映画『万引き家族』ネタバレ結末 誰一人として本物の家族ではない実在一家の事件が題材

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カンヌ映画祭、最高賞のパルムドールを受賞した是枝裕和監督による『万引き家族』は、2018年その名の通り、万引きしながら生計を立てる家族を描いたヒューマンドラマです。

親の死亡届を出さずに年金を不正にもらい続けていた実際の一家の事件を題材に、10年ほどの時間をかけ構想を練ったという今作は、アカデミー賞・外国語映画賞ノミネート、また、日本アカデミー賞では最優秀賞作品賞はじめ8部門において最優秀賞を受賞するなど、国内外において大変高い評価を受けました。

是枝作品に欠かせないリリー・フランキー、樹木希林。
そして新メンバーに「100円の恋」の安藤サクラや、松岡茉優などを迎え、日本の家族の在り方について考えさせられる深いテーマを持つ作品です。

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万引き家族作品情報

上映時間
2時間0分
主なキャスト
リリー・フランキー、樹木希林、安藤サクラ、松岡茉優
ジャンル
邦画、ヒューマンドラマ、PG12

万引き家族予告動画

万引き家族あらすじ

高層マンションが立ち並ぶ東京の片隅に、貧しく暮らす平屋の一軒家があります。
日雇いの仕事をする柴田治(リリー・フランキー)とクリーニングの工場で働く妻の信代(安藤サクラ)は、息子の祥太(城桧史)、信代の妹亜紀(松岡茉優)、母の初枝(樹木希林)と暮らしています。
初枝の年金、そして不足分を万引きで補うことにより生計を立てている家族は、貧しくとも肩を寄せ合い生きているのです。

ある寒い夜、近所の団地で凍えている女の子を見かけた治は、放っておけずに自宅に連れて帰ります。
怪訝な顔で迎え入れた信代でしたが、幼いゆり(佐々木みゆ)に虐待の痣らしきものを見ると、その境遇を察し家族として受け入れていきます。

2ヶ月もたったころ、テレビでゆりの捜索願が出されていることを知ります。
ゆりの本名がじゅりという名であることを知った家族は慌てますが、ゆりは新しくもらったりんという名でこのまま家族の一員として暮らしていくことを選びます。

手際よく万引きを繰り返す治とそれを教えこまれる祥太。
職場で洗濯物から出てきた品をポケットにしまい込む信代に、パチンコ屋で球をくすねる初枝。
さらに祥太の万引きを補助し始めるりんに、唯一万引きはしなくとも女子高校生が働く風俗店で小遣いを稼ぐ亜紀。
それぞれに関わる人たちからも、隠された過去や秘密が徐々にほころび始めます。

万引き家族ネタバレ結末

©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

初枝は、死んだ元夫の月命日に、元夫の息子夫婦を訪ね線香をあげます。
元夫が外で作った家庭には息子がおり、息子夫婦には二人の娘がいます。
優秀な妹の他に留学中の姉、亜紀がいるというのです。
初枝は亜紀と一緒に暮らしていることを隠し、いつものようにお小遣いを受け取り息子夫婦の家を後にしました。

夏になり、家族は楽しい時間を過ごしますが、間もなく初枝が息を引き取ります。
初枝に心を許していた亜紀はいつまでも泣き続けます。
しかし治と信代は淡々と、初枝を自宅の敷地へ埋め、存在自体を消し去ろうとします。
初枝のへそくりを見つけて喜ぶ二人の姿を見た祥太は、疑問を募らせていきます。

ある日、りんとスーパーに出かけた祥太。
勝手に万引きを働こうとするりんを庇ってか、ミカンを万引きし逃走します。
追いかけてくる店員から逃げ場を失った祥太は高架下へ飛び下り、そのまま病院に搬送されてしまいます。
祥太の無事を確認した治たちは入院中の祥太を残し、夜逃げ同然に身を隠そうと試みますが確保されてしまいます。

ホステスとして働く信代と客の治は、以前、信代の元夫を殺害し遺棄していたという事件も発覚。
初枝は治や信代の実の母親でもなく、実は祥太も車に置き去りになっていたところを治が拾い育てていたのです。
つまり、柴田家の家族は誰一人として本物の家族ではないことが取調べにより明らかになりました。

信代の逮捕後、治と祥太は信代の面会に行きます。
学校に通いだした祥太の成長を眩しそうに見つめ、実の親を探すことも出来るかもしれないと祥太を拾った場所を教えます。
治のアパートでひと晩を過ごした祥太は見送られながらバスで帰るべき場所に帰っていきました。
名ばかりの家族の場所に戻る他ないりんも、以前と変わらず部屋の外に締め出されひとりで時間を持て余しているのでした。

万引き家族見どころ3点

1点目:取調べを受ける三人の演技

まるでドキュメント映像を見ているような取調べのシーンは、それぞれの感情が一番むき出しになる場面です。
その場しのぎの安易な思考と行動が積み重なった結果だと言えばそれまでですが、事実からだけでは言い表せない思いやりや愛や寂しさがひしひしと伝わってきます。

敢えてセリフを前もって渡さず、その都度尋問を投げかけていた即興とも言える撮影方法をとったというこのシーンは、その部分だけでも見ごたえのあるシーンで、これが演技だと言うことも忘れてしまうほど、フィクションの人物像を超えた本当の人物の心の叫びに聞こえる事でしょう。

2点目:上手く生きていけないはみ出しものの集まり

©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

万引きを当然の行為とした普通ではない家族関係
でも実際にはないとも言えないこの家族に社会は目もくれず、問題が発覚した時にだけ議論を重ねます。
正論を述べることは容易く、多数に受け入れられやすいものですが、レールに乗るものしか受け入れられない社会に孤独と疑問を感じる事でしょう。

一方で、駄菓子屋のおじさんが万引きした子供に注意を与える大人がいることも忘れてほしくない部分です。
まんざらでもない日本社会も見え隠れします。
善と悪を教えられる大人がいる社会、そして、間違いだらけの人生を受け入れてくれる包容力と昔ながらの良き日本社会を広げていくことが、今を生きる私たちに必要なのかもしれません。

3点目:祥太の成長

いつも何かを真剣に探し思考する表情が印象に残ります。
本当の名も本当の両親もわからない祥太は、成長するにつれ湧き上がる疑問に唯一前向きに向き合っているようにうかがえます。
この危うい生活、そして家族を愛しているからこその行動が家族を壊したように見え、祥太なりの家族愛に見えました。
親や、居場所を選べない子供から、殻を破って巣立っていく祥太の勇気と成長を強く感じます。

万引き家族感想

日の当たらない部分に注目した作品。自分ではどうすることもできず、今ある生活を受け入るしかない子供たちの姿が終始胸に刺さります。
そして、正しい事を正しいと間違いを間違いだと、自分の知る限りの愛を惜しみなく与えたいと改めて思える作品でもあります。
そして鑑賞後にも、家族の定義について考え続けさせられる強いメッセージを残す映画だと感じます。

祖父母、両親、そして子供達、各家庭の中でどんな問題にぶち当たろうとも家族の一員としてそこにい続ける事は私たちにとって当然と言えば当然ではないでしょうか。
どんなことが起きても家族で乗り越えようという美談があることも確かながら、血縁関係に縛られた関係がいつも正しいとは言えないこともこの作品から訴えかけられ続けます。

誰の目から見ても貧しいこの一家は不幸に写りましたか。
うまく表現できない治や信代からも確かな愛も見ることができ、この一家からは今手の中にあるもので楽しむ知恵すら感じられます。見えない花火を家族で見上げるシーンでは羨ましいほどの家族と感じた人も多いのではないでしょうか。

万引き家族総括

©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

重いテーマに考えさせられ、解決には至らない作品です。
本作は、それぞれがあるべき場所に戻っていくところで幕は閉じますが、それが解決とは言い難く、なんとも言えない後味の悪さを残します。
祥太には明るい光が見えつつも、じゅりの行く末には不安しか残らないこともまた事実で、何をもって家族と呼とぶべきなのか、乗り越えた先に明るい未来が見えるものなのかと、家族の在り方についても考えさせられます。
貧しく汚い生活風景とだらしない食事と服装。
地をはって生きているような偽物の家族像に真正面から立ち向かう重いテーマを背負いながらも、平穏で温かく、そして明るい瞬間を確かに感じられる作品でもあるのです。

血のつながりに重きを置く日本の家族の定義をあらわし、その定義や規則で判断を下す社会に物申す是枝監督の訴えが伝わるようです

\ 万引き家族はランクイン? /

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