原作は高見広春の小説「バトル・ロワイアル」。
「仁義なき戦い」シリーズの深作欣二監督による2000年公開の『バトル・ロワイアル』は、惜しくも彼の最期の完成作品となります。
中学生によるサバイバルと題した生き残りをかけた殺し合いをテーマとしている為、国会にも取り上げられるほどの問題作として審議されますが、世間には大きな反響を呼び、興行収入30億円超を記録した大ヒット作品です。
中学生同士の残虐な殺し合い描写が続くため、中学生の年齢では観ることができないR15+指定されました。
これについては監督も納得できない想いを残しましたが、賛否両論あるにもかかわらず、日本アカデミー賞、最優秀作品賞・優秀監督賞受賞。主演の藤原竜也は、同じく日本アカデミー賞、優秀主演男優賞などを受賞します。
また、ブルーリボン賞にて新人賞を獲得するなど、高い評価を受けます。
藤原竜也はじめ前田亜季、柴咲コウ、塚本高史、栗山千明など若さとエネルギー溢れる演技も必見です。
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『バトルロワイヤル』あらすじ
城岩学園中学3年B組、の七原秋也(藤原竜也)は修学旅行に出かけ、クラスメイトとバスで楽しい時を過ごしますが、知らずに眠りに落ちてしまいます。
気が付くと無人島に監禁されていました。
状況を把握できない皆の前に、元担任のキタノ(ビートたけし)が自衛隊を率いて現れました。
そして、新世紀教育改革法、「BR(バトル・ロワイアル)法」について説明ビデオを流し始めます。
国は経済的に危機に陥った社会に突入し、それに伴い大人を見下す子供たちが急増化。
家庭や学校においても暴力事件を起こし、これ以上力を誇示しない様にと恐怖によって子供を支配する法案が施行されました。
年に1度、全国から選ばれたひとクラスが、厳重管理されたこの無人島で生き残りをかけた殺し合いを3日間にわたって強制的に行うのです。
個々に取り付けられた頑丈な首輪も監視目的の為。
無理やり外そうとする行為、時間毎に変わる禁止区域への侵入、そして終了時刻に生き残りが多数の場合には装置が作動し、爆発によって命を落とす仕組みになっています。
そして、転校生として自ら懇願しこの殺し合いのゲームに参加する転校生2人、冷酷非道な桐山和雄(安藤政信)と3年前の生き残り、川田章吾(山本太郎)を合わせ、計42人の殺し合いが始まります。
話の途中、ひとりの生徒はキタノの投げたナイフで死に、また、秋也の親友国信慶時、通称のぶは、キタノの操作により首輪が作動。
一瞬にして命を落とします。
壮絶な現場を目の当たりにした生徒達は、自分に与えられた食料と武器の入ったバックを持ち、泣きながら散らばっていきます。
秋也はのぶが好意を寄せていた中川典子を守ろうと誓いをたてます。
『バトルロワイヤル』ネタバレラスト
すぐに犠牲者は続出します。
時間毎殺された生徒の名前がキタノによって読み上げられ、秋也はどうして簡単に友達を殺せるのかとやりきれない思いで、典子を守る為だけに立ち上がります。
桐山はこのゲームを楽しむように、殺しては武器を手に入れゲームを楽しむ狂気的殺人者。
まるでハンターのように鋭い目つきの光子(柴咲コウ)はクラスメイトに近づき油断させながら殺していきます。
三村信史(塚本高史)は仲間と脱出を企て、爆薬を作ります。
そして軍のデーターをハッキング。
あと少しと言う時に桐山に見つかり仲間と共に殺されてしまうのです。
一方、秋也と行動する典子は高熱で倒れてしまいますが、居合わせた川田は手際よく治療し、2人は川田を信頼します。
川田が知っているという脱出方法を信じ、三村達に会いに行きますが、彼らの基地は火の海。
火の中から現れたのは視力を奪われた桐山だったのです。
川田は戦いの末桐山を殺し、生存者はとうとう3人になってしまいました。
川田はタイムリミット間近で秋也と典子の二人を殺す芝居をします。
1人の勝利者と見せかけ川田に銃を向けるキタノを秋也は銃で殺し、この悪夢から解放されます。
3人は島から見事脱出。
しかし、桐山との戦いで負傷を負った川田は本土へ帰る途中2人に見守られながら息絶えてしまうのです。
秋也と典子は指名手配者となりこれから先も長い逃亡生活が始まるのでした。
『バトルロワイヤル』見どころ4点
恐怖
殺さなければ殺されるという状況になどなりたくはありませんが、恐怖は人の心を支配し、精神を破壊することがわかります。
そして、その時人は、正常でない判断を下し、容易に人を殺せてしまうことが恐ろしく悲しく映ります。
恐怖こそが凶器にも感じます。
優しさや思いやり、助け合いなど、今まで大切にしてきた気持ちが一瞬で否定され奈落の底に突き落とされたまま絶望して死んでいく苦しさが伝わり、終わらぬ殺し合いに、息をすることも忘れてしまうでしょう。
キタノの孤独
手に負えない子供たちを正す為、大人達がバカげた法案を作り出したことが全ての始まりです。
子供が大人にはむかう大切な成長過程におき、本来、時間と愛情をもって理解させなければいけない役割の大人がその問題を放棄し、大人故の特権だけを利用した実に理不尽な法案なのです。
しかしその大人もまた子供時代、大人を信じられないまま大人になってしまった事が始まりであることを考えると、この問題の奥深さと負の連鎖を思わずにはいられません。
キタノの孤独がそれを物語っているようです。
教え子たちに馬鹿にされ、娘からは邪魔者扱いの父。
心の拠り所を探すように時折見せ隠れする人間味のある感情から、愛することと愛されることの両方を求めている孤独感を感じます。
山本太郎演じる川田の復讐
一度勝ち抜いたとは言え、おぞましい記憶の残る戦いに彼は何故参加を希望したのでしょう。
大切な友人とかけがえのない恋人を失い、体にも心にも深い傷を残した彼が、死の覚悟をもってまで戦う原動力は何なのでしょう。
この法案、大人達に対しての復習なのでしょうか。
散々な思いをしてきながら、自分に向かってこない者には手を差し伸べます。
典子を守る秋也に、かつての自分の姿を重ねているようにも見え、この世の中で信じるものを貫き通す川田の、切なくもたくましい戦いに知らずと引き込まれてしまいます。
最後に信じられる友達にあえたことで、このバトルは彼にとって意味のあるものになったと信じたいものです。
自分だったらどんなやり方で戦えるのだろうか
三村は知識が豊富で頼りがいがありたくましく、そんな戦い方があったのかと感心します。
三村をはじめ、それぞれの戦い方に個性があり、自分だったらどんなやり方で恐怖に立ち向かおうとするのか、想像力を働かせることができます。
- 身を守るためにがむしゃらに武器を振り回す。
- とにかく安全な場所に身を隠し、恐怖に怯える。
- ただ思考能力停止状態に陥り命を絶つ。
- 皆で脱出すべく工夫を凝らす。
それぞれの個性や考え方が現れ、相応しくない言い方ではあるかもしれませんが、死に方がそれぞれ違うところも見どころのひとつなのかもしれません。
感想
とにかく衝撃をうけた作品。
「ねえ、友達殺したことある?」というキャッチコピーも、それだけでゾッとしてしまいます。
中学生同士の生き残りをかけた殺し合いはショッキング以外何ものでもなく、命を懸けてのかくれんぼのようで終始気が休まりません。
また、ありとあらゆる殺人の為の凶器が用意され、殺し方もさまざま。
遊び方のわからないおもちゃでも持つように、極限の精神状態に置かれた生徒達が混乱しながら武器を振り回す姿が、頭から離れなくなってしまいます。
友達を信じたいけれど信じられない。
殺したくないけど殺されたくもない。
こんな葛藤を一生考えなくて済むような世の中であってほしいと心底思います。
当然CGによっての行われる映像技術は進化した最新のものには劣っていますが、その内容とスリル感に一度見たら忘れられない映画です。
20世紀最後の問題作という代名詞にも納得。
作品が抱えるメッセージを受け取るまで時間を要してしまう衝撃度です。
総括
ハラハラ、ドキドキする場面や血を見ることが苦手な人はお勧めできない作品です。
また、ストレス発散でありストレスがたまる作品です。
未来を担う若者に対して強いメッセージは伝わるものの、やはり強く衝撃を受けることに変わりなく、そのメッセージを踏み間違えて受け取ってほしくはない作品でもあります。
子供から大人まで武器を持つことは容易であるがそれをどう使うのか、と言う問いかけ、そして、子供達が駆け抜けていく一瞬一瞬に大人はどう接すればよいのか、という問いの答えもまた人それぞれなのでしょう。
この答えを探しながら生きていくことこそが未来への一歩なのかもしれません。