『64-ロクヨン-』シリーズなどの小説横山秀夫原作、長らく”映画化不可能”と言われてきた「最後の一作」が、ミュージシャンの山崎まさよし主演でついに映画化!
深夜に民家に忍び込んで泥棒を働く「ノビ師」
その中でも”すご腕”と知られる真壁修一(山崎まさよし)容疑者、通称「ノビカベ」が捕まった。
なぜ東大法学部に進学した法律家志望のエリートが窃盗犯に転落したのか?
逮捕のきっかけとなった住居侵入の被害者である稲村葉子(中村ゆり)、修一の恋人安西久子(尾野真千子)たち様々な関係者の思惑が絡み合う”事件関係者”たちはどうなっていくのか?
タップ(クリック)で目次が開きます
影踏み作品情報
原作 | 横山秀夫 |
---|---|
公開 | 2019年11月15日 |
監督 | 篠原哲雄 |
主題歌 | 影踏み(山崎まさよし) |
主なキャスト | 山崎まさよし、北村匠海、大竹しのぶ、尾野真千子 |
ジャンル | ミステリー、ヒューマンドラマ |
上映時間 | 112分 |
影踏み 予告動画
映画「影踏み」予告編
影踏み あらすじ(ネタバレなし)
住宅が留守の時を狙った「空き巣」よりも捕まるリスクが高い深夜寝静まった家に侵入し窃盗を行う「忍び込み」
警察は忍び込みを「ノビ」と呼び、プロを「ノビ師」と呼ぶ。
名前をもじって、同業者にも一目置かれる存在である真壁修一(山崎まさよし)こと「ノビカベ」。
狙うターゲットはお金を持っている高級住宅のみ。
ノビカベはいつものように慣れた手付きで稲村議員宅に忍び込むが妻・葉子(中村ゆり)が自宅を燃やそうとする瞬間を目撃してしまう。
間一髪のところで修一は葉子を止める。
しかし駆けつけた警官であり同級生でもある吉川聡介(竹中ピストル)刑事に逮捕される。
20年後。
刑期を終えた真壁は出所。
「修兄」と慕う啓二(北村匠海)が待っており行動を共にする。
真っ先に修一が行ったのは何故、あの時捕まってしまったのか。
警官が駆けつけたのが早すぎないか?という疑念を晴らすためにも図書館で事件当時の事を調べる。
稲村宅は競売がかけられておりシノキというヤクザが手に入れた事などを知る。
葉子のその後を追う修一は、自分を逮捕した吉川刑事、街金やバッタ屋で働く競売師大室誠(中尾明慶)らから情報を得る。
シノキからトドロキへ不正な資金が流れている事を知る。
この2人に共通する人物こそ逮捕されたきっかけでもある葉子が浮かび上がる。
葉子の居場所を突き止める修一。
シノキとは既に縁が切れていた葉子だが、不自然なほど立派な自身の店を持っている。
誰が葉子を援助しているのか?
葉子の周りで何が起きているのか?
事件の後20年間の間、葉子を中心に周りの関係者たちには何があったのか?
様々な疑惑をひとつずつ啓二と共に突き止めていく修一。
そんなある日、吉川刑事が溺死したことを知らされる。
そして修一をずっと待っている久子(尾野真千子)には文具店の経営者、久能次郎(滝藤賢一)がプロポーズを。
修一と久子はどうなるのか?
修一の周りは大きく揺れ動いていく。
影踏み 見どころ3点
1点目:ノビカベ真壁容疑者の魅力
「ノビカベ」こと真壁容疑者は青年期のある事件がきっかけで世間に絶望。
実社会の組織や業界に属さず裏世界に身を落とし、地面スレスレの視点から社会を見つめるアウトロー。
泥棒を生業にしているがこれだけは譲れないという独自のルールがあり、プライドも持ち合わせた人物。
傷つき影がある人物ですが、その影を隠し持っているからこそノビカベがどういう人なのか?
人としての魅力を感じます。
2点目:犯罪ものでありながらハートフル
影踏みはノビカベをはじめ様々な犯罪者が登場します。
そんな犯罪者や周りの個性豊かな事件関係者に焦点を当てたハートフルムービーでもあります。
冒頭の山崎まさよしさんの演技からアンダーグラウンドの世界に引き込まれ、最後には泣ける映画として感情を揺さぶられることでしょう。
3点目:修一と啓二の関係
修一(山崎まさよし)に対して啓二(北村匠海)の関係に注目です。
啓二は修一のことを「修兄」と呼んでいるので兄弟?
それにしては歳が離れているようにも見え、修一がアウトローの世界にいるからこそ師弟関係?
と想像しながら鑑賞することになると思いますが、話が進んでいくうちに関係性がハッキリと分かる瞬間が。
その瞬間もう一度、映画を始めから観たくなるかもしれません。
『影踏み』ネタバレ結末
同級生でもあった吉川刑事を殺したのは誰か?
修一(山崎まさよし)は吉川刑事(竹中ピストル)に弱みを握られていた稲村葉子(中村ゆり)を疑うが店にも来ていたとされるトドロキ検事がアリバイを証言する。
検事に会いに行こうと尋ねるが、今度は検事が暴漢に合い入院していることを知る。
検事の自宅へノビを行い、手がかりを掴もうとするが見つかったのはカネの流れが分かる通帳のみ。
一方、修一の恋人久子は久能(滝藤賢一)からのプロポーズを断る。
その直後から働き先には嫌がらせの書き込み。夜には無言電話が鳴り明らかに自身を狙った嫌がらせを受ける。
そんなある日、久子の帰りを狙った久能は久子を襲う。
久子はすぐに久能が双子だと見抜く。
襲ったのはプロポーズをした弟ではなく兄だったのだ。
なんとか逃げ出した久子は修一に助けを求める。
久子の家に向かい荒れた家の中を整理する修一。
そんな家に誰かが玄関を激しくノックする。
なんと襲ってきたのは大室誠(中尾明慶)だったのだ。
葉子の言葉に救われ優しくされた誠は、葉子を苦しめようとする男たちを襲っていったのだった。
- はじめの吉川はノビカベ逮捕となった時に事件の真相を知っており、弱みを理由に葉子に対し執拗に迫っていた為
- 検事も同じく葉子に対し執拗に迫っていた
- そして修一は葉子の周りを嗅ぎつける危険な人物だと判断したため
全てが誠の犯行だと分かる。
そこに修一に付けられた発信器を頼りに馬渕刑事(鶴見辰吾)が現れ、誠を逮捕する。
同時にネタを欲しがっていた馬渕は修一から金の流れが分かる通帳を受け取る。
結果として不正を行っていた検事にも裁きがくだったのだった。
その後、修一は久能の兄を尋ねるが不在で会えず。
何か引っかかった修一は夜、ノビを行うが目にしたのは兄、久能(滝藤賢一が二役)の死体だった。
そこに弟、次郎が帰ってくる。
はじめは見つけた修一を殺そうとする必死に抵抗する修一。
双子の弟を持つ修一と、同じく兄を持つ次郎。
一卵性双生児だからこそ抱える苦悩、亡くなった兄弟への想いをぶつけあう。
天国と地獄に分かれたと思われていた双子の兄弟。
久能兄弟はどちらも地獄に引っ張っていかれてしまいましたが、真壁兄弟は天国に引っ張っていかれていきました。
自分自身を許すことが出来たことにより、影のように付き添う啓二から開放され、修一はようやく久子と歩いていく決心を3人の思い出の地でするのでした。
『影踏み』感想
自らを役者ではない。と言っていた山崎まさよしさんでしたが、アウトローに染まっていった影のある人物を見事に演じていたようにも思います。
特に違和感なく、映画に集中出来ました。
影踏みのキーパーソンでもある葉子ですが、実社会でもこういった寄ってくる男性がいるだろうと想像できます。
不幸でしか無かったのが残念で、2度も自ら人生を諦めようとしましたが最後には歩きだしてくれるのでは。
と映画を通じて、人はいつでもやり直せると感じさせてくれました。
この映画のキーとなるのは”双子”ですが、実際に一卵性双生児の人にとっては抱えている悩みだと感じます。
「2人は1人になれない」という言葉が印象的でした。
映画の中ではそこまで長いシーンに登場するわけではありませんが、やはり大竹しのぶさんの演技には人を引き込む力があります。
同時期に公開された「ひとよ」の母を演じる田中裕子さん同様、演技力のある女優さんが出演する映画に外れはないです。
>>映画『ひとよ』家族の絆の喜びと哀しみがこころを打つ、感涙ヒューマンドラマ
小説との違い
小説を読んだことがある人にとっては違和感の残る映画になったことでしょう。
小説では映画に登場しない三沢玲子や黛などが登場することによって、登場人物一人ひとりにフォーカスできておりそれぞれの”影”を感じることがより一層できます。
映画では双子の2人に極力焦点を当てた作品に仕上がっている印象ですので物足りないかもしれません。
小説では映画で描ききれなかった登場人物の素顔など、読み応えのある少し異なったストーリーとなっています。
詳しく知りたい方は是非、横山秀夫先生の原作を手にしてください。
私の拙い文章とは違い、プロが書く文章は必読の価値があります。
思い出の丘は毛野国白石丘陵公園
また、映画のロケ地は全て群馬で撮影されているので聖地巡礼も可能です。
群馬に住んでいる人にとってはこの場所知っている!
とさらに映画の世界に入り込めるのではないでしょうか。
修一と啓二、久子の思い出の場所でもあり映画のラストシーンに登場する大きな木があるのは「毛野国白石丘陵公園」
これを機会に訪れてみてはいかがでしょうか
影のように付き添う青年・啓二(北村匠海)の演技にやられた
修一の出所後から影のように付き添う啓二(北村匠海)。
いい歳をした、しかも犯罪歴のある大人が交通違反である自転車の二人乗りや、タイミング良く現れるシーン。
少し違和感を感じながら鑑賞していました。
そして修一との関係を想像しながら観ることになります。
「修兄」と言っていることから年の離れた兄弟なのか?
風貌からしてノビの弟子?
様々な想像を駆り立てるどこか影を感じる北村匠海さんの演技が見事でした。
北村匠海さんが双子の弟だと分かった時、
- 図書館にいた周りの客がビックリし、恐怖していた理由
- 自転車の二人乗り
双子だと分かった上で映画をもう一度見直すのも良さそうです。