、ハッとさせられたのはフォトジャーナリストのショーンが、ずっと待ち続けていた被写体を目にした時に呟いた言葉です。
ショーンが何を言ったのかは、ぜひ映画を観て確認してもらいたいです。
『LIFE!』評価
人の優しさ、自然の美しさ、言葉の力そして物語に寄り添う音楽が一つに混ざり合い、心が揺さぶられる物語になっている今作。映画を観た後は心が解放されるような、背中を押されるような不思議な感覚を味わうことができます。キャラクターの魅力が伝わってくる俳優陣の演技も素晴らしく、飾らない生き方と他者への優しさを忘れないキャラクターたちに勇気付けられます。
普段はコメディ映画で暴れ回っているのが想像できないほど、ウォルター役のベン・スティラーと、シェリル役のクリスティン・ウィグの演技からも心に沁みる良さを感じることができます。
映画を見終わっても、ジワジワと映画の世界に浸ることができる今作。
外に飛び出したウォルターと一緒に、大自然の中を冒険しているような気分になれるのもこの作品の魅力です。
何だかモヤモヤする、日常を抜け出して遠くへ行きたい…
『LIFE!』はそんな時にこそお勧めしたい、パワーを与えてくれる映画になっています。