全身で夏を感じる学園青春コメディ『ウォーターボーイズ』映画のあらすじ感想

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2001年公開『ウォーターボーイズ』は、監督・脚本、矢口史靖による青春コメディ映画です。
日本アカデミー賞、優秀作品賞、優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞。
また、キネマ旬報日本映画ベストテン第8位、ブルーリボン賞と、数々の賞を受賞しました。

自分に劣等感を抱いている主人公、鈴木智が、シンクロナイズドスイミングを文化祭で披露するハメになってしまった事から始まるストーリー。
克服したい何かを抱えている同志が集まり、互いにぶつかり支え合いながら成長していく様を描きます。

今作品は、シンクロ男子人気の火付け役ともなり、2003年には映画の2年後を舞台としたテレビドラマ「WATER BOYS」が制作され、2004年には「WATER BOYS2」、
2005年「WATER BOYS 2005夏」と、
人気はとどまることを知りません。
また、映画からドラマ化という旋風を引き起こした作品でもあります。

主演は妻夫木聡。
映画初主演という彼は、日本アカデミー賞優秀主演男優賞、新人俳優賞を受賞。
モデルとして人気を集めた彼が、シンクロを通し別人のように自信に満ちた表情に変わってきます。

今作品にて才能を開花したかのようにその後も活躍し続け、様々な表情を見せ続けています。

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『ウォーターボーイズ』あらすじ


唯野高校3年のドジな鈴木智(妻夫木聡)。
部員はひとりだけの廃部寸前の水泳部に、若くて可愛い佐久間恵先生(真鍋かをり)が顧問として就任します。

先生目当てに水泳部の部員は一気に増えましたが、佐久間先生は実はシンクロを教えるのが夢だと告白。
その途端、蜘蛛を散らしたように部員は減り、鈴木をはじめアフロ頭の佐藤勝正(玉木宏)、泣き虫で女子のような早乙女聖(金子貴俊)、たくましい体に憧れる太田祐一(三浦哲郁)、泳げるようになりたい秀才の金沢孝志(近藤公園)の5人だけが残ったのです。

佐久間先生のペースに乗せられ、文化祭でシンクロを披露するハメになりましたが、突如先生の妊娠が発覚、そしてすぐに産休に入ってしまいます。
5人は呆気にとられたまま先生を見送り、周囲にバカにされながら仕方なく練習を始めます。
しかし、文化祭でのプール使用は例年通り、バスケ部の釣り堀になってしまいました。

揺れ動く気持ちにプールの使用を求めた結果、やっぱり何をやってもうまくいかず、放流された魚とプールの水の請求だけが残ってしまいました。
やる気次第で保証代は免除するという魚業者の磯村(竹中直人)の申し出があったにも関わらず、5人は仲間割れをし、バラバラのまま夏休みに突入します。

予備校に通う鈴木は、憧れの桜木女子高に通う木内静子(平山綾)と出会います。
ある日静子と水族館にデートに出かけると、イルカのショーが目に入ります。

大盛況の中、調教師として登場したのは、なんと磯村。
鈴木はイルカのような演技を自分たちにも指導してほしいと頼み込み、再結成した5人は水族館で合宿をスタートさせます。

『ウォーターボーイズ』ネタバレラスト

仕事の手伝いをさせようと企んだ磯村は、訓練と称し彼らに水族館内の水槽磨きを命じます。
水槽磨きばかりの毎日にしびれを切らした5人は磯村に詰め寄りました。

いざ水に入ってみると磯村もびっくり。
5人は知らないうちに上達していたのです。
その後もゲームセンターでのダンスの練習など、磯村はどうにか邪魔者を追い払う策略を練りますが、面白いように全てがシンクロ上達の道に直結します。

ある時、磯村の指示通り海でシンクロの練習をしていると、溺れていると勘違いされ、突然救急隊が駆け付け、騒ぎになってしまいます。
ニュースとしてテレビでも取り上げられ、一躍有名人。
唯野高校文化祭の注目度が上がり、プール使用の許可が下りました。

一旦離れた部員も戻り、順調に文化祭を迎えるかのように感じたのですが、またまた事件が起こります。
文化祭前夜、学校でボヤ騒ぎが起こり、プールの水が消火活動に使用されプールが使えなくなってしまったのです。
落胆する彼らの前に、桜木女子高の実行委員長が好意でプールを貸してくれると伝えに現れました。

皆が大はしゃぎで準備を始める中、静子にシンクロをしていることをまだ言えていない鈴木は出場しないと言い出します。
しかし磯村に一生情けないままでいいのかと背中を押され、吹っ切れた鈴木は堂々とした演技を見せつけます。
会場は大盛況。
彼らの頑張りは成功を収めたのです。
大きな拍手で見送られる彼らは堂々と胸を張り、そこに情けない5人の表情を見ることはもうありませんでした。

『ウォーターボーイズ』見どころ3点

勢いと遊びがいっぱいの男子シンクロ

シンクロと言えば女子。
という概念が無くなります。華麗で美しい女子のシンクロとはまた別物。思い描くシンクロナイズドスイミングが一変します。
何より男子高校生のシンクロは力強さと勢いがありダイナミック、そしてコミカルでユーモアに溢れています
男のくせに気持ちが悪い、と怪訝な顔をされ、笑われ、本人達でさえなかなか羞恥心を捨てきれませんでしたが、披露した演技は目が離せない面白さが満載です。

何の分野でも新しく道を切り開くには勇気がいるものです。
中途半端な自分にコンプレックスを持っている男子高校生がひとつの事をやり遂げていく姿に、一緒に達成感を感じることでしょう。

キャスト陣の初々しさ


イケメンとして活躍の妻夫木聡演じる鈴木の阿保面はファンにとっても是非見てほしいところ。
そして意外なキャストも名を連ねます。
今ではなかなかお目にかかれない玉木宏のアフロヘア、そして一瞬河童になりつつの坊主頭も必見。
金子貴俊の完全なオネエ気質に、あどけなさ残る平山綾がフレッシュな演技を披露します。

シンクロの練習をする為スケジュールが開いている、当時はまだ無名の若手俳優が選ばれたと言います。
演技の評価だけでなく彼らの初々しさに注目することもまた、この映画の魅力と言っても良いでしょう。

男子校なのに、可愛くて爽やか

男子高校生に注目した作品と言うと、「ビーバップハイスクール」、「クローズ」、テレビドラマでも「ごくせん」等が頭に浮かびます。
もちろん拳で勝ち上がる面白さもありますが、『ウォーターボーイズ』はまた違った男子高校生の奮闘が見られます。
唯野高校で繰り広げられるストーリーはこの上ない程単純。
バカだなーと突っ込むところの連続なのです。

ウォーターボーイズ達の、良い感じに日焼けした引き締まった体と水しぶき、佐久間先生の豪快で愉快な存在がより夏らしく、また、鈴木と静子の恋愛模様もピュアで夏にふさわしい爽やかさを感じます。

『ウォーターボーイズ』感想

優柔不断で口下手な鈴木が、本番を目前に部員たちに向かって、「こんなことできるのも今しかないから思い切り楽しもう。」とメッセージを伝える場面では、忘れていたものが蘇る感覚があります。

人生は何度でもやり直せるものかもしれませんが、精一杯の時間を使って一心不乱に取り組めることは大人になるとなかなか出会う機会はありません。
それに、多くの人が何かしらの劣等感を抱えて生きているのではないでしょうか。
自分を中途半端だと感じているのではないでしょうか。

何かをやりとげるとは簡単に言えても、なかなか難しい事です
出来上がっているものに飛び込むことにすら勇気がいる事なのに、何もないところから始めるのはもっと難しい事。更に納得のいくまでやり遂げるには、時間もエネルギーも必要とされるからです。

だからこそ、一生懸命取り組み、困難を乗り越えたその先に完成度だけでは計れない、人を感動に包み込む力があるのだと気付かされるのです

体と心いっぱいで訴える彼らに、一生懸命とは素晴らしく、人の心を動かすことができる大きな力だと改めて思い知らされます。

『ウォーターボーイズ』総括

この作品が男子シンクロの火付けになったことは納得です。
水泳嫌いの子供も、全く水泳やシンクロに興味のない大人でも関係ありません。

次の展開が予想できてしまうのに何故か笑ってしまうのです。
おバカで一生懸命な男子高校生の単純さに誰でも笑える作品なのです。

また、自分には何もない、自分は何をやってもうまくいかないと落ち込んでいる人には勇気を与える作品でもあります。小さなことにこだわっている自分が馬鹿らしく、悩むなら今を謳歌しようと前を向けるのではないでしょうか。

青春や友情、恋愛と、話を盛り上げる要素が盛り沢山で、今日は嫌なことがあったなぁと気分が沈んでしまったら、何も考えずに『ウォーターボーイズ』の世界にどっぷり浸かってみてはいかがでしょうか。

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