1996年アトランタ爆破事件の実話。
実話を映画にすることにこだわってきたクリント・イーストウッド監督が表現する内容とは?
- 全米から容疑者にされてしまった男はどうやって無実を証明するのか?
- 実際に我々の身にも起こり得る誹謗中傷の可能性とは?
- イーストウッド監督がSNS全盛期の今、伝えたいメッセージって?
全米での評価も高い『リチャード・ジュエル』は勇敢で泣ける、切ない映画のネタバレ含むあらすじや感想を紹介。
タップ(クリック)で目次が開きます
リチャード・ジュエル作品情報
原題 | Richard Jewell |
---|---|
公開 | 2020年1月17日 |
監督 | クリント・イーストウッド |
脚本 | ビリー・レイ |
主なキャスト | サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ジョン・ハム、オリヴィア・ワイルド、ポール・ウォルター・サウザー |
ジャンル | ヒューマンドラマ、実話に基づく |
上映時間 | 131分 |
リチャード・ジュエル 予告動画
リチャード・ジュエル あらすじ
1996年7月27日、警備員のリチャード・ジュエルはアトランタ五輪の会場近くの公園で爆発物を発見した。
リチャードの通報のお陰で、多くの人たちが爆発前に避難できたが、それでも2人の死者と100人以上の負傷者を出す大惨事となった(避難の最中に心臓発作で亡くなった人間も出た)。
マスメディアは爆発物の第一発見者であるリチャードを英雄として持ち上げたが、数日後、地元紙が「FBIはリチャードが爆弾を仕掛けた可能性を疑っている」と報じた。
それをきっかけに、マスメディアはリチャードを極悪人として糾弾するようになった。
また、FBIはリチャードの自宅に2回も家宅捜索に入り、彼の知人たちにも執拗な聞き込みをするなど常軌を逸した捜査を行った。
ジュエルはかつての職場で知り合った弁護士ワトソン・ブライアントを呼び出し、彼と共にこの理不尽な状況と対峙していくことになる。
リチャード・ジュエル ネタバレ
※結末までのネタバレを含みますので、ネタバレを遠慮したい方は下記のボタンから見どころ紹介箇所へジャンプをお願いします。
弁護士ワトソンとリチャードの出会い
中小企業局の備品係として勤務することになった新人リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・サウザー)は後の弁護士となるワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)と出会う。
ワトソンはリチャードに相手を観察し欲しい物などを用意することから「レーダー」とあだ名を付ける。
リチャードは相手の事を考えられ、同時に最新の注意を払える人物で、法執務官に憧れていた。
夢に近づくため、警備員になると言い退職するリチャードにワトソンは激励として「君は絶対に将来警官になるが、権力を振るうクズ野郎にはなるな」と言葉をかける。
ワトソンはリチャードを見た目で判断せず、一人の男として接してくれる人物だった。
警備員として働くリチャード
大学の警備員として働くこととなったリチャード。
正義感の強い彼は学内で学生を取り締まっていたが、行き過ぎた取り締まりによって表彰されるどころかクビになってしまう。
正義感が暴走してしまい学生からも学長からも煙たがられてしまう行動が、後々リチャードを苦しめることになる。
幸いにもオリンピックにより警備の仕事にありつけたが、ここでリチャードの運命が大きく変わる。
記念公園に仕掛けられた爆弾をリチャードが発見し、被害を最小限に止め一躍”ヒーロー”となる。
ヒーローから容疑者へ転落
メディアも一斉にリチャードを英雄扱い。
一躍時の人となったリチャードに出版の依頼が舞い込む。
契約のことなど専門家の助けが必要だと感じ、ワトソンに電話を入れる。
一方、記念公園の捜査を担当するショウ捜査官(ジョン・ハム)は第一発見者だったリチャードが過去に勤めていた学校の学長からの通報を受け、リチャードの過去を調べる。
すると過去の行動とFBIの分析する犯人像と一致。
リチャードをヒーローに憧れる孤独な白人で”自作自演によってヒーロー”になったと疑うようになる。
国家とマスコミによって一夜にして犯罪者扱いされるリチャード
あろうことか、リチャードを調べていることは極秘情報だったはずが野心家でスクープを欲している女性ジャーナリストキャシー(オリヴィア・ワイルド)により「犯人だという証拠が全く無いにも関わらず、あたかも容疑者であるかのような報道」とFBIという「国家警察がクロと決めてかかった捜査」によって”ヒーローから容疑者”扱いされることに。
ショウ捜査官がキャシーに情報をリークしたことにより、リチャードの運命が大きく変わっていく。
立ち向かう弁護士ワトソン
リチャードの掛けた電話によって弁護を引き受けることになるワトソン。
ワトソンは実際にリチャードがやっていないか確かめ、無実だと確信する。
ここからワトソンとリチャードは巨大権力と戦うこととなる。
あの手この手でクロだと誘導するような発言をさせようとするFBI。
また、犯人だと決めつける報道をするメディア。
ワトソンの簡単な「何もしゃべるな」という指示すら守れないリチャードはますます自分の身を悪い方向へ導いてしまう。
真実を訴え、息子を守る母
まるで犯人だと決めつけられ、メディアから連日プライベートを無視した報道をされるリチャードと母。
我慢の限界を超えた2人はワトソンの助けを借りて、反撃に出る。
まずは嘘発見器によるリチャードの証言。
結果的に、一切疑いようのない潔白が証明される。
そして、息子を守るためメディアの前に立ち無実を訴える母。
母の心からの叫びはメディアや国家の考えを動かすことになる。
リチャードを容疑者扱いした第一報を報じたキャシー記者も、予告電話がかけられた時間と実際リチャードの当日行動から完全に無実だと気づく。
身の潔白を証明するリチャード
リチャードとワトソンは自らの潔白を証明するため、FBIの尋問を受けることに。
FBIの誘導尋問をワトソンは制し、リチャードは身の潔白を一つ一つ証明していく。
決死の思いで身の潔白を訴える!
その訴えにより、FBI側はこれ以上疑う点があるか何も答えることが出来なくなってしまう。
捜査開始から88日後、ついにリチャードは捜査対象から外れることの証明書を勝ち取る!
念願の法執務官となったリチャード
事件から6年後、ワトソンはリチャードに再び会いに行く。
それは真犯人が見つかったことの報告だった。
リチャードに「見違えるほど立派な警官になった。」と賛辞を送るワトソン。
そこには凛々しい顔つきで警官として立っている一人の英雄の姿がありました。
リチャード・ジュエル 見どころ3点
1点目:クリント・イーストウッド監督のメッセージ
本作、リチャード・ジュエルは実話を基に作られた映画です。
なぜこのタイミングで1996年の事件を扱ったのか?
国家とメディアによって人生を狂わされたリチャード・ジュエル。
現代の匿名でSNSを使った発言に警鐘を鳴らしているのかもしれません。
これを観た後、何気ない発信やリツイートを改めて考え直すことになるでしょう。
2点目:リチャード・ジュエルを演じたポール・ウォルター・サウザー
クリント・イーストウッド監督は本人役に、当時と瓜二つの無名役者ポール・ウォルター・サウザーを大抜擢しています。
見事当時のリチャードを再現していますし、性格や体型を皮肉るブラックジョークも主演ポールだからこそ。
そして何より、法執務官に憧れ正義感の強く英雄となり、他界した本人をリスペクトしたラストとなっています。
3点目:悪いのは誰なのか?
犯人像のプロファイリングや、スクープを手にしたいマスコミ。
国家の思い込みと、スクープを報じたら良しとされるマスコミ。
そして、マスコミが報じた内容を本当だと信じ込む市民。
リチャード・ジュエルを苦しめたのは誰なのでしょうか?
とても考えさせられる内容となっています。
リチャード・ジュエル感想
クリント・イーストウッド監督らしいメッセージ性の強い作品でした。
実話を基に描いた作品ばかりを取っている監督がこのタイミングで本作を撮った事に明確な意図を感じます。
今ではSNSによって誰もが凶器を持っていると感じさせられました。
日本でも何気ないリツイートが損害賠償の対象になった判決もあるように、自分の発言に注意を払おうと怖くなります。
結末として最後は無実を証明することが分かっている作品ではありますが、無実を証明するまでに戦う家族や味方の存在によってラストは余韻に浸れる作品でした。
エンドロールのピアノが感動を駆り立てます。
個人的にめっちゃムカついたのはオリヴィア・ワイルドが演じるキャシー。
スクープさえ取れたら何をしても良い。
女さえも武器に使う彼女は観ていてイライラしました。
自ら予告電話と公衆電話を調べたことで無実を分かった後の行動は???
これだけ嫌な女を演じることができたオリヴィア・ワイルドにあっぱれです。
そして、せっかくワトソンが信じて弁護してくれてるのに言いつけを守れず、自らの主張をしてしまうリチャードにイライラします(笑)
だから自分の体型もキープできないんだろうなぁ。
アメリカでは体型を維持できない人は出世街道から外れるらしく、だからこそ必死にジムに通うみたいです。
日本でも見た目で損することはあるので、自分の見た目には気をつけないといけないと感じた映画でした。