本作はハードボイルドなクライム小説『逃亡のガルヴェストン』が原作です。
監督は女優としても有名なメラニー・ロランですが、彼女はタランティーノ監督作『イングロリアス・バスターズ』などにも出演しハリウッドでも活躍中のフランス人女優。
彼女は今までも映画の出演だけでなく、制作の方にも力を入れているのですが監督は今回が初となります。
主演は実力派俳優ベン・フォスターと日本でも人気が高いエル・ファニングがつとめています。
まだ若く、可憐なエル・ファニングが娼婦役というのも驚きですし、若手ながらも新境地開拓へ向け今までの役柄とはまったく違った、少女と大人の間を揺れ動く難しい役をどころを力強く演じています。
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映画『ガルヴェストン』あらすじ
裏組織の一員として犯罪に手を染めてきたロイ(ベン・フォスター)は、肺がんを宣告される。
死への恐怖から病院を立ち去り、いつも通りボスの命令を受け仕事へでかけるのだが、それは愛人をロイに寝取られたボスの罠だった。
襲撃者をすんでのところで返り討ちにし逃げ出そうとするが、部屋の一角に囚われていた少女・ロッキー(エル・ファニング)を成り行きで助けてしまう。
組織から逃れるロイとある事情により家に帰れないロッキーは、最果ての地・ガルヴェストンを目指すことにする。
旅の途中でロッキーは実家へ寄り、幼い妹のティファニーを連れ去ってくる。
養父との2人暮らしを心配してのことだった。
ロイは危険すぎて一緒には連れていけないと断るが、どうしても置いていけないのだと言い張るロッキーを訝しみながらも同意し、3人で逃亡生活を送ることになる。
ようやくガルヴェストンへ到着し浜辺のモーテルに身を寄せるのだが、ちぐはぐな組み合わせの3人に女主人は怪しみながらも受け入れる。
まだ幼い妹はモーテルの住人にも可愛がられ、3人の穏やかな日々が続くかのように思えた。
だがある日、ロイがたまたま手にした新聞にテキサス州オレンジ郡のとある一軒家で男性の射殺体が発見され、その家の住人である19歳と3歳の少女2人が行方不明であるとの記事が掲載されていた。
ロッキーは家に戻った際、養父を射殺していたのだった。
余命いくばくもないロイは身寄りのない2人の将来を案じ、まとまった資金を手に入れようとボスにゆすりを掛ける。
しかしある晩にロイとロッキーはささやかなディナーへと出かけた帰り、2人は組織に拉致されてしまう。
ロイは激しい拷問を受け命からがら逃げ出すのだが、その途中で彼はロッキーの死体を発見してしまう。
全裸で放置されていた彼女の身体にボロボロのカーテンをそっとかけ、その場を後にする。
手下の車を盗み猛スピードで逃げる途中に彼は事故を起こし病院へと担ぎ込まれるのだが、そこで彼は肺がんでないことが判明する。
彼に肺がんと告げた医師はボスと繋がりがあり、ロイにプレッシャーをかけ動揺させるために虚偽の診断をしていたのだった。
だが指名手配されていたロイはそのまま逮捕・収監されることになる。
映画『ガルヴェストン』結末(ネタバレあり)
逮捕されてから20年が経過し、年老いたロイは出所したあと寂しげなアパートで独り暮らしをしていた。
嵐の日、アパートに若い女性が訪ねてくる。
それはモーテルに置き去りしてしまったロッキーの妹ティファニー(リリ・ラインハート)だった。
モーテルの住人たちに大切に育てられた彼女は美しく成長し、現在はグラフィックデザイナーの職に就いたこと、また婚約中であることをロイに話す。
そして、自分の姉に何があったのかを彼に問う。
ロイは、ディナーへ行った帰りに事故に遭いそのまま自分は逮捕されてしまったこと、ロッキーを助けられなかったことだけを教えた。
またロッキーはティファニーを捨てたわけではなく、帰りたくても帰れなかったのだということを伝える。
さらには、ロッキーはティファニーの姉ではなく、母親なのだという真実を告げるのだった。
ティファニーを帰した後、ロイは外へ出て嵐の中を歩き始める。
雨に打たれながら、浜辺にいるロッキーの後ろ姿を思い出す。
彼女はディナーの時に着ていた赤いワンピースを身につけている。
記憶の中のロッキーがゆっくりと振り返り、ロイに優しく微笑みかける。
映画『ガルヴェストン』見どころ
旅の始まりのニューオリンズから目的地であるガルヴェストンへの道中、アメリカの壮大な風景を淡く映し出した美しい映像はロードムービーのような味わいです。
そしてたどり着いたガルヴェストンの浜辺で、無邪気に海水浴をするロッキーとティファニーの幸せなひと時も刹那的で情緒あふれるショットとなっており、物語の結末を思うとこれらの美しいシーンがより一層際立ちます。
また、何と言ってもエル・ファニングのかわいさ、妖艶さが魅力的。
ロイやティファニーと一緒にいるときの、子供のようなあどけなさがある一方で仕事に出かける時の陰鬱な表情にド派手メイク、際どい衣装というギャップも見どころのひとつです。
渋い作品が好きな人、エル・ファニングが好きな人にはオススメできますが、ハードな内容が苦手という方にはあまりオススメできないかもしれません。