1993年からビッグコミックスピリッツ(小学館)にて掲載されていた松本大洋の漫画『鉄コン筋クリート』。
その作品を2006年にマイケル・アリアス監督が劇場版アニメとして公開し、興行収入は5億円を超える大ヒットとなりました。
また、声優を務めた二宮和也は13歳の頃に読んで以来、作品の大ファンであると公言するなど根強いファンも多い本作。
単なるアニメ―ション作品ではなくメッセージ性の強い本作、是非観てみてください。
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『鉄コン筋クリート』あらすじ
舞台は架空の街「宝町」。
そこに2人の子ども、クロ(声:二宮和也)とシロ(声:蒼井優)がいました。
親のいないクロとシロは窃盗、暴力など生きていくためなら何でも行ってきました。
まさに怖いものなんてなにもない2人に警察も2人を「ネコ」と呼び、長らく手を焼いていました。
クロとシロにとって宝町は「自分たちの街」。
そんな環境にヤクザがレジャー施設の建設を企てたことによって変化が訪れます。
ヤクザと手を組みレジャー施設の建設に一役買おうとする人物「ヘビ」(声:本木雅弘)は建設に伴い、宝町で厄介な存在であるクロとシロを消すために3人の殺し屋を雇い、2人を徐々に追い詰めていきます。
開発やヤクザの行動、かつての宝町の姿を失っていく様子にシロは胸を痛め、段々精神が弱っていきます。
そんな折、クロとシロはついに殺し屋に襲撃されるのでした。
なんとかシロを守って戦うクロでしたが、2人が離れ離れになった隙を狙ってシロが襲われ、重傷を負い警察に保護されることになってしまいます。
その日を境にクロとシロは別々の道を歩むことになってしまいました。
『鉄コン筋クリート』結末
シロが警察に保護され安全な場所にいる一方で、シロも生きる街も失ったクロも次第におかしくなっていきます。
クロはクロ自身の中に潜む「イタチ」という存在に徐々に自我を支配されていってしまうのでした。
日々残虐な暴力を繰り返すイタチはついに殺し屋をも撃退し、ヘビもヤクザとの抗争で死に、一見宝町に平穏が戻ったように思われました。
しかし、イタチに乗っ取られたクロは自身を制御することができなくなってしまいました。
自我とイタチとの間で混乱するクロのもとにシロの姿が見え、クロはイタチを抑え込み、もとの自分に戻ることができたのでした。
2人は再び共に生活し始めます。
そこは宝町ではなく、シロが夢見た海の見える街でした。
『鉄コン筋クリート』見どころ:なにからなにまで正反対なクロとシロ
シロはとても無邪気で純粋です。
一見何もわかっていないように見えますが本当は誰よりも人の心や時の流れに敏感なのかもしれません。
一方のクロは隠してはいますがどこかに凶暴性を持ち合わせており、今の生活に快感を覚えているようにも見えます。
正反対な2人ですがシロがいることでイタチの存在を長らく封じ込めてきたクロ、もしかするとシロは初めからクロの凶暴性を自然と見抜き、抑制するために側に居続けてきたのかもしれません。
それは最後、イタチに抵抗することができなくなったクロがシロによって救われるシーンからも見て取れます。
『鉄コン筋クリート』感想
シロはクロの心や人の気持ちに敏感です。
感受性の強いシロが物語の中で発する台詞の中には見ている私たちにとってもハッとさせられる台詞が多くあります。
また、徐々に精神が崩壊していく2人をみていると人は一人では完璧ではなく、不完全な部分を他者と補い合いながら生きているということを痛感させられます。
クロがシロを守っているようで、実際はシロがクロを守っている、この2人の関係性にグッとくる人も多いのではないでしょうか。
『鉄コン筋クリート』評価:怖いがメッセージ性が強い
物語の全体的なテーマとしては自分自身との対峙、他者との関わり合いというシンプルなテーマですが、ヤクザによる街の開発が絡んだり、暴力シーンなどが多く描かれていることもあり、1度見るだけでは暴力性のインパクトが強く残り、伝えたいことがややわかりにくく感じる人もいるかもしれません。
ですが、イタチが登場しクロに語りかける最後の場面は比較的シンプルにメッセージ性が強く表現されていて面白さを感じますし、結末を踏まえてもう1度最初から展開を追うために見直したくなる人も多いのではないでしょうか。