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吃音症のイギリス王子と、破天荒な言語療法士ライオネル。
イギリスの歴史に残る、身分を超えた友情とは!?「英国王のスピーチ

吃音症という病気は、ご存知でしょうか。
言葉をなめらかに発音できずに詰まったり、どもったりしてしまうという病気です。

そんな病気に悩むイギリスの王子と、その治療に破天荒な言語療法士があたったという史実をテーマにした本作「英国王のスピーチ」は、第83回アカデミー賞、作品賞を含む4部門を受賞という快挙を達成した名作です。

また本作は、主役であり実在のジョージ6世の存命中には治療の記録や資料が出回らないように根回しされていたこともあり、脚本のデヴィット・サドラーにより企画が長い間温められていました。
その期間はなんと30年以上。
そんな念願が成就した、言わば年代物の名作の誕生です。

英国王のスピーチあらすじ

1925年、吃音症に悩むヨーク公アルバート王子は、大英帝国博覧会閉会式という大舞台で父ジョージ5世の代理として演説を行います。
しかし、その演説は持病のために悲惨な結果となり、聴衆の次代国王候補のスピーチへの期待をも大きく裏切ることとなってしまいました。

その顛末を見届け、事態を重くみた母・エリザベス王妃は、アルバートを連れ、ロンドンの言語療法士であるライオネル・ローグのオフィスを訪れます。
ライオネルは、独自性の高い手法により、第一次世界大戦における戦闘神経症に悩む元兵士達を効果的に治療してきた実績がある、腕利きの言語療法士です。

とはいえ、ライオネルは王室に対する礼儀作法などお構いなしで、王子を愛称の「バーティ」と呼び、自身のこともローグ先生ではなく、ファーストネームの「ライオネル」と呼ばせようとします。

そんな無作法に怒って帰ろうとするアルバートに、ライオネルから戯曲ハムレットのセリフをつかえることなく朗読できるかどうかの賭けを持ちかけられます。

その賭けのルールとは、ヘッドホンから音楽を流し続け、自身の声が聞こえない状態でレコードに録音するというものでした。

アルバートは録音を始めるも、途中で腹を立てて帰ってしまいます。

しかし、後から聞いてみたレコードには、自身の滑らかな発声が録音されていたのです。

こうして、雄弁な国王へと変身するための光明を一筋見出したアルバートと、凄腕言語療法士ライオネルのチャレンジが始まります。

見どころ1点目:「全編通して胸を打つ、体当たりでコンプレックスに立ち向かうポーズ」

コリン・ファース扮するアルバート王子が、吃音治療を通して、王位継承者としても人間としても成長していく過程が大きな見所です。

そして、その吃音治療のために思い切って二人三脚をする相手が、一癖も二癖もある厄介な人物だというところがとても面白いポイントです。

ジェフリー・ラッシュ扮するライオネルは、変人の中の変人とも言えるようなキャラクター性で、一見すると胡散臭さすらも感じられます。

しかし、ライオネルは治療に活きる知恵を多く蓄えた超有能な人材だったのです。
(大学時代には役者として活躍しており、その経験も治療に活かされているというから驚きです。)

そんな<strongちぐはぐな二人の間で友情が生まれては崩壊し、その度に再構築される様子がスリリングでもあり、もどかしくもあり。
そうして友情が徐々に強くなっていく様子が、作品に大きなうねりを与えているわけです。

大きなコンプレックスを克服することは自分と向き合わざるを得ません。
見たくないもの、蓋をして隠してしまいたいもの、それらを直視して乗り越える努力を続けなければ克服は叶いません。
それに、努力を続けたとしても、残念ながら必ず克服できるというものでもありません。
何度も困難にぶつかり、その度に挫折しそうになる心を奮い立たせて立ち向かう勇気。
それが、本作が強く発信するメッセージのひとつです。

見どころ2点目:「名優コリン・ファースの圧倒的演技力で描かれる、王子の成長」

本作は、英国史上最も内気で気弱な王子様が、ヒトラー顔負けの雄弁な演説をするに至るまでの成長過程を描いた作品です。

このような作品を制作するにおいて必要なのは、言うまでもなく俳優の演技力です。

主演のコリン・ファースは、それに足りるどころか余りある演技力を持ち得る、現代における名優の一人であることが証明されました。
多重人格者であるかのような迫真の演技を見るにつけても、コリン・ファースの演技の振れ幅は推し量ることができません。

なかでも、治療の苦しみが実を結び、吃音症を克服した後の演説シーンでは、
・国を統べるものとしての威厳と覚悟
・さらには国民を導く指導者としての迫力

をひしひしと感じられました。

本作のアルバート王子というキャラクターは、コリン・ファースがこれまで演じてきた中で、屈指の「作中における成長度合いが大きい」キャラクターであるはずです。

英国王のスピーチ感想

私の周りには国王候補はいませんが、吃音症の人は数名思い当たります。
そのため、その人たちのことを自然と思い浮かべながら本作を鑑賞しました。

吃音症に悩む本人にとって、言葉をうまく発することが困難であるというのは、日常生活を営む上での大きなストレスを生み出すものであることは想像に難くありません。

ましてやアルバート王子のように、”生まれた時にはもう仕事が決まっている”となれば、その避けられない運命へのプレッシャーも想像を絶するものであったことでしょう。

本作は史実を基にしているため、そんな状態でも、それらをはねのけた人間が歴史上に存在していたという事実を知ることができ、非常に良い映画体験ができました。

吃音症を克服するための治療法もユニークなものが多く、仮に吃音症でなかったとしてもクリアできるのかどうかわからないものばかりで、興味深いというよりは自分でも挑戦してやろうという気持ちにすらなりました。

英国王のスピーチまとめ

本作は、基本的に万人にオススメできる映画だと言えます。
小道具や雰囲気に至るまで丁寧に作り込まれた世界観は、観るものの心をスッと惹きつけてくれるうえ、歴史ものにも関わらず、難しい予備知識などがなくても楽しめます。

また本作では、イギリス王家のかなりプライベートな様子が垣間見られます。
そのため、イギリス王室などに興味がある方は、ストーリー以外にも楽しめるギミックが多くあります。

身分の違いから育まれる友情や愛情、というテーマは普遍的であるため、珍しい・目新しいテーマを求める方にはあまりオススメできません。
また、本編は118分と短めの上映時間ではありますが、伝記映画であるためエンタメ性は低く、起伏に富んだストーリーもないため、退屈に感じてしまうという場合もあるかもしれません。

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