1996年公開、「シコふんじゃった。」でおなじみの周防正行監督によるハートフルコメディ映画。
日本アカデミー賞において最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞。
また、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞と、シカゴ映画批評家協会賞にて外国語映画賞を受賞。
2004年には監督ピーター・チェルソム監督により、リチャード・ギア主演でリメイク「Shall We Dance?」が公開されました。

賞を総なめにした『Shall we ダンス?』は、社交ダンスの持つ地味なイメージを払拭し、世間にブームを巻き起こした作品です。

主演は役所広司と草刈民代。
役所広司は本作と「眠る男」などでの演技に高評価を受け、トップ俳優の仲間入りを果たします。
一方、元バレリーナの草刈民代は今作で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、新人俳優賞を受賞。
その他、キネマ旬報賞での受賞など多数の賞を獲得しました。

Shall we ダンス?あらすじ

 
優しい妻の昌子(原日出子)と娘に囲まれ、庭付き一戸建てを購入、経理課長として出世クラスの杉山正平(役所広司)は、順調に申し分ない生活を過ごしているかのように見えますが、自宅と会社との往復にどこか物足りなさを感じているのです。

いつもの帰宅時、電車の窓からふと見上げた建物の一角にダンス教室を見つけます。
窓から悩まし気に外を眺める女性に心奪われ、ある日思い切ってダンス教室を訪ねます

その女性はこの教室のオーナーの娘である岸川舞(草刈民代)といい、彼女はツンとした態度で杉山に接します。
それを見かねた優しいベテラン講師のたま子先生の勧めにより、グループレッスンから習い始めることになりました。

舞のレッスンではないことに、あからさまにがっかりしたのは同じレッスングループに通いだす2人も同じでしたが、たま子先生の指導の下、3人は一緒にステップを教わりはじめます。
家族にも会社にも伏せたままこっそりと社交ダンスに精を出す杉山ですが、偶然教室に通う癖の強い同僚、青木富夫(竹中直人)と出くわしてしまうのです。
プライドが高く文句の多い高橋豊子(渡辺えり子)との関わり、そして舞の時折見せる遠い目を追いながら、ほのかな恋心から始まった社交ダンスが、杉山の生活に彩を加えていくのです。

Shall we ダンス?ネタバレラスト

地道な練習を重ねる杉山に、たま子先生は豊子とのペアでコンテスト出場を進め、舞の指導で特訓が始まりました
仕方なく引き受けた舞も、次第に熱が入ります。

一方、昌子は夫の遅い帰宅時間とほのかに香る香水に、浮気を疑うようになります。
思いつめた表情で探偵事務所を訪れ探偵の三輪(柄本明)に素行調査を依頼。
すぐに夫が社交ダンスの教室に通っていることが発覚します。
浮気ではなかったものの昌子の気分は晴れません。探偵の勧めで夫の出場するダンスコンテストを娘とこっそり見に出かけました。

いよいよダンスコンテストの幕が上がり、杉山は緊張を隠せません。
それでも皆の声援に支えられながら集中してダンスを披露します。
その時、娘の声援が耳に届き動揺が走ります。
と同時に、他のカップルと接触するアクシデントに見舞われ、結果、豊子に恥をかかせたまま失敗に終わってしまったのです。
夢中でダンスに没頭してきた杉山は、意気喪失し教室に通うことをやめてしまうのです。

ある日、舞がイギリスへ行ってしまうことを知らされ、さよならダンスパーティーに誘われます。
舞からの手紙も渡され、杉山は信憑な面持ちで手紙を開きました。
そこには、コンテスト最高峰のブラックプールでの失敗が赤裸々に綴られ、教室の講師を務める経緯と、本来のダンスに向き合う姿勢に改めて気が付かされた自分の気持ちが書かれていました。

妻や娘からもダンスを続けるように勧められますが、パーティーに足を運ぶことができず、パチンコ店などで時間を持て余します。
重い気持ちで電車からダンス教室の窓を見上げると窓には杉山へ「Shall we ダンス?」とのメッセージが書かれ、杉山は夢中で会場に急ぎます
舞が自分と踊る相手を指名するラストダンスの場面に飛び込んできた杉山は、舞に「Shall we ダンス?」と声をかけられ、笑顔で舞に手を差し伸べ音楽に身を任せるのでした。

Shall we ダンス?見どころ3点

中年世代の生きがい

年々体力も減退し、気が付けば単調な毎日にどこか物足りなさを感じることはあるでしょう。
周囲から見れば安定した生活に身を置いているようでも、生きがいとはまた違ったものを感じ、まだ自分にも何かやれるのに・・。
と思うことは一度や二度ではないはず

主人公、杉山のように、今まで興味を持ったことが無い、まるで畑違いの趣味に没頭できることが、うらやましくもあり、希望にも思えるのです。

男性に限って言えることではありません。
日々の生活に感謝しながらも人は刺激を求める性が備わっています。

しかし不純な動機から始まる危険なにおいを、ダンスに置き換えて表現するところが多くの中年世代にとって、とても心地よく清々しさを味わえる部分ではないでしょうか。

社交ダンスの魅力

年齢層が高く、どことなく地味でマイナーなイメージの社交ダンスですが、実際は衣装や化粧、ダンスの種類も様々で、奥深いものだと気が付かされます。
その激しいスポーツと言うには足りず、もしかしたら自分にもできるのかもと思える社交ダンスを題材にしたことは面白く、興味がそそられる部分でもあります

また、そこで繰り広げられるドラマや背景に着目すると個々の人生を深く感じることができ、ストーリーの終盤には自然に音楽に乗ってしまう自分に気が付かされます。
見ているだけなのにその魅力に引き込まれてしまうのです。
それにしても、なかなか足を踏み入れる機会のないダンスホール、西洋を思わせる内装にホールに響き渡る品のある音楽、オレンジ色の優しいライトに包み込まれ、日常とは違った刺激を与えられます。
まるで自分が映画の主人公になったような錯覚に陥り、心地よい世界へ導いてくれるのです。

杉山を取り巻くキャラの濃い登場人物

何かに夢中になっている夫の姿に嫉妬しながらも、改めて惹かれていく妻の心象は女性からの共感も多い事でしょう。
素直に自分の気持ちを夫にぶつける昌子を可愛いと感じます。
そして昌子の話に耳を傾け、寂しさを真摯に受け止める夫は頼もしく、舞とのプラトニックな関係がより夫婦間の絆を深めているように感じられます

そして、キャラの誇張がやりすぎの竹中直人。
彼の恐ろしいほどの個性的なキャラクターが何故作品に溶け込むのかは不思議ですが、そこに加え、気が付くとダンスへの興味が止まらない探偵役の柄本明の存在が付いて回り、面白さに一役買っているのです。

Shall we ダンス?感想

正直、社交ダンスに特別な思いはありませんが、お別れのパーティーで舞と杉山が「シャル・ウィ・ダンス?」の音楽に合わせ一歩を踏み出すシーンは鳥肌が立ちます

社交ダンスを通し、人間としての関りや愛を見つめ、生きがいを取り戻す作品ですが、全てを難しく受け止めるのでなく、感じるもの全てに素直に身を置くことを実感でき、音楽やダンスも映画とよく似ていると感じます。
何より心の空虚を不倫や浮気と言う、いわばありきたりの方向性ではなく、大人の恋心を実に健全に爽やかに描いているところは気持ちがよく、心が解放された気分になります。

そして、初心に帰り出直す舞の強さにも惹かれます。
挫折や失敗を人に話すことは難しく時間のかかることです。
できる事なら封印してしまいたい。
都合の良い美談に変えてしまいたい。
と失敗を肯定し誤魔化したくなるところをしっかりと受け止め、前に進もうとする姿に女性として、人間としての強さを見ることができました。

Shall we ダンス?総括

日々を何気なく過ごす人に彩を加える作品
人生を折り返し、今の生活に不満はなくとも、もう一花咲かせたいと漠然に感じている世代の人には特に夢を与える作品でしょう。

逆に多くの可能性を秘め、これから世に羽ばたこうとしている若者たちには共感されにくいものかもしれません。
しかし、そんな若い世代の人にも忘れてほしくないメッセージを兼ね添えています。
思い描く未来を信じ、努力を重ね自信をつけていく姿は眩しい程に輝かしいものですが、いつでも初心に帰ることの大切さと難しさを謳っています。

誰かが悲しみを背負う結末ではなく、それぞれが前を向いて人生を謳歌できる内容と、視覚から入る幻想的なライティング、そして軽快且しっとりと流れる大人のメロディに翻弄され心が軽くなるストーリーです。

「シャル・ウィ・ダンス?」の曲を聞きながら、未知の世界へ一歩を踏み出す自分を想像してみてください

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