「日本のいちばん長い日」映画リメイク版のあらすじと感想に評価

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作家 半藤一利の「日本のいちばん長い日」を基にして作成された映画です。
舞台は太平戦争末期の1945年です。
日本の敗戦が濃厚となる中、降伏か本土決戦かを巡り、人々の思いが交差する様を描いた群像歴史作品です。

ノンフィクション作品のため、演じた役は実在の人物になります。
阿南惟幾 陸軍大臣役に役所広司さん、昭和天皇役に本木雅弘さん、鈴木貫太郎 首相役に山崎努さんなど豪華な俳優陣が演じています。

この作品で、第39回日本アカデミー賞の9部門を受賞されています。
役所広司さんは優秀主演男優賞、本木雅弘さんは優秀助演男優賞を受賞しています。
またこの作品自体も作品賞を受賞しています。

ちなみにこの映画ですが、映画化されるのはなんと2度目になります。
1回目は1967年に、三船敏郎さんなどが演じています。
2015年版を鑑賞した後に、比較するのも良いのではないしょうか。
リメイク作品の楽しみ方のひとつです。

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「日本のいちばん長い日」あらすじ

物語は鈴木貫太郎が内閣総理大臣に就任する直前から始まります。
当初、鈴木は首相の任を断ろうと思っていたが、昭和天皇に説得され引き受けることになります。
首相となった鈴木は、人柄をよく知る阿南を陸軍大臣に指名します。

内閣成立後、日本は東京大空襲を始めとした攻撃を多数受け、敗色がより濃厚になっていきます。
そのような状況を受け、政府は終戦に向け舵を切り始めます。
しかしそれでも陸軍は、一億総玉砕を柱とした本土決戦を譲りません。
政府は降伏か本土決戦かという結論を決められないまま、時間だけが進んでいきます

そして広島と長崎へ原子爆弾が投下され、日本を取り巻く状況はさらに悪化していきます。
政府の方針が降伏で決定的となる中、陸軍内部に怪しい動きが見え始めます

「日本のいちばん長い日」ラスト(ネタバレあり)

ノンフィクション作品ゆえに、この後の流れは史実に沿う形で進みます。
政府は降伏に向け、進み始めます。
降伏に反対の陸軍幹部は、密かにクーデターを計画します。

また降伏条件に際し、阿南大臣を始めとした陸軍は天皇陛下の地位保持がないことを理由に、ポツダム宣言を受け入れられないと主張します。
鈴木首相は結論が出ないため、昭和天皇に戦争に関する方針を伺います。
昭和天皇は、国民のためにポツダム宣言を受託するように提案をします。
阿南大臣は天皇陛下を、天皇陛下は国民を案じる姿勢は最後まで貫かれます。

天皇からの提案により、政府は降伏という方向で加速していきます。
同時に、陸軍のクーデター計画も加速していきます。
計画が進行する中、阿南大臣は本土決戦を閣議で主張し続けることで、陸軍のクーデターを抑え込みます。

そして最終的な結論が戦争指導会議で出ないため、最後は天皇陛下に判断、いわゆる聖断を仰ぎます。
8月14日、昭和天皇はポツダム宣言受託による降伏を決めます。
それを受け、阿南大臣も降伏を受け入れます。
その夜、昭和天皇は終戦放送(玉音放送)の録音を行います。

降伏を決めたことで、陸軍の幹部たちはクーデターの開始します。
しかし強引に説得される形で、クーデターは失敗に終わります。

8月15日、ポツダム宣言が正式に受託されます。
それと共に、阿南大臣やクーデターを起こした陸軍幹部は自決を行います。
そして玉音放送と共に、この映画の幕が閉じます。

「日本のいちばん長い日」見どころ3点解説

日本のいちばん長い日の見どころを3点取り上げましたので順に紹介していきます。

主演 役所広司さんの熱演

豪華俳優陣の演技がこの映画の見どころですが、やはり役所広司さんの演技が一番目を引きます
役所広司さんは私たちが想像する日本の軍人を、そのまま演じています。

天皇陛下や国を第一に考え、そのためには命を投げ打つ覚悟でいるという姿勢が演技から伝わってきました。
また古き良き日本の"親父"という面にもスポットライトが当たっています。

家族を大事にするところ、部下に厳しく接する中にも愛情があるところを感じました。
そういった軍人として、一人の人間としての深みを感じさせてもらった演技でした。

脇を固める役者さんの熱演

役所広司さんの脇を固める俳優さん達も、素晴らしい演技をしています。
まず松坂桃李さんです。
若き陸軍の軍人を演じていますが、彼は最期まで戦争続行を望み、クーデターや上官の殺害まで決行します。葛藤や怒り、狂気に満ちた役柄を演じきっています。

次に本木雅弘さんです。本木さんは昭和天皇という非常に難しい役柄を演じています。
天皇が今以上に、特別視されていた時代設定でしたが、本木さんは芯の通った演技をされていました。
厳格な雰囲気は天皇陛下、そのものでした。

異なる価値観に触れられる

国のために、天皇陛下のために命を投げ出すの辞さない。
そのような空気や考えが普通であった時代は、令和を生きる私たちにはとても想像ができません。

その時代には、その時代の価値観があるという点に触れることができるのが、歴史作品の魅力のひとつです。
今の私ならどうするのか?といった想像をついしてしまいます。
異なる価値観に触れることで、自分の視野が広くなります。
そのような点もこの映画の魅力のひとつです。

「日本のいちばん長い日」感想

私たちが習った日本の歴史では、玉音放送があったという1文で終わってしまいます。
しかし、その裏には多くの物語があるんだなと感じました。

そもそも、この映画を見ることになったきっかけは軽いものでした。
たまたまTVをつけたらやっていたというだけです。
そしてその場面は映画のクライマックスシーンからでした。
役所広司さん演技力に画面に釘付けになりました。
そこから興味を持ち、この映画を最初から見るに至りました。

元々戦争映画は好きでしたが、この作品は少し異色に感じます。
戦争映画というと激しい戦争シーンがあったりしますが、この映画には一切そのようなシーンがなく、ひたすら人間に焦点が当たります
しかも人間の持つ葛藤や怒り、同情といった感情にスポットが当たっているので、非常に見応えがありました。

1文で終わってしまう歴史にも、様々な物語があります。
改めて歴史作品は、魅力的だなと感じました。

「日本のいちばん長い日」総評

日本の歴史的転換点でもある太平洋戦争終結を基にした作品ですので、非常に重厚な一作です。

様々な立場の人々が持つ感情に、スポットライトが当たる作品になります。
その人々を豪華な俳優人が演じているので、見応えは十分にあります。
歴史の裏側ではどうような感情の起伏があったのを知れる作品になりますので、歴史物が好きな方には特におすすめできる一作になります。

しかし独特の用語が出てくる作品であるがゆえに、ある程度下情報や歴史的知識がないと理解ができない場面がちらほらあります。
なので場面によっては、おいてけぼりもありえます。
例えば「聖断」という言葉です。
普通に使う用語ではないので、とっさに思い浮かばない人には分からないと思います。

下情報がない人や歴史的知識がない人には、初見では理解できなのでおすすめはできないです。

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