映画『おもいで写真』ネタバレ感想。老後の自分の理想の姿とは?

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普段の生活にさえ気をつけていれば、誰にでも平等に、老後はやって来ます。
「好きな様に生きて来た」「人の為に尽くしてきた」「会社に人生を捧げてしまった」と、高齢を迎えた時に感じる想いは人それぞれです。また、そこに来るまでに病気・事故・トラブルは避けられません。

若い世代には遠い先の話。中高年世代には準備を考えないといけない時期。そして高齢者にとっては現実なのは、言うまでもありません。

「棺に入る時に(幸せだった…)と思える人生なら、それで充分」との常套句じょうとうくを眼にします。
もっともな言葉です。
しかしその直前の「遺影写真を撮る」段階で、果たしてそう感じられるでしょうか?

突然、虹の橋を渡る場合も考えられます。
その時に使われる遺影写真の顔は、永遠に飾られる事に耐えられる表情をしているでしょうか?
「遺影写真を撮影する」女性を主人公にした映画『おもいで写真』を、紹介します。

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『おもいで写真』主なキャスト

  • 音更結子(深川麻衣)
  • 星野一郎(高良健吾)
  • 樫井美咲(香里奈)
  • 居酒屋の大将(井浦新)
  • 柏葉雅俊(古谷一行)
  • 山岸和子(吉行和子)

『おもいで写真』あらすじ

メーキャップアーティストの夢に破れた音更結子は、たった一人の家族だったお婆ちゃんが亡くなったのを機に、東京を引き払い、故郷の富山に帰って来た。

町役場に努める星野一郎は、幼馴染の結子の帰郷を知り、高齢者の遺影写真を撮影する仕事を提案する。
結子の実家は写真屋。多少の腕がある結子は抵抗したものの、やる事も無いので、この提案を引き受ける。

そこには、お婆ちゃんの遺影がピンボケ写真だった事に対する不満も、隠されていた。
高齢者が多く住む団地に売り込みに行く結子。
最初は悉く断られるが、独り暮らしで話し相手がいない老婆・山岸和子が、心を開く。

出来上がった遺影写真に満足した和子が周囲にその出来栄えを自慢し始めた辺りから、遺影写真の撮影依頼が舞い込み出す。

「思い出の場所で写真を撮りたい」とのリクエストに応える結子。
初めは不慣れだったものの、高校時代にコンテストで入賞歴があった経験も味方して、撮影に力が入って行く。

『おもいで写真』ネタバレラスト

※ここからはネタバレを含んでいます。

未鑑賞の人は感想へジャンプした方が良いかも?

なかなか心を開いてくれなかった老人男性は、聾唖ろうあの為、塞ぎ込んでいた。
結子は手話の本を片手にコミュニケーションを取り、働いていたと言う靴屋で遺影写真の撮影をする。
しかし、それは嘘だった。

実は亡妻が働いていた店で、時々陰で手伝っていただけで、そのおもいでを残したいからと、遺影写真を撮影した。

昔から嘘が大嫌いで頑固で融通の利かない性格の結子は少々不満げだったが、100人の遺影写真の展覧会を目指して、漁港のバイトをしながら、撮影を続ける。

ある日の事。
柏葉と言う老人男性から、妻がカメラマンをしていた写真館で遺影写真を撮影したいとの依頼が来る。
杖を突かないと歩けない柏葉と向かった写真館は、既に空き地だった。

結子は近所の人に話を聞くと、柏葉が妻を捨て、別の女と出て行った過去を知る。
結子はその行為が許せない上に、図々しくおもいで写真を撮影しようとした態度に激怒。
柏葉を空地に置き去りにし、自動車で帰ってしまう。

その夜、柏葉が行方不明になったと結子の元に連絡が入る。
万一の事があってはおもいで写真の今後に関わると、結子も探しに行く。

警察や消防署も柏葉を捜索。
柏葉は見つかるのか。
そして、展覧会は開けるのか...

『おもいで写真』見どころ4点

『おもいで写真』の鑑賞ポイントを紹介します。
極力ネタバレは無しです。

  • 様々な高齢者の姿
  • 高齢者達と同じ様に成長して行く、結子と一郎
  • 主演は元・乃木坂46の深川麻衣
  • ひと皮剥けたキャスト陣

様々な高齢者の姿

「遺影写真を撮影する」設定は、一見ブラックユーモアっぽく、デスノートでは?と疑うかもしれません。
しかし「おもいでの場所で」とあるので、人生を振り返る意味合いが発生します。

自分の夢を写真の中で叶えたい老人。
生き甲斐を見つけられて、元気よく働き出す老人。
主人の亡くなった事を認めず、いつでも横にいると信じ続ける未亡人等、様々な顔が浮かび上がります。

最初は躊躇していた高齢者達が、結子の熱意にも打たれ、遺影写真を依頼して行くシーンを見て行くうちに、自分が高齢者になった時、悔いのない人生を送れているか?と、つい考えてしまいます。

高齢者達と同じ様に成長して行く、結子と一郎

お婆ちゃんの下で育った結子は、自分を捨てて逃げた母の存在が許せずにいます。
お婆ちゃんから母との思い出を聞かされていましたが、信じる事が出来ません。

一郎は役場に勤めている一方で、東京のデザイン会社への転職を計っていました。
しかし、おもいで写真を撮影する結子の姿を見て断念。

結子も、一郎と行った高台のベンチの前で、母への恨みを再認識しながら、大して儲からなかった写真館を、何故お婆ちゃんが生涯経営していたかの意味を考え、一転して奮起します。

高齢者に刺激されて成長する姿も、きちんと描かれています。

主演は元・乃木坂46の深川麻衣

深川麻衣が演じる音更結子は、遺影写真を撮影する一方で漁港でアルバイトをしたりと、肉体労働もしています。
また、原作では、奈良美智のイラストに似た女性と描かれています。

自立を目指す女性に特有の、頑固さと真面目さから来る融通の利かないせいでトラブルを起こしがちな女性を、見事に演じ切っています。
町役場に努める幼馴染の一郎役は、高良健吾です。

結子を鼓舞する裏側で転職に悩む、人間味が溢れながらも風格が漂う職員ぶりは、好演です。

ひと皮剥けたキャスト陣

団地の高齢者を顧客にするホームヘルパー・樫井美咲役を演じるのは、香里奈。

モデルの他、都会で働くイケイケのOL役のイメージが強いですが、この作品では、今迄のイメージから脱却した、結子を優しく見守るお姉さん的な存在を演じています。

結婚して子供もいる裏設定があったそうです。
齢を重ねた事で、厚みの増した女優に変わったと思わせてくれます。

老婆役として欠かせなくなった、山岸和子役の吉行和子も、優しさに溢れています。
妻を捨ててすっかり落ちぶれ果てた柏葉役の古谷一行の、如何にもいそうだと感じさせる高齢者役にも、注目です。

『おもいで写真』感想

温かみを感じる作品です。
「遺影写真を撮影する」だけでは、どうしてもデスノート的なブラックなストーリーを想像してしまいますが、『写真におもいでを焼きつける』点に絞る事で、高齢者達に生き甲斐を見出させ、直に触れ合って行く結子や一郎の姿に、好感が持てます。

時には高齢者達と一緒にゲートボールを楽しむ2人の姿は、理想の若者像に映るかもしれません。
「お年寄りを大切にしよう」と言った、説教臭さを感じない処も、良かったです。

オール富山ロケで、エキストラも大勢参加したそうです。
地元の素朴さが、温かみに厚みを加えています。

イオンエンターテイメントの配給です。
イオンシネマ系列でロングラン上映されるのは当然ですが、他の映画館でも上映が増えればいいのにな。と、思いました。
但し系列外の映画館での上映も少しずつですが、増えています。

熊澤尚人監督が書き下ろした小説「おもいで写真」も幻冬舎文庫から発売されており、映画で感じた温かみが、そのまま活字化されています。

『おもいで写真』総括

2010年代の後半から「人生100年時代」「と定義づけられる様になってしまい、老後の不安を煽られる生活を、余儀なくされました。
お金・住居・家族・介護・病気等と、不安と心配は尽きません。

しかし、老後の不安として「後悔」も、見逃せないでしょう。
「チャレンジする事に年齢は関係ない」と、声高に訴える人もいます。

しかしその時、身体や精神は大丈夫との保証は、あるでしょうか?
万一のトラブルによって、チャレンジの道も閉ざされてしまう。

そんな人の方が、大多数かもしれません。
「おもいで写真」は遺影写真を撮影する事で、自分の過去と対峙する残酷な一面も持ち合わせています。
「やらない後悔より、やる後悔」とも言います。

今の自分は後悔の無い生き方をしているか?
そんな自分が遺影写真を撮影する段階に来たとき、素直に依頼に応えられるか?

「遺影写真を撮影する事で、人生を振り返る」と言う切り口は、斬新です。
温かみのある映画ですが、その裏側にある残酷さにも、気づいた方がいいでしょう。

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