ステラーカイギュウという絶滅動物をご存知でしょうか?
彼らは人間に狩り尽くされたことで、姿を消した動物です。
狩人は彼らのある習性を利用して、効率的に狩りを行ったそうです。

ある習性とは、ステラーカイギュウは傷ついた仲間がいると、仲間を助けようと集まってくる習性です。
集まってきたステラーカイギュウを狩人は次々に仕留めていきました。

今回紹介する映画は、正体不明の凄腕スナイパーと翻弄される2人のアメリカ軍兵士の物語です。
正体不明のスナイパーは軍隊のある習性を利用して、ターゲットを誘き出します。
まるで狩りを行うかの如く、スナイパーは的確にターゲットを仕留めていきます。

2017年にアメリカで公開された戦争映画です。
物語の舞台は2007年のイラクになります。
イラク戦争が終結に向かいつつある時期を描いています。

『ザ・ウォール』あらすじ

映画『ザ・ウォール』

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2007年末、ブッシュ大統領はイラク戦争における勝利宣言をする。
イラクの治安は回復しつつあり、戦争の終わりが見えていた。

物語はスナイパーが覗くスコープの映像から始まる。
視線の先には砂漠地帯にある石油パイプライン建設現場。
この地域を観測しているのはアメリカ軍の狙撃手であるアイザックとマシューズ。
彼らはこの一帯が安全か見極めるため、20時間にも及ぶ偵察を行っている。

施設内は狙撃による死体がいくつかあり、命中位置から狙撃技術の高さが伺える。
観測中のマシューズは我慢の限界がきたため、直接施設内を探ることにする。
周囲に異変を感じながらも、マシューズは兵士の遺体から無線機を回収するために接近する。
マシューズは狙撃を受けて、負傷する。

銃声を聞いたアイザックは急いで助けに向かうが、膝を打たれて負傷する。
なんとか壁の裏に退避したものの、身動きが取れない状況となる。

マシューズは負傷し、敵の姿が見えないアイザックは絶体絶命の状況に陥る。

『ザ・ウォール』ネタバレ結末

通信機は狙撃により、破壊されたため使えないことが判明する。
マシューズとの会話は途切れ、生死不明となる。
気を失っていたアイザックへ無線連絡が入る。
彼は救援要請を行い、ヘリが迎えに来ることになる。

安堵していた彼の元に、銃声か発煙筒で現在地を知らせろとの指示が出る。
あまりにも不自然な指示にアイザックは違和感を抱く。
そして基地本部として無線で会話している人物こそ、自分たちを狙撃した相手だと気づく
敵の狙撃手は勘付かれたことを気にせず、アイザックと会話を続ける。

敵の位置を探る傍ら、アイザックは狙撃手の目的を問う。
狙撃手はアイザックのことを知りたいと言い出し、詳しい素性を探ろうとする。
アイザックは答えを濁しながら、落ちていた無線機を回収する。

正体不明の敵は会話の中で、アイザックの死んだ相棒を知っていることが判明する。
アイザックは混乱するが、冷静さを取り戻し敵の位置を把握する。
またその腕から敵がジューバと呼ばれた名狙撃手であると推測する。

生死不明だったマシューズは生存していて、砂嵐に紛れて銃を回収する。
そして狙撃手のいるがれき山へ銃弾を放つ。
しかし敵から反撃を受け、とどめをさされる。

アイザックは無線機を修理し、本部に連絡を取る。
今度こそ救援を要請しようとしたが、狙撃手に通信を乗っ取られてしまう。
敵の狙撃手は異常無しの報告と予定通りにヘリでのピックアップを要請する。

アイザックは狙撃手が無線を使ってターゲットを次々と誘き寄せていたことに気がつく

彼は再び意識を失う。
気がつくと、アメリカ軍のヘリの音が聞こえる。
狙撃手へ通信を送るが応答がない。
ヘリが近づく中、彼は壁を倒して、最後の勝負に出ることにする。
土煙が立つ中、お互いが狙撃しあう。

敵からの狙撃が途絶え、アイズは覚悟をもって立ち上がる。しかし数秒経っても、狙撃はされない。
敵を倒したか半信半疑のまま、彼は迎えにきたヘリに収容される。

ヘリは飛び立ち、現場を立ち去ろうとしたその時、アイザックを治療していた兵士が被弾する。
がれきの山に狙撃手がいると訴えるが、また一人同乗していた兵士が被弾する。
ヘリも損傷を受け、黒煙を上げる。そしてとうとうヘリも墜落する。

墜落後、アメリカ軍バグダット本部から無線通信が入る。
無残な姿になったヘリから、聞き覚えのある声で応答が返ってくる。

『ザ・ウォール』見どころ2点

正体不明の敵

この映画におけるもう一人の主役と言っても、問題ないでしょう。
正体不明のスナイパーは見どころのひとつです。
ジェーバと呼ばれた凄腕スナイパーという設定以外、本作では何も判明しません。

顔も年齢もまるで分からない敵と言うのは、戦争映画では異例です。
逆に、正体が分からないことで想像を掻き立てられます。
復讐が目的なのか、それともサイコキラーなのかという具合に色々想像できる点が本作の魅力のひとつです。

極限状態での男たちの息遣い

痛みによる呼吸の乱れや冷静を失った際の高ぶりが、息遣いで上手く表現されています。
メインとなるアメリカ軍の2人は共に、狙撃されて負傷します。
その痛みは男たちの息遣いでリアルに伝わってきます。

銃弾を自身の体内から取り出す際に呼吸が乱れる様子や、地面に突っ伏し呼吸する様子は自分自身に痛みがあるような錯覚さえを覚えます。

また冷静さを失い、涙を流す際の嗚咽はとても演技とは思えませんでした。
心から動揺している様が目に見えて分かります。

『ザ・ウォール』感想

戦争映画のジャンルとしては、鑑賞したことのないタイプでした。
具体的に2つポイントがあります。

1つ目は最後まで敵スナイパーの素性や顔が分からないという点です。
他の戦争映画であれば、どんな敵と撃ち合っているのか映像として登場します。
例えば「プライベート・ライアン」や「アメリカン・スナイパー」にも狙撃手対狙撃手のシーンがあります。
もちろん双方の狙撃手の素性や顔が分かります。
しかしこの映画は主人公の予測だけで、顔や正体が全く判明しません。
この点が斬新だなと感じました。

2つ目はアメリカ側が一方的に被害に合う点です。
アメリカ軍を描く戦争映画の多くは、最後はある種のハッピーエンドを迎えることが多い印象です。
もちろんその過程で被害にあってもです。
しかしこの作品は全く違います。

アメリカ軍が誘き出され、攻撃されてヘリまで撃墜されます。
ここまでアメリカ側が完膚なきまでに、やられる作品をあまり見たことがありません。
この点も衝撃的でした。

この作品は新しい切り口だな!と素直に感じさせてくれた作品でした。

『ザ・ウォール』評価

ザ・ウォールは敵スナイパーの素性や顔が最後まで分からず、アメリカ軍が徹底的にやられるという新しい切り口の映画になります。
戦争映画とは言いつつ、敵の正体や言動に不気味さを感じさせるスリラー要素があるので、新感覚の戦争映画だと思います。

既存の戦争映画に少し飽きてしまった人には特におすすめができます。
ありがちな展開ではないので、お口直しにはもってこいです。

反対にヒューマンドラマの要素が多い戦争映画を観たいという方にはおすすめできません。

メインの登場人物は3人しか出てきませんし、そのうち一人は顔も分かりません。
人にフォーカスを当てて、映画を楽しみたいという方には向いていない作品に思えます。